英華女学院の七不思議

小森 輝

文字の大きさ
12 / 53

英華女学院の七不思議 12

しおりを挟む
 椅子に座り、持っている豪華な日替わり定食をテーブルに置いた。
「さて、どうしたものか……」
 雛ノ森さんは先に食べていてくださいと言っていたが、そうするわけにはいかない。かといって、雛ノ森さんの到着を凝視しながら待つような高校生男子みたいなことはしたくない。
 雛ノ森さんを見るのもダメ。日替わり定食も見ていると胃が悲鳴を上げてくる。
 変に視線の行き場に困った私は、周りを見渡すことにした。
 周囲には、すでに女子生徒がグループを作って食事をしている。そんな中に一人ポツンといるのは気まずかった。だが、二学期ともなればもう慣れたものだ。それに、他の教師の方も一人で食事をしている方が多い。平川先生にいたっては、周囲に全く生徒がおらず、まるでバリアでも張っているのかと思うほどだ。
「お待たせしました」
 そんなことを考えていると、雛ノ森さんが急いでやってきた。
「そんなに急がなくてもよかったんですけど……」
「いえ、そういうわけにはいきません」
 そういって、雛ノ森さんは私の前に座った。
 雛ノ森さんが持ってきた昼食は、小さめのかわいいサンドウィッチに紅茶という組み合わせだった。
「あ、先生、やっぱりまだ箸をつけてなかったんですね。私のこと、待たなくてもよかったのに……」
「そういうわけには……」
 こういう話は意地の張り合いの平行線になってしまうのでやめておこう。
「それよりも、ご飯をいただきましょう。料理が冷めて……紅茶が冷めてしまいますから!」
「そうですね」
 サンドウィッチは元から温かくないので冷める心配もない。また、無駄に気を使わせてしまった。
「「いただきます」」
 二人、両手を合わせて感謝をし、食事を始めた。
 自分の料理を受け取って、雛ノ森さんを待っていたと言っても、冷えてしまうほどの時間は経っていない。その証拠に、タケノコの炊き込みご飯を口に運ぶとまだ温かい。
「あの……お食事中に申し訳ないのですが……」
 口に入っているタケノコご飯を飲み込む間に、雛ノ森さんが何を話したいのか考えた。
「先輩のお話ですか?」
 学食が込むと言うことを分かっていながら私を待っていたのだから、大事な話、つまり、行方不明になっている探偵部の先輩の話で間違いない。
「そうです」
 当たったことに失礼ながら心の中でガッツポーズをした。
「学食になら先輩も必ず来ると思って、走って、まだ数人しかいないところから待っていたんですけど、会えませんでした」
 廊下は走ってはいけません、という注意を教師であるならするべきなのだが、これには私にも落ち度がある。授業の時になんて考えず、朝一番に学年写真で放課後に3年生が集合すると伝えるべきだった。そうすれば、彼女が学食の前で一人待つなんて状況は回避出来たはずだ。
「先輩を見つける、と言う話なのですが、今日の放課後、3年生全員で学年写真を撮るという話を聞きまして」
「本当ですか!?」
 不意の大声に周囲の生徒が一斉にこちらへと注目した。私へと前のめりになっていた雛ノ森さんは、顔を赤らめながら周りの生徒に頭を下げ、静かに椅子に座ってくれた。
「それなら、きっと……でも、お休みしている生徒とかはいないんですか?」
「学年写真ですからね。休みの生徒がいれば中止になるという話です。今日は休みもないし天気もいいので、写真撮影は行えるという話です」
「そうなんですね……これでやっと……」
 見つかればいいのだが、嫌な予感が私の頭に張り付いた気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...