光の傀儡師

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アルヴァン奪還

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一週間後
ケガも治り体力も回復したアルヴァンさん

アルヴァン「大変世話になった!必ずお礼をする!」

「なら、もう二度と僕に関わらないでください」

アルヴァンさんは寂しそうな顔をしていた
僕も少し寂しかったけど、傷つくのはもう勘弁だ・・・

「元気になったなら森から出て行ってください。そして、二度とここへはこないでください」

アルヴァン「・・・わかった」

そういうとアルヴァンさんは荷物をまとめた
荷物と言っても衣類ぐらいしかないけど

「これからどうするつもりですか?」

アルヴァン「俺は無実だ・・・だから、王都に戻り、陛下と話す」

「!?それは殺されに行くようなものですよ!」

アルヴァン「もしそうでも俺は・・・戻る」

そういうと家の入り口へ向かった

アルヴァン「大変世話になった・・・お礼ができないのが心残りだが・・・もう会うことはないだろう・・・では」

と敬礼して家を出て行った
僕は鳥の光獣を使ってアルヴァンさんを監視した
本当に王都に向かうらしい・・・
時折、歩みを止めて家の方を見ているが王都に進んでいく

「はぁ・・・なんでこんなに心が痛いんだろう・・・」

助けてから一週間
アルヴァンさんと過ごしてとても楽しかった
色んなことを聞かせてくれた
兵士のこと、街のこと、自身のこと・・・
僕は時々城下町にいくけど、乾燥肉や作物を売って必要な物を買って帰ってくるだけだから、そんなに街をしらない
僕は話を聞いて笑いはしなかったけど、楽しかった
あの輝かしい笑顔で僕に話してくれた
時々、頭を撫でてくれた・・・

「はぁ・・・」

僕はアルヴァンさんが使っていたベッドに横になった
アルヴァンさんの匂いがする・・・
もう・・・会えない・・・
もう来るなって言ったのは僕だけど・・・
本当はずっと居てほしかったのかもしれない・・・
アルヴァンさんはどうかしらないけど、僕は・・・たぶん・・・
そうこうしているうちにアルヴァンさんは森を抜けたみたいだ・・・
森に向かって敬礼すると王宮を目指したみたいだ・・・

「本当に行くんだ・・・」

このままでは殺されてしまうかも・・・
どうでもいいことなのに・・・
なんで心が張り裂けそうなんだ・・・
獣人は嫌いだ・・・全員・・・でも・・・アルヴァンさんはいい人だった・・・
アルヴァンさんだけは僕をちゃんと見てくれた
なのに、僕はアルヴァンさんを追い出した
王都に行けば間違いなく殺される・・・

「なんで・・・もっと早く会わなかったんだろう・・・」

もっと早く会っていれば・・・
そしたら仲良くなれたのに・・・
そうこうしているうちにアルヴァンさんは城門前に着いたらしい
兵士に捕まり門の中へ連れていかれた
このままでは・・・そう思ったら身体が勝手に動いた
家を飛び出し大きな鳥光獣をつくり王都へ向かった


~アルヴァン視点~
城門前に着いたら有無を言わさず捕まった
それは予測していた
でも、まさか、すぐに処刑が執行されるとは思ってなかった

陛下「お主は必ず戻ると思っていた」

「陛下!どうかお聞きください!」

陛下「罪人の言葉など聞くだけ無駄だ!」

「私は、この数年、ずっと国のため!王のために仕えてきました!少しだけでよろしいのです!どうか!!」

俺の言葉は陛下に届かないらしい
兵士に取り押さえられ首に斧の刃があたり、振り上げられる

(やっぱり・・・来るべきではなかったか?では、どこへ行けと?)

俺の頭の中を記憶が巡る
走馬灯というやつか・・・
幼少期のこと、部下と酒を酌み交わしたこと・・・
そして、遥斗に出会えたこと・・・
俺は遥斗にあって初めて心から笑顔になれた
遥斗は笑わず迷惑そうにしていたが、嬉しそうな感じがした
なんでこんなに遥斗のことばかりが頭を巡るのか・・・
そうか・・・俺・・・遥斗が好きだったのか・・・

ブン!

斧が振り下ろされる音が聞こえる
俺は、馬鹿だな・・・
もっと早くこの気持ちに気づいて、ちゃんと伝えておけばよかった
後悔しかないけど・・・もう・・・いいか
短い間だったけど・・・ありがとう・・・遥斗

「ピーーーーー!」

ドゴン!

なにが起きたのか理解できなかった
口笛が鳴り響いたと思ったら、処刑人が大きく宙を舞い壁にぶつかりめり込んだのだ
俺は頭を上げて状況を確認した

大きな光の獣「グルルルルルル」

あの獣は・・・!

