オートマーズ

小森 輝

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1章 運命の出会い……?

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「ただいまぁー」
 家に帰ると、何時間も机に座って先生の授業を聞いていた疲れが一気に押し寄せてきました。
「おかえり、ひーちゃん」
 私のことを「ひーちゃん」と呼ぶのは、私の母親です。もう高校生なのだから「ちゃん」を付けるのはやめてほしいのですが、生まれてからずっと「ひーちゃん」だと他の呼ばれ方では違和感で背中がむずむずしてしまいます。家の外、それもクラスメイトが見ているところで「ひーちゃん」と呼ばれないように祈るばかりです。でも、今はお祈りするよりも疲れをとる方が先決です。
 早く休むべく、自分の部屋へと行こうとしましたが、残念ながら母から呼び止められてしまいました。
「あっ! ひーちゃん! もうすぐご飯できるけど、先に食べる? それとも、お父さんたちを待ってからにする?」
「後からでいい」
 私は今、疲れているのです。ご飯をいつ食べるのかぐらいで呼び止めたりしないでほしいです。
 少しだけ不快になりながら自分の部屋へ入ると、やっと重たい鞄を降ろせました。もう肩が凹んでしまっているかもしれません。教科書持ち帰り必須なんて悪魔のような校則です。
 そして、私は、今日一日の疲れに打ちのめされて、ベッドへとダイブするのでした。
 しかし、そんな私の行動を母は見透かしていたようです。
「ひーちゃん! 制服のまま寝たら皺ができるわよ! ちゃんと着替えなさい!」
「分かってる!」
 キッチンからの声に、私も大声で返しました。
 疲れたんですから、ベッドの上で少しだけゴロゴロするぐらい許してほしいものです。制服だって、少しぐらいなら皺もできないはずです。というか、そろそろ絶対に皺が付かない服とか出てきてほしいものです。服は見た目も重要ですが、もう少し機能面に着眼してほしいと思う私です。
 そんなことを考えながら、ベッドの上でゴロゴロしていたのですが、あまり長い時間ゴロゴロしていたら本格的に怒られてしまいます。
 枕にぎゅっと顔を押しつけて、それを最後に起きあがりました。
 ゴロゴロしたせいで、髪がいろんなところからピョコピョコとはねてしまいました。
 でも、問題ありません。だって、もう家から出ることはありませんから。それに、ご飯を食べればお風呂にも入ります。だから、髪を整えるのも手櫛で十分です。
 髪を整えながら、私は次に何をするのか考えます。
 本当は、いつまでもゴロゴロして怠惰を貪りたいのですが、それはできません。まあ、学生が家に帰ってやることなんて限られています。
 寝るか、ご飯を食べるか、お風呂に入るか、テレビを見るか、ゲームをするか、漫画や雑誌を読むか、ネットに潜るか、あるいは、勉強をするか。
 これぐらいの選択肢しかありません。
 私が選びたい選択肢はテレビ、ゲーム、漫画や雑誌、ネットなのですが、残念ながら自分の部屋にテレビはありませんし、ゲームは土日祝日だけと決められています。漫画や雑誌も一度見たものを読み返す気にはなれません。あとはネットなのですが、勉強机のパソコンは学校からの課題を済ませないとインターネットに繋げないように設定してあります。
 あれだけ選択肢があったのに、私に残されたものは勉強しかありませんでした。
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