光の傀儡師

ジャム

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行き倒れの獣人

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~狼視点~
『俺はやっていない!!!陛下!!私は無実です!!』

陛下『だまれ!!我が息子を殺しておきながら!!!』

『私はやっておりません!!!!無実です!!』

陛下『この者を牢に!明朝に処刑する!!』

『!!陛下!!!陛下!!!』




「はっ・・・!?」

俺は気絶をしていたのか・・・
ここは・・・どこの民家だ・・・?
確か・・・そうだ・・・
俺は無実の罪で投獄されて・・・
脱獄をして・・・追われて・・・
俺は森に逃げ込んだんだ・・・

「どこの・・・森だ・・・そうだ!」

俺は曖昧な記憶を思い出した

「クグツの森だ・・・」

そうだ・・・どうせ死ぬなら・・・と、この森にきたんだ・・・
クグツの森・・・光の怪物が徘徊する森・・・
そこに住む一人の「人間」が原因でこの森は「魔の森」になったと聞いている

「俺・・・なんで生きてるんだろう・・・」

その時部屋の扉が開いた
そこには一人の人間が立っていた
その傍らには光輝く四足歩行の獣がいた
こちらを警戒しているのだろう
人間の目は怖がっているように見える

人間「これ・・・」

人間はボソっというと水の入ったコップとカットされた果物を渡してきた
まだ幼いみたいだが・・・
人間はいままで2,3回しか見たことないが、大人でも幼く見える
それより幼く見えるということは、まだ子供なのだろう・・・

「すまない・・・ありがとう・・・」

俺は渡された食べ物と飲み物を受け取った

「ゴクッ ゴクッ・・・はぁ~ パク パク」

昨日から何も食べてなかったから助かる
そういえば・・・子供だけのわけないし・・・

「あの、お父さんかお母さんは・・・いるかい?」

人間「・・・」

光の獣「グルルルル」

俺の質問を聞いて獣が唸り声をあげる

「君に危害を加えるつもりはないよ・・・ただ、助けてもらったお礼が言いたいだけないんだ」

人間は何かを考えているみたいだ



~遥斗視点~
森に侵入する者がいたから確認しに行ったら
行き倒れの狼獣人がいた・・・
ほっといてもよかった
でも、助けたいと思ってしまった
体中傷だらけ・・・
それに、うなされて何かを言っている

狼獣人「無実・・・陛下・・・」

無実?陛下?
この人、王都の獣人かな?
ならここがどんなところか知ってるだろうに・・・
ここに来た方がいいくらい酷い目にあったのか・・・?

「・・・考えてもしかたないか・・・ひとまず、家に連れて行こう・・・」

もし僕が狙いならその場で始末する
それにどうやって入ってきたか聞きださなくちゃ・・・
僕はこの獣人を熊の光獣(こうじゅう)を使い家に運んだ
ベッドに寝かせ、手当てをするため服を脱がす
体中血で赤かったからわからなかったけど、白銀の毛並みなんだ・・・

「ズボン・・・脱がしていいのかな・・・」

僕はためらった・・・
手当てが理由ではあるけど獣人の服を脱がすのだって嫌なのに下を見なきゃいけないなんて・・・

「仕方ないよね・・・死なれたら聞き出せない・・・」

覚悟を決め光獣たちに手伝ってもらいながら獣人を全裸にした

「・・・不快だ・・・色々と・・・さっさと手当しよう」

前は大丈夫そうだけど、お尻は切り傷が多い
逃げていた・・・のだろうか
囚人?まぁどちらでもいい・・・

次の日の朝
寝室から声が聞こえた
獣人が起きたらしい・・・
水と果物を持っていこう・・・
扉を開けると青い瞳で僕を見てきた
そして隣の光獣をみて驚いている
行動次第ではすぐ始末できるように出しておいたんだけど・・・

「これ・・・」

僕は水と果物を渡した
それを受け取ると笑顔で

狼獣人「すまない・・・ありがとう・・・」

と言われドキッとしてしまった
笑顔で僕に言ってきた獣人は初めてだ
いつも、怖い顔で罵られ、殴られ・・・

「ゴクッ ゴクッ・・・はぁ~ パク パク」

それにしても・・・すごい勢いで飲んだり食べたりするな・・・
なにも与えられてなかったのかな?
そう思っていたら

「あの、お父さんかお母さんは・・・いるかい?」

急に聞かれたから思い出してしまった・・・
両親は獣人で僕は養子・・・ただのおもちゃとして養子にされた・・・
毎日、罵られ、暴力を振るわれ・・・
もうあんな思いはしたくない!
だから逃げ出した・・・王にも狙われてたし・・

