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1 冒険の幕開けは突然で
アルスター 1
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ある特別な日の帰り道。
数人の子供たちが集まって泣いているのを見つけた。
「どうしたんだ? お前たち」
「あ、アルにぃ。作ってたブレスレットが欠けちゃって……今日、アルにぃに」
「ちょ、ちょっと、言っちゃだめでしょ!」
「ご、ごめん。アルにぃ。自分たちでどうにかするから」
そそくさと離れて行ってしまった。
「そうか……」
僕はそこまで鈍感ではない。
あれは、僕のために作ってくれている物なんだろう。だって、今日は僕の16歳の誕生日だから。
家に帰るが、母親はいない。今日は特別な日だから、夕飯は家ではなく村の小さな教会に準備してある。
今日はお祝いだ。
教会の扉を開けると、騒がしい声が広がってくる。
口々におめでとうという言葉を聞かされ、僕は幸せな気持ちになる。
小さな村を上げて、盛大に祝ってくれた。僕は幸せ者だ。
豪華な夕食を終えると、誕生日の贈り物を受け取った。村の子供たちからは少し不格好な腕輪を。村の大人たちからは少しばかりのお金を。母からは星がぶら下がったネックレスを。
みんな、涙を浮かべながら渡してくれた。まるで、明日、僕が死ぬかのように。もちろん、明日、僕が死ぬ訳ではない。ただ、この村から居なくなることは事実だ。
夕食会も終わり、家に帰った僕は、ゆっくり、確かめながら準備をした。
「アルスター。こんな夜中に出発しなくても……。日が昇ってからでも遅くはないわ」
母親が心配そうに言ってきたが、これはずっと前から決めていたことだ。
「夜中に出発したら、朝には王都に着くからね。そっちの方が、職探しも宿探しも楽だろうし、それに……」
「ベスターのことは心配しなくてもいいのよ?」
「いいや。ベスにぃは必ず見つけだすよ」
僕には兄がいる。今の僕と同じように3年前に村を出て行った。でも、それ以降、帰ってきてはいない。そんな兄を探すためにも、少しでも早く王都へ行きたいのだ。
「アルスター。自分の身のことを一番に考えて。必ず、戻ってきて」
「分かっているよ。1年後、僕の誕生日に稼いだお金を持って来るから」
僕は王都へ遊びに行くのではない。16歳という大人になった僕は王都へ出稼ぎに行くのだ。頭はそれほど良くないから、傭兵としての仕事を探そうと思っている。危険は伴うが、日々、畑を耕して体力は付いているし、暇な時間は剣の練習もした。
「それじゃあ、行ってくるよ。母さんも僕が帰ってくるまで元気にしていてよ」
家の扉を開け、出発、と思ったが、開けた扉の向こうに少女が立っていた。
「モーガン。見送りに来てくれたの?」
小さい頃から毎日のように会っていた幼なじみの少女。でも、これからは年に1度、僕の誕生日にしか会えなくなる。
「アルスター。これ……」
大事そうに握っていた拳を開くと、そこには一つの指輪があった。
「僕に?」
「うん。大事にして。きっとあなたを守ってくれるから」
「ありがとう」
てっきりくれると思って手を差し出したが、渡してくれる様子がない。
「右手じゃなくて……」
「右手じゃなくて?」
「右手じゃなくて、左手を出して」
貰う手が何か重要なのかと疑問に思ったが、言われたとおり、利き手の右手を引き、左手を差し出した。
「付けてあげる。たぶん、サイズはぴったりだから……」
僕の左手を握り、薬指に指輪を通すと、本当にぴったりだった。
「左手の薬指は心臓に一番近い指だから、きっと守ってくれる」
「そうか。ありがとう。大事にするよ」
体温が移った指輪はまだ少し暖かい。
それだけじゃない。子供たちから貰った腕輪も、大人から貰ったお金も、母から貰ったネックレスも、全てが暖かい。これなら、寒い夜でも凍えることはない。
「行ってきます」