???「アルヴァンさん!!!」

城門の塀の上から聞こえる声
これは紛れもない・・・遥斗の声だ
また助けられたのか・・・



~遥斗視点~
なんとか間に合った
処刑人の斧があと少しでアルヴァンさんの首に落ちるところだった

陛下「!!あの者をひっ捕らえよ!」

陛下がそう叫ぶと多くの兵士がこちらに向かってくる
100・・・いや、200はいそうだ・・・
こちらもアルヴァンさんを助けるまで引けない

「我に従いし獣たちよ。我の命に従え!」

そういうと至る所に光獣が現れ兵士たちを襲う
兵士が切りかかるが光獣に物理的な攻撃はきかない
塀の上に何十名かの兵士が両脇から僕に向かってくる・・・
挟み込まれた。
でも、僕にはそんなのは意味がない

ピョンッ

僕は塀から飛び降りた
高さはかなりありこのまま着地したら確実に死ぬ

アルヴァン「遥斗!!!!!」

「光に包まれし光鳥(こうちょう)よ。おいで!」

空から光輝く鳥が僕を救い上げそのまま空を飛ぶ
アルヴァンさんのところには二人の兵士しかいない
今がチャンスだろう
僕は鳥を使いアルヴァンさんのところに向かった
そして着地の瞬間に二匹の光獣で二人の兵士を倒す

「大丈夫ですか?」

アルヴァン「遥斗!!なんて無茶を!!」

「無茶は百も承知です!アルヴァンさんを失うなんていやです!!」

僕はアルヴァンさんの拘束を解いていると

ザッ!

後ろから誰かが襲い掛かってきた
僕は咄嗟に光獣で相手の剣を止めた

ガキンッ

光獣の牙と剣がぶつかる音が響く

騎士「あはっ!君~すっっごいね!かっこい~!」

アルヴァン「ジニス!」

そのジニスと呼ばれた黒豹獣人はすごい笑顔で光獣を弾き返した

ジニス「いや~隊長の味方がいるなんてね~驚いたよ!それもこんなにかわいい人間・・・ゾクゾクする!」

「あなたは・・・?」

ジニス「僕は、王宮騎士団副隊長『ジニス・レーブン・カートン』よろしくね!『久々津 遥斗』くん?」

アルヴァン「ジニス・・・」

ジニス「隊長?この子どうでした?気持ちよかった?僕も使っていい?」

細身の剣をクルクル振り回しながら下品なことを言ってくる

「あなた・・・状況がわからないのですか?」

ジニスは僕を見つめ

ジニス「うん?わかってるよ?君を生け捕りにしたら好きなだけおもちゃにしていいってことでしょう?」

なにを言ってるんだ・・・
この人・・・狂ってる・・・

アルヴァン「こいつに手出しはさせない!!!」

そういうとアルヴァンさんは立ち上がり側に落ちている剣を手に取る

ジニス「やだな~隊長怖~い!でも、そういうところ好きですよ?」

アルヴァンさんの目が本気になる
雰囲気もがらりと変わる

ジニス「僕なんかに本気で来るの??光栄だけど、僕は隊長に用はないんですよ~」

そういうと細身の剣を僕に向ける

ジニス「僕は、隊長がぞっこんの君に用があるんだよね~」

ぞっこん?アルヴァンさんが?

「ぞっこんって・・・」

ジニス「あれ~気づいてないの?隊長が本気になってまで守ろうとするの初めてなんだよ?」

本気?アルヴァンさんが?