狼の光獣「グルルルル」

僕の感情や想いで光獣を動かしている
だから隣の光獣が唸り声を上げたのだ

狼獣人「君に危害を加えるつもりはないよ・・・ただ、助けてもらったお礼が言いたいだけないんだ」

お礼?ふ~ん・・・律儀な人だな・・・

「その前に僕の質問に答えてください」

狼獣人「な、なんだい?」

怯えているのか、様子を伺っているのか・・・
すこし緊張しているみたいだ

「どうやってここに入ったんですか?」

狼獣人「王都の南門から続く森の入り口から入ったんだよ」

!?
入った!?

「でも、あそこからだと光獣がたくさんいたはず・・・」

狼獣人「俺が来たときは・・・その・・・追われてて・・・兵士たちが・・・獣の相手をしていたんだ・・・」

なるほど・・・武器を持つ者を優先させたからか・・・
でも、森の中にもたくさんいたはずなのに・・・

「森の中にもたくさんいたと思いますが・・・」

狼獣人「それは・・・俺が・・・倒したんだ・・・」

「・・・」

どうりで減ってるとおもった
でも、一人で相手したってこと?
確かに、入り口と違って中の光獣たちはそこまで強くはないけど、一般人や兵士如きにやられたりはしない・・・
この獣人・・・何者?

「あなた・・・何者ですか?」

狼獣人「俺は・・・私は王宮騎士団隊長『アルヴァン・ベン・イングット』と申します」

そういうと僕に王都敬礼をしてきた

「っ!!」

王宮騎士団隊長・・・
これは・・・まずい・・・騎士団は僕を狙っている・・・
僕は光獣を獣人にのしかからせた

アルヴァン「!?!?」

ベッドに押さえつけられたアルヴァンさん
驚きのあまり動けないようだ

「な、なにが目的だ!返答次第ではその首噛みちぎる!」

アルヴァン「目的はない!ただ、逃げてきただけだ!」

逃げてきた???
騎士団隊長が???

「嘘をつくな!!騎士団隊長がなぜ逃げる必要がある!!!」

光獣がアルヴァンさんの首に口を持っていく

アルヴァン「・・・俺は・・・無実の罪で・・・投獄された・・・」

このアルヴァンさんっていう獣人は少しずつ話した
陛下の息子を殺めた罪をなすりつけられたこと
無実を主張しても信じてもらえなかったこと
獣人は目に涙を浮かべながら話し続けた
僕はその涙に偽りはないとなぜか思った
その理由はわからないが・・・

アルヴァン「信じられないなら・・・殺してくれ・・・」

「!?」

アルヴァン「俺は・・・もう・・・死んでも構わない・・・」

辛い思いをしたんだろう・・・
なぜか殺すことができなかった・・・
僕は光獣を消した

アルヴァン「!?」

「ケガが治ったらここを出て行ってください・・・それまではここに居てもかまいません」

アルヴァン「ありがとう・・・」

僕は寝室を出た

(獣人も大変なんだな・・・)

考えてもしかたない!
畑に行ってこよう
僕は家を出てすぐ隣にある畑に向かった
この間収穫したから種をまかないと・・・
光獣を使って簡単に耕したり種まきなどができる
水は僕がやらないといけないけど・・・

「♪~~~♪~~~」

いつものように水を撒きながら鼻歌を歌っていた
この後は魚を捕りにいこうか・・・
それともお肉を取りにいこうか・・・
そんなことを考えていたらふと思い出した
あの獣人が光獣を倒したってことを

「配備しないと・・・」

僕は光獣を数体出して巡回に向かわせた

「これでいいだろう」

アルヴァン「君が『久々津 遥斗』(くぐつ はると)だったんだね」

声のする方を見たら
パンツ一枚のアルヴァンさんが畑の入り口に立っていた

アルヴァン「獣を連れているだけだったから君が本人だとは思わなかった」

「だったらどうしますか?」

アルヴァン「どうもしないよ?聞いてたより子供だなって思っただけ」

確かに僕は子供だけど、言われると腹がたつ・・・

「そんなことより服・・・着たらどうですか?」

アルヴァンさんは自分を確認すると顔を赤くして慌てて家に入っていった

「へんな人・・・」

僕はあきれながらもなぜか安心?みたいな感情があった
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