英華女学院の七不思議

小森 輝

文字の大きさ
上 下
13 / 53

英華女学院の七不思議 13

しおりを挟む
 授業が終わり、日課のトイレ掃除も終えた私は、一人で校庭にある一番大きな階段へと向かっていた。
「先生! よかった。間に合った……」
 後ろから私を呼び止め走ってくるのは、もちろん雛ノ森さん。ただ、私はいつもいつも雛ノ森さんには甘いと感じていたので、この辺でビシッと教師の威厳と言うものを見せなければならない。
「廊下は走ってはいけませんよ」
「あっ、すいません」
 と言いながら、私のところまではきちんと走ってきた。
「あまり校則を破らないでくださいよ。一応、副担任なんですから。今までは目を瞑ってきましたが、次からは担任の森田先生に報告しますからね」
「分かっています。だから、謝ったじゃないですか。ですから、森田先生には報告しないでくださいね」
 あきらかに私はなめられている。
 確かに1年3組担任の森田先生は生徒から恐れられる怖い先生だ。実は私も少し怖い。歳は私の二倍ほどだし、森田先生自身もあまり口数が多い訳ではない。担任と副担任なのにそれではいけないとは思うのだが、怖いものは怖いのだからどうしようもない。
 昇降口から外にでると、様々な音が聞こえてきた。生徒同士の談笑、声楽部の合唱、オーケストラ部の演奏。騒音というには心地よい音だった。
「外なら走っても大丈夫ですよね?」
「もちろんですけど、私は走りませんからね」
 雛ノ森さんはいち早く3年生が集合している場所に行きたいのだろうが、早く行けばいいと言うものでもない。
 言葉以外でも私を急かしながら、二人でその場所に向かった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

人形工場

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:1

独占欲が強い担任の先生!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

オリエント撤退

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

偏見を超えて:ぼろぼろスーパーの蘇り

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

アーミー少女

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

青く大きな空に一輪の花を

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

白い封筒

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...