記憶喪失の少年と謎の少女の物語

月見団子

文字の大きさ
9 / 23
記憶【記憶をなくしてから?日目】

剣道部での攻防①

しおりを挟む
「ここが、剣道部の部室だよ~」
俺達は制服から剣道着に着替えて一つの扉の前に立っていた。
「ここが……。」
「まぁ、そこまで緊張しなくても大丈夫だよ。
君は、思った通りに動けば良いから。」 
「とはいえ記憶はないんだぞ?」
「頭は覚えてなくても体は覚えてるでしょ?
今日の朝の軽い試合、覚えてる?」
「あぁ。覚えてるよ。」
「あんな感じに動けば良いんだよ。」
「わ、分かった。」
「それと、この扉を開けて、一歩入ったら、
「お願いします」って大きな声で言ってね。
まぁ、ただ大きな声じゃ駄目だよ。
しっかりと芯の通った声でね。」
「わ、分かった。」
「じゃ、開けるね~」
そして、引き戸が、開く。
「「お願いし…」」
その声を上げた瞬間、練習をしてた全員がこちらを向いて、
「「「「「お願いしますッッッッッ!」」」」」
声で引っ繰り返りそうになりそうだった。
誰もが練習を止めて、竹刀を腰に添えて、頭を下げる。
あれ?俺らって一年生だよな?
って事はこの中には先輩もいる訳で……。
「あ、あの桜?」
「なに?」
俺は小声で桜に、声をかける。
「何で俺らはこんな対応なんだ?」
「それは、この部活を引っ張ってるからだよ。」
「それだけで?」
「まぁ、練習が始まれば分かるよ。
でも、この剣道部も実力者で一杯だよ。
殆どが全国大会は経験してる。」
「でも、先輩も居るんでしょ?」
「居るよ。
でも、皆ボク達に付いてきてくれる。」
「そうなんだ。」
「誇りを持ちなよ。
もっと堂々と。ね?」
「り、了解。」
「それでこそ日向君だよ。」
そして、皆が整列をして、礼をする。
剣道の礼儀作法らしい。
そして、練習を再開する。
「練習の相手をしてください!」
「あ、えっと、」
「日向君。」
「良いですよ。」
「ありがとうございます。」
1礼をし、竹刀を構える。
違いってこの事か?
瑠奏よりと動きが遅いな。
「面!」
相手の動きをよく見て、
「小手!」
「あ~、また1本取られちゃいました。」
「でも、十分良い動きだよ。」
「ありがとうございます!」
一礼をし、1歩下がりながら、竹刀を収める。
「ねぇねぇ、日向君。」
「なんだ?桜。」
「ちょっとボクと試合をしてみない?
朝と違って防具も付けてるし。」
「良いけど。」
「……皆集まって!」
皆が集まってくる。
「1度ボク達の試合を見てくれない?
そこから、学んでほしいんだ。
どう仕掛けて、どう打つのか。
竹刀で、どう防御するのか。
足の動きはどうなのか。」
「「「「わかりました!」」」」
「良し。
そこの君!」
「はい!」
「審判をしてくれない?」
「はい!喜んで!」
やった!と小さくガッツポーズをしながら俺達の中心から横にずれた所に立つ。
周りのみんなは羨ましそうにしているが、しっかりと俺達を見ている。
「「お願いします。」」
朝と同じような緊張感が体を支配する。
一礼。構える。
審判を頼まれた人、名字は紺野と書いてあった。
紺野が、
「初めッ!」
といった瞬間、体が勝手に動く。
頭で考えるよりも早く。そして、速く。
朝の様に当てては行けないという縛りがないからだろうか。
桜が面を打ってくる。
面を打ち返し、胴を狙う。
が、打ち返される。
面、打ち返し、小手。
それが打ち返され、面。
それを打ち返し胴。
打ち返され小手。
打ち返し面。
打ち返され胴。
それの繰り返し。
まるで、桜の技に操られているかの様な、そんな感覚に陥る。
けど、面で見えないが、桜の顔は笑顔だった。
俺も、きっと笑顔なのだろう。
二人ともこの空間を楽しんでいた。
いつの間にか周りは何も見えなくなり、目の前の桜しか視界には入っていなかった。
_未だ、攻防は続いている。_
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー! 愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は? ―――――――― ※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!

私はバーで強くなる

いりん
ライト文芸
33歳、佐々木ゆり。仕事に全力を注いできた……つもりだったのに。 プロジェクトは課長の愛人である後輩に取られ、親友は結婚、母からは元カレの話題が飛んできて、心はボロボロ。 やけ酒気分でふらりと入ったのは、知らないバー。 そこで出会ったのは、ハッキリ言うバーテンダーと、心にしみる一杯のカクテル。 私、ここからまた立ち上がる! 一杯ずつ、自分を取り戻していく。 人生の味を変える、ほろ酔いリスタートストーリー。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...