今日の夜は月もなく、闇は深い。でも、降り注ぐような星空が道を作っているから、道に迷うことはない。
数人の子供たちが集まって泣いているのを見つけた。
「どうしたんだ? お前たち」
「あ、アルにぃ。作ってたブレスレットが欠けちゃって……今日、アルにぃに」
「ちょ、ちょっと、言っちゃだめでしょ!」
「ご、ごめん。アルにぃ。自分たちでどうにかするから」
そそくさと離れて行ってしまった。
「そうか……」
僕はそこまで鈍感ではない。
あれは、僕のために作ってくれている物なんだろう。だって、今日は僕の16歳の誕生日だから。
家に帰るが、母親はいない。今日は特別な日だから、夕飯は家ではなく村の小さな教会に準備してある。
今日はお祝いだ。
教会の扉を開けると、騒がしい声が広がってくる。
口々におめでとうという言葉を聞かされ、僕は幸せな気持ちになる。
小さな村を上げて、盛大に祝ってくれた。僕は幸せ者だ。
豪華な夕食を終えると、誕生日の贈り物を受け取った。村の子供たちからは少し不格好な腕輪を。村の大人たちからは少しばかりのお金を。母からは星がぶら下がったネックレスを。
みんな、涙を浮かべながら渡してくれた。まるで、明日、僕が死ぬかのように。もちろん、明日、僕が死ぬ訳ではない。ただ、この村から居なくなることは事実だ。
夕食会も終わり、家に帰った僕は、ゆっくり、確かめながら準備をした。
「アルスター。こんな夜中に出発しなくても……。日が昇ってからでも遅くはないわ」
母親が心配そうに言ってきたが、これはずっと前から決めていたことだ。
「夜中に出発したら、朝には王都に着くからね。そっちの方が、職探しも宿探しも楽だろうし、それに……」
「ベスターのことは心配しなくてもいいのよ?」
「いいや。ベスにぃは必ず見つけだすよ」
僕には兄がいる。今の僕と同じように3年前に村を出て行った。でも、それ以降、帰ってきてはいない。そんな兄を探すためにも、少しでも早く王都へ行きたいのだ。
「アルスター。自分の身のことを一番に考えて。必ず、戻ってきて」
「分かっているよ。1年後、僕の誕生日に稼いだお金を持って来るから」
僕は王都へ遊びに行くのではない。16歳という大人になった僕は王都へ出稼ぎに行くのだ。頭はそれほど良くないから、傭兵としての仕事を探そうと思っている。危険は伴うが、日々、畑を耕して体力は付いているし、暇な時間は剣の練習もした。
「それじゃあ、行ってくるよ。母さんも僕が帰ってくるまで元気にしていてよ」
家の扉を開け、出発、と思ったが、開けた扉の向こうに少女が立っていた。
「モーガン。見送りに来てくれたの?」
小さい頃から毎日のように会っていた幼なじみの少女。でも、これからは年に1度、僕の誕生日にしか会えなくなる。
「アルスター。これ……」
大事そうに握っていた拳を開くと、そこには一つの指輪があった。
「僕に?」
「うん。大事にして。きっとあなたを守ってくれるから」
「ありがとう」
てっきりくれると思って手を差し出したが、渡してくれる様子がない。
「右手じゃなくて……」
「右手じゃなくて?」
「右手じゃなくて、左手を出して」
貰う手が何か重要なのかと疑問に思ったが、言われたとおり、利き手の右手を引き、左手を差し出した。
「付けてあげる。たぶん、サイズはぴったりだから……」
僕の左手を握り、薬指に指輪を通すと、本当にぴったりだった。
「左手の薬指は心臓に一番近い指だから、きっと守ってくれる」
「そうか。ありがとう。大事にするよ」
体温が移った指輪はまだ少し暖かい。
それだけじゃない。子供たちから貰った腕輪も、大人から貰ったお金も、母から貰ったネックレスも、全てが暖かい。これなら、寒い夜でも凍えることはない。
「行ってきます」
今日の夜は月もなく、闇は深い。でも、降り注ぐような星空が道を作っているから、道に迷うことはない。
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