「アルヴァンさんがそんな・・・」

ジニス「聞いてないんだ~それはかわいそうに!でも、そういう相手から奪うのが最高に快感なんだよね~」

この人・・・変だ・・・こんな状況なのになんか・・・中身がないというか・・・ただの機械って感じ・・・

アルヴァン「誰から命じられた」

ジニス「陛下直々だよ?『久々津 遥斗』を捕獲せよって!」

「捕獲・・・」

ジニス「うん!捕獲!四股を切ろうが生け捕りならどんな手を使ってもいいってさ!」

アルヴァン「っ!!」

ジニス「隊長のその顔いいね!!その子を奪ったらもっといい顔になるよね?」

そういうとすごいスピードで僕に剣を突き立ててきた
それをアルヴァンさんが防ぎジニスを押し返す

ジニス「あ~ダメだよ!邪魔しちゃ!」

アルヴァン「さっきも言ったが、こいつはお前なんかに渡さない!!」

ジニス「え~いいじゃん!ケチ!ちょっとくらいくれたって!」

まるで子供だ・・・
ただ言われたことだけをし、駄々をこねる子供・・・

ジニス「なんて・・・時間稼ぎはもういいかな?」

ハッとして周りを見たらいつの間にか囲まれていた
兵士はみんな弓を構えている

「!?僕の傀儡は!?」

ジニス「あ~あれね!あ・そ・こ!」

指さす方を見ると僕の傀儡が転がっていた

「!?」

アルヴァン「!?どういうことだ!」

ジニス「僕たちがずっとなんの対策もしてないと思ってたの?」

対策???
傀儡の無力化?
いや、僕の隣にいる光獣は大丈夫
だとしたらそれ以外の理由・・・

ジニス「フフフ。考えてる顔もかわいいね!早く、犯したいな!そして、泣き顔がみたい!隊長と君の泣き顔が!」

アルヴァン「相変わらずの変態だな・・・」

ジニス「隊長も知ってるでしょう?僕の性癖。かわいい子・・・特に人間のオスを犯すのが興奮するってこと・・・その子につがいがいるってなったらさらに興奮するね!」

アルヴァン「・・・」

そういう性癖もあるのか・・・
アルヴァンさんはどうなんだろう・・・
いや!今はそれどころじゃない!
なぜ、僕の傀儡が活動しなくなったのかだ・・・
大体は活動をしなくなったら消える・・・
そしたら僕もわかる・・・
でも、今回はわからなかった・・・
意識で命令しても動かせない・・・
僕との接続が届かない・・・
接続が届かない???
もしかして・・・でも、じゃあ、僕の隣の光獣はなんで無事なんだ?
それに、この兵士たちと僕たちの距離・・・
試してみるか・・・
僕は光獣を周りの兵士に向かわせた
そしたら光獣は兵士にたどり着く前に倒れて動かなくなる

ジニス「無駄だよ~?今の君には僕たちに触れることもできないよ?」

アルヴァン「どういうことだ・・・」

なるほど・・・
そういうことか・・・

「集まれ・・・忠実な獣たち!」

倒れている光獣たちが消えて一瞬で僕の周りに現れた

ジニス「!?」

アルヴァン「!?」

「簡単なことだったんですよ。繋がりです」

アルヴァン「繋がり?」

「はい、たぶん、この城限定で繋がりを遮断する力が発動している可能性があります・・・半径10メートル離れると遮断されるみたいです」

陛下「ほう・・・そこまでわかってしまうのか・・・若いのに才があるようだ」

アルヴァン「陛下!!」

「あの人がこの国の・・・王・・・」

陛下「本当にお主は・・・いい才を持っておるな・・・命のない物を作り出し戦わせる能力に周りの状況を理解する判断力・・・なぜ、我が軍に入らないのだ・・・」

「僕は軍には興味がないんですよ!」

陛下「その才があれば軍のトップに立てるというのに・・・」

「トップに立ってなんになるんですか?罪を被る手駒になれと?」

アルヴァン「!?」

陛下「・・・お主・・・どこまで知っている・・・」

「フッ、どうやら当たりのようですね?」

陛下「っ!!このガキが!」

アルヴァンさんは理解が追い付かないみたいだ

「アルヴァンさん・・・殿下がなくなったのは、陛下の仕業です。」

アルヴァン「!?」

「実はこっそり調べてたんです。そしたら犯人は陛下だったんですよ。でも、まだ、証拠が不十分でしたので、この機会に・・・と思いまして」

陛下「この・・・勘のいいガキは・・・」

「さて、どうしますか?アルヴァンさんの仇ですよ?」

アルヴァン「・・・陛下・・・本当なのですか?」

陛下「・・・」

アルヴァン「陛下!」

陛下「やれ・・・」

アルヴァン「!?」

陛下「そ奴らを殺せ!!!」

その言葉で全員が矢を放ってきた
僕は光獣を周りから離れないようにして矢を防ぐ
僕と光獣の繋がりが切れるのは約10メートル・・・
10メートル以内で戦うしかない
アルヴァンさんは・・・戦意喪失しているみたいだ

「アルヴァンさん!!!」

アルヴァン「・・・」

「っ!」

一人でこの人数は不利だ・・・
でも、鳥で飛ぶにはここじゃ狭すぎる
一人分程度の鳥ならいけるだろうけど・・・
10メートル離れると動かなくなる・・・
アルヴァンさんを置いてはいけない

シュッ シュッ シュッ

次々矢が放たれる
僕は一人でアルヴァンさんを守りながら防いでいた
少しでも油断したら・・・
その時後ろから

ジニス「隙あり!!」

「しまった!」

接近で来ることは予想していなかった
僕の心臓目掛けて細身の剣が迫ってきた

ガキン!

アルヴァン「・・・手をだすな・・・」

ジニス「およ?」

アルヴァン「こいつに!手をだすな!!!」

そういうとジニスを押し返した

ジニス「残念!あと少しだったのに・・・」

アルヴァン「・・・」

アルヴァンさんがもとに戻ってる?
ならいける
僕は小声で

「庭園まで行けますか?」

アルヴァン「え?あ、ああ」

「じゃあ、少しずつ戦いながら向かいましょう」

アルヴァンさんは頷いた
そして僕は一般兵をアルヴァンさんはジニスを相手にしながら庭園に進んでいく

ガキン! ザッ!ジャキン!

アルヴァンさんとジニスの闘いは激しさを増している
そろそろいいだろう・・・
僕は咳払いをした
アルヴァンさんは合図を理解してくれたらしくジニスと距離を取った

「閃光!!!」

そういうと光獣たちは一斉に光だし周りを光で満たした
その隙に僕たちは大きな鳥光獣に乗り森へと向かった

「もう大丈夫ですよ!」

後ろからアルヴァンさんが抱き着いてきた
ちょっとバランスを崩しそうになった

アルヴァン「遥斗!!!」

「アルヴァンさん・・・」

そして僕たちは「クグツの森」僕の家に着いた

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