アルスター ~星降る夜の冒険譚~

小森 輝

文字の大きさ
19 / 55
3 妖精の賢者

アルスター 19

しおりを挟む
「……ん? そこに誰かいるのか? お客人かな?」
 黒く汚れた丸眼鏡を服の裾で拭き、再びかけると、青く澄んだ瞳を覗かせた。
「……あれ? よく見たら、そこのご老人は人類王ではござらぬか! それに、そこにいる小さくて丸いドワーフ殿はドワーフ王! そして、そこの少年は…………君は誰だ? 知らない顔だ。どこの王だ? 子供王国の王か? 子供王国とはなんでござるか?」
 一人で勘違いして、一人で混乱していた。
「あの……お二人は王なんですが、僕は王とかではないんです」
「いやいや、ご謙遜を。この顔ぶれで王ではあらぬなど……なるほど、小生、閃き申した! 王子でござるな! そうなのであろう! そうに違いない! 確かにその歳で王はいささ反感を買うであろうし。それに人間の王は小生がついさっき見抜いたばかりですからな。小生のうっかり屋。しかし、なるほど、王子か。それなら、小生も納得がいく答えですな」
 結局、勘違いしたまま納得してしまった。
「兄さん、彼は王でも王子でもないわ。旅先で出会って協力してもらっている小さな村出身のアルスターよ」
「メリル! メリルなのか!」
 メリルが説明した声に反応して、エルフの青年は僕に飛びついてきた。
「な、何ですか!?」
「そうか、メリル、無事であったか。いや、無事というわけでもあらぬか。まさか、小生の萌え妹、メリルが人間の少年になっていたなんて……。妹萌の小生としては、とても許し難きこと。しかし、なぜであろうか。この劣情は。小生、ノンケだと自負していたが、中身が最愛の妹だと思うと……まさか小生にこんな隠された性癖があったとは……。いや、逆に小生が性転換して姉になってしまえば、BL展開にはならず、夢のおねショタが実現してしまうのでは……。はっ! すぐに性転換の研究を始めなければ!」
 長々とよく分からないことを呟いたかと思えば、踵を返して黒煙渦巻く部屋の中へと戻ろうとしていた。
「兄さん! 全部、兄さんの勘違いよ。彼はアルスター。そして、私は彼の首に掛かっているネックレスの宝石よ」
 メリルの言葉を聞き、慌てて懐から宝石となっているメリルを取り出した。
「おぉ、その悪鬼羅刹を寄せ付けぬ魔力。確かに小生の妹。こんな宝石の姿になっているとは……。しかし、妹を宝石にして鎖につなぐとは……新しいジャンルが増えそうですな」
「兄さん……いい加減にしなさい!」
 その怒気をはらんだ声に乗せて、メリルの風魔法がエルフの青年に炸裂した。
 エルフの青年は部屋の中に飛ばされ、風魔法の力で部屋の中の黒煙まで吹き飛んだ。
「しょ、小生にマゾの気質はありませぬぞ!」
「喜ばせようとしてやったんじゃないわよ。さ、部屋の中に入りましょう」
 女性は人間だろうとエルフだろうと怒らせたら怖いと思いながら部屋の中へと入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス召喚されて助かりました、逃げます!

水野(仮)
ファンタジー
クラスでちょっとした騒動が起きていた時にその場に居た全員が異世界へ召喚されたみたいです。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...