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1章 運命の出会い……?
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「あ! 君! 部活入ってないよね?」
それはもう本当に突然のことでした。
転んだ彼は私の方を見ているし、心配して駆け寄ってきた人たちも彼の視線を追って私のことを見ています。
右も左も後ろにも、人はいません。間違いなく私に向けられた言葉です。
「あっ……えっと……」
この反応は別に私がコミュ障な訳ではありません。そんな突然、自転車で派手に転けた相手から部活に入っているのかなんて聞かれても誰だって反応に困るに決まっています。
「あぁ、すいません。本当に大丈夫なんで……」
私が返事に困っているのを見て気を利かせたのか、集まっていた人たちにお礼を言い、そして、私と正面から向き合って、再び質問を問いかけてきました。
「この時間に帰ってるって言うことは部活に入ってないってことだよね? それとも、今日は部活が休みとか?」
「いや……違うけど……」
やっぱり、さっきあれだけ凝視していたのは私に何か話があったからなのでしょう。でも、なんの話なのでしょうか。知り合いというわけでもなさそうですし、部活の勧誘にしては少し遅いでしょう。そもそも、彼は1年生なので、勧誘する側じゃない気はします。
彼の質問の意図は分かりませんし、考える時間も与えてくれないようです。
「君、身長155センチジャストかそれより少し高いぐらいだよね?」
「えっと……156だけど……」
「やっぱり! ちょうど良さそうな身長だと思ったんだよ」
乙女の身長を聞いて、何の得があるのでしょうか。世界には様々な好みを持った人がいると聞きますし、もしや彼は身長フェチなのでしょうか。
そんなものは邪推なのでしょうが、私は少し身構えました。
男は、皆、狼だと言います。こんな無害そうな顔をしていてもどんな本性を隠し持っているのか分かったものじゃありません。
そんな私の様子に気づくこともなく、彼は鞄の中を漁り始めました。
どんな変態な物が出てくるのだろうかと思っていたのですが、そんな不埒な物は出てきませんでした。
「確かまだ1枚……っと、よかった。あったあった」
そう言って、彼は一枚のプリントを差し出してきました。
「これは……?」
恐る恐る受け取ってみると、そこにはカーラーコピーで一面にどこかの惑星が描かれていました。
「今年から男女2枠になったんだけど、女子枠がまだ埋まってなくてさ。身長もクリアしてそうだし、興味があったら見学でもいいから、明日、部室を覗きに来てみてくれ。詳しい話はその時にするから。それじゃあ、俺はこれから部活があるから。じゃあ、また明日な」
「えっ……明日って……」
一方的に言うだけ言って、自転車で転けた彼は懲りもせずに再び自転車へと跨がり行ってしまいました。
「なんだったの……」
取り残された私は自転車のスピードを追うこともできず、呆然と立ち尽くすしかありません。
「この火星っぽい星と何か関係してるのかな……」
プリントには小さな文字がたくさん書いてありますが、これは家に帰った後で読みましょう。歩きながら読んでは、さっきの男子生徒のように電柱にぶつかってしまいますから。
それはもう本当に突然のことでした。
転んだ彼は私の方を見ているし、心配して駆け寄ってきた人たちも彼の視線を追って私のことを見ています。
右も左も後ろにも、人はいません。間違いなく私に向けられた言葉です。
「あっ……えっと……」
この反応は別に私がコミュ障な訳ではありません。そんな突然、自転車で派手に転けた相手から部活に入っているのかなんて聞かれても誰だって反応に困るに決まっています。
「あぁ、すいません。本当に大丈夫なんで……」
私が返事に困っているのを見て気を利かせたのか、集まっていた人たちにお礼を言い、そして、私と正面から向き合って、再び質問を問いかけてきました。
「この時間に帰ってるって言うことは部活に入ってないってことだよね? それとも、今日は部活が休みとか?」
「いや……違うけど……」
やっぱり、さっきあれだけ凝視していたのは私に何か話があったからなのでしょう。でも、なんの話なのでしょうか。知り合いというわけでもなさそうですし、部活の勧誘にしては少し遅いでしょう。そもそも、彼は1年生なので、勧誘する側じゃない気はします。
彼の質問の意図は分かりませんし、考える時間も与えてくれないようです。
「君、身長155センチジャストかそれより少し高いぐらいだよね?」
「えっと……156だけど……」
「やっぱり! ちょうど良さそうな身長だと思ったんだよ」
乙女の身長を聞いて、何の得があるのでしょうか。世界には様々な好みを持った人がいると聞きますし、もしや彼は身長フェチなのでしょうか。
そんなものは邪推なのでしょうが、私は少し身構えました。
男は、皆、狼だと言います。こんな無害そうな顔をしていてもどんな本性を隠し持っているのか分かったものじゃありません。
そんな私の様子に気づくこともなく、彼は鞄の中を漁り始めました。
どんな変態な物が出てくるのだろうかと思っていたのですが、そんな不埒な物は出てきませんでした。
「確かまだ1枚……っと、よかった。あったあった」
そう言って、彼は一枚のプリントを差し出してきました。
「これは……?」
恐る恐る受け取ってみると、そこにはカーラーコピーで一面にどこかの惑星が描かれていました。
「今年から男女2枠になったんだけど、女子枠がまだ埋まってなくてさ。身長もクリアしてそうだし、興味があったら見学でもいいから、明日、部室を覗きに来てみてくれ。詳しい話はその時にするから。それじゃあ、俺はこれから部活があるから。じゃあ、また明日な」
「えっ……明日って……」
一方的に言うだけ言って、自転車で転けた彼は懲りもせずに再び自転車へと跨がり行ってしまいました。
「なんだったの……」
取り残された私は自転車のスピードを追うこともできず、呆然と立ち尽くすしかありません。
「この火星っぽい星と何か関係してるのかな……」
プリントには小さな文字がたくさん書いてありますが、これは家に帰った後で読みましょう。歩きながら読んでは、さっきの男子生徒のように電柱にぶつかってしまいますから。
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