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135話 第二位上流貴族

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 シュンとトリオスは城へと突入した。
 普段はいるはずの警備や使用人はおらず、すんなりと入ることができる。

「今、王や王妃は別の国に行っているため確かにこの城に警備はあまり必要ない。とはいえ誰もいないっていうのは不自然だよな……」

 貴族や王族の事はシュンには分からないがそこは流石、トリオスがカバーしてくれる。
 でも、明らかに不自然であることに変わりはないのだ。
 城には主人はいなくとも数人の使用人は掃除・清掃のためにいるはずなのだがその使用人すらいない、そもそも娘であるレイシェルがこちらに残っているので何人かの従者も必要のはずなのだ。

「レイシェル、君は昨日や今日使用人を見たか?」

『ええ。清掃員が二人、執事が一人。今朝も見かけたはずよ?』

 でも、現状この城には誰かがいる気配はない。

「魔力の動きとか、感情の動きも検知はできないし一体どうなっているんだろう?」

 誰もいないはずなのに、それは恐怖とでも言えばいいのだろうか。
 誰かに見られている?どこから?どうやって?

「シュン、階段から音が聞こえてくる」

 確かに、階段を下りる音が聞こえてくる。
 ヒールのような音だろうか?それに布が擦れているような音、女性か?

「あらあら、トリオス、シュン。勝手にお城に入ってくるなんて失礼になるわよ?」

 シュンの背筋が凍る。
 目の前に現れたのは、そしてゆったりとした冷徹な声は。

「母上、どうしてここに?」

 トリオスが驚いたように言う。
 それは間違いなく僕たちの母親の姿。魔力も感情も読み取れないが、一目で本物の母だとわかる。

「シュンがここに来ることが分かっていたからよ、シュンあの子は私にとって不都合な子だったのよ」

 なぜシュンは怯えているのだろうか、シュンがそれを理解したのはその時だった。
 僕の中にいたもう一人の「シュン」。
 彼は生まれてから母親からの愛情なんて受けていなかった。
 意思や考えが瞬に移った後も心は、記憶は、ずっと母親からの不遇な扱いを抱え込んでいたんだ。
 だから僕は……。

「いくら母親といえども、そんな事を考えているなら俺は許さない」

「いいわよ別に。トリオスもお父さんに似て頑固なものねぇ、上流貴族第二位ってそんな人ばかりなのかしら?」

 優しい兄がこれほどまでに本気で怒ったのを見るのは初めてだった。
 胸焼けするほどの怒りの感情、母親は涼しい顔をしている。

「シュンは俺の弟なんだぞ!!Give:Dgギブ・ドラゴン!」

 トリオスが召喚したのは蒼い龍。
 その時、シュンは別の所から魔力を感じ取った。

「ユナは地下にいる!」
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