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リリィとの散歩
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リリィは、ナナに何も言わなかった。
ただうなだれるナナの横に座っているだけだった。
しばらくして、ぼおっと空を眺めていたリリィは立ち上がった。
「歩きましょう。ナナ」
ナナは、その一声でようやく顔を上げた。
「歩くって?」
「私をストーキングしていたあなたならもうわかってるでしょう?これから歩くのよ。私の散歩コースを」
「リリィ、私そんな気分じゃ」
「いいから。さあ、街へ行くわよ」
リリィは歩き出した。ナナはきっと付いてくると信じて。
結局ナナはしぶしぶリリィの後ろをゆっくり歩いていた。
(ちゃんと付いてきているわね)
そう思ったリリィはふと足を止めた。
そこは証券会社の前だった。
ナナも同じように足を止める。
リリィはじっとその証券会社を見つめていた。
「ねえリリィ」
ナナはようやく口を開いたのだった。
「私ずっと不思議だったの。リリィはここでこの会社の何を見ていたの?」
リリィは微笑むと証券会社の受付を指さした。
「あの受付の奥に時計があるでしょ?」
ナナは受付の奥を見つめた。
そこにはたくさんの時計が。
「あの時計が何?」
「よく見て」
数十個の時計が並べられていたが、どれひとつとして同じ時間を刻んでいるものはなかった。
ナナは、ああと声を上げた。
「色んな国の時計ってわけね」
リリィは頷く。
「あそこにある時計にはこの国の時間を刻む時計があれば、全く反対側にある国の時間を刻んでいる時計もある。たくさんの国の時間を表しているのよ」
ナナはリリィがだからと言ってあの時計を見つめる意味がわからなかった。
「だからってどうしてここを通る度に見つめていたの?」
「あの時計を見つめてるとね、私、この世界の一員だって思えるのよ」
ナナは眉をひそめた。
「そうかな?」
リリィはふふっと微笑んでこう言った。
「私が仕事に行くため目を覚ます頃、どこかの国の誰かは眠りにつく。反対に私が眠りにつく頃、どこかの国の誰かは仕事や学校に向かうために目を覚ます。そうやって世界が回ってるって実感できるの。この世界に私は生きているんだって。私も世界を回す一員なんだって思うことができる」
(ああ。そうか)
ナナは、納得した。
さっき聞いたリリィの言葉、今聞いたリリィの言葉。
リリィという人は、生きていること自体がどれほど恵まれているのか知っている人間なのだと。
誰もが死にたいとか生きていても意味がないとか一度は必ず思ったことがあるはず。
だが、目の前にいるリリィはきっと一度も思ったことがない。
なぜなら、わかっているからだ。
死ぬことが何よりも辛いことだということを。
ただうなだれるナナの横に座っているだけだった。
しばらくして、ぼおっと空を眺めていたリリィは立ち上がった。
「歩きましょう。ナナ」
ナナは、その一声でようやく顔を上げた。
「歩くって?」
「私をストーキングしていたあなたならもうわかってるでしょう?これから歩くのよ。私の散歩コースを」
「リリィ、私そんな気分じゃ」
「いいから。さあ、街へ行くわよ」
リリィは歩き出した。ナナはきっと付いてくると信じて。
結局ナナはしぶしぶリリィの後ろをゆっくり歩いていた。
(ちゃんと付いてきているわね)
そう思ったリリィはふと足を止めた。
そこは証券会社の前だった。
ナナも同じように足を止める。
リリィはじっとその証券会社を見つめていた。
「ねえリリィ」
ナナはようやく口を開いたのだった。
「私ずっと不思議だったの。リリィはここでこの会社の何を見ていたの?」
リリィは微笑むと証券会社の受付を指さした。
「あの受付の奥に時計があるでしょ?」
ナナは受付の奥を見つめた。
そこにはたくさんの時計が。
「あの時計が何?」
「よく見て」
数十個の時計が並べられていたが、どれひとつとして同じ時間を刻んでいるものはなかった。
ナナは、ああと声を上げた。
「色んな国の時計ってわけね」
リリィは頷く。
「あそこにある時計にはこの国の時間を刻む時計があれば、全く反対側にある国の時間を刻んでいる時計もある。たくさんの国の時間を表しているのよ」
ナナはリリィがだからと言ってあの時計を見つめる意味がわからなかった。
「だからってどうしてここを通る度に見つめていたの?」
「あの時計を見つめてるとね、私、この世界の一員だって思えるのよ」
ナナは眉をひそめた。
「そうかな?」
リリィはふふっと微笑んでこう言った。
「私が仕事に行くため目を覚ます頃、どこかの国の誰かは眠りにつく。反対に私が眠りにつく頃、どこかの国の誰かは仕事や学校に向かうために目を覚ます。そうやって世界が回ってるって実感できるの。この世界に私は生きているんだって。私も世界を回す一員なんだって思うことができる」
(ああ。そうか)
ナナは、納得した。
さっき聞いたリリィの言葉、今聞いたリリィの言葉。
リリィという人は、生きていること自体がどれほど恵まれているのか知っている人間なのだと。
誰もが死にたいとか生きていても意味がないとか一度は必ず思ったことがあるはず。
だが、目の前にいるリリィはきっと一度も思ったことがない。
なぜなら、わかっているからだ。
死ぬことが何よりも辛いことだということを。
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