町一番の支援魔法の使い手は元オタサーの姫! ~本気の想いは届かない~

小森 輝

文字の大きさ
65 / 67
6 私の初ボス戦

町一番の支援魔法の使い手は 65

しおりを挟む
 それからもボスモンスターと50人ほどの冒険者との戦闘に入った。4、5人のパーティーが複数あり、そのパーティーごとに指示が飛び、戦場は複雑さを増していた。あのいつも酒場で酔いつぶれている人たちが、とても統率が取れた動きをしている。
「……いけそうですね」
 この様子を見たヘイトさんがそう呟いた。ただ、その呟きに反論する人はいなかった。
 指示は複雑でいつ失敗するかも分からないが、なんというか、グッドモーニングさんとグッドナイトさんを見ている手前、なんだか安心感がある。
 そして、その安心感はそのまま継続していき、後少しで倒せるのではないのかというところまで来た。
 そして、この圧勝ともいえる状況を真っ先に不振に思ったのはコンさんだった。
「この程度のダンジョンだったのか……?」
「何か気になることでもあるのか?」
 ヘイトさんは相変わらず、このまま倒せると思っているのだろう。元々、このダンジョンは私たちに回されていたダンジョンだ。ギルドに仮入団して初めてのダンジョンというのもあるし、おそらく、それほど難易度の高いダンジョンを紹介してくれた訳ではないのだろう。むしろ、弱いダンジョンだったのかもしれない、塔の中も迷わないように一本道だったし。
 そう考えると、ボスモンスターがこの程度なのも分かるが、しかし、コンさんは違う。
 おそらく、コンさんはこのダンジョンの特異性を懸念しているのだろう。塔の上がゴールかと思いきや、そこが折り返し地点だったり、塔の鐘を鳴らすことで先のダンジョンが現れたり、コンさんもあまり体験がないダンジョンだったようだ。そのため、このボスモンスターも警戒している。
 ただ、もうボスモンスターも倒れそうだ。体の至る所が崩れ、そして、モンスターの表面にもヒビが入って来ている。そして、そのヒビの隙間から黄金の光が漏れている。もう内包するエネルギーを押さえきれないと言った様子で、ボスモンスターの表面が弾け飛んだ。
 その様子に殆どの冒険者は倒したと喜んだ。ただ一人の冒険者を除いて……。
「防げ! まだ終わってねえぞ!」
 コンさんの声もむなしく、ボスモンスターの中から現れた黄金の大仏が光を放ちだした。
 近くにいた冒険者たちは一斉にダメージを受けていた。その様子にいち早く判断を下したのは団長さんだった。
「全体、速やかに後退! ナイト! 起きているだろ! お前の出番だ!」
 団長さんがそう叫ぶと、遠くでグッドナイトさんが起きあがっていた。
 確かに、あの光も魔法。それならグッドナイトさんが無効にできるはずだ。
 そう考えてグッドナイトさんを起こしたのだろうが、ダンジョンはそこまで甘くない。
 グッドナイトさんは魔法攻撃を一度も無効にしておらず、再びボスモンスターの攻撃で吹っ飛んで行ってしまった。
 完全に予想外の動きなのだろう。本来なら攻撃パターンの切り替えは2回。魔法系と攻撃系なのだが、今回、それに加え魔法も物理攻撃も使うような状態が生まれた。これではグッドナイトさんが意味をなさない。それだけではなく、苦戦するのは、グッドナイトさんだけではない。魔法も物理攻撃もしてくるなんて、なかなか強い。
 そんな状態でも、何とか全員後退を続けていく。
 ただ、後退に納得ができないものもいる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...