オートマーズ

小森 輝

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1章 運命の出会い……?

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 仕方なく勉強することに決めた私は、ベッドから勉強机に移動しました。
 電源を入れ、勉強机のディスプレイが暗闇から起動画面に移り変わりました。その様子を確認してから、勉強の準備を始めます。
 重たい鞄を勉強机の近くまで引きずってきて、教科書を引っ張り出しました。
 すると、とても嫌なビリビリッという音がしました。
「やばっ……」
 それは間違いなく、紙が破れた音でした。
 勉強が嫌いで重たい教科書をぞんざいに扱ったことへの後悔が一気に押し寄せてきました。
「うへぇ……。何が破れちゃったの? 数学はやめてよ?」
 中でも私の苦手な科目は数学です。しかも、数学の先生は怖い先生なので、教科書を破ったりなんてしたら間違いなく死ぬほど怒鳴られるでしょう。
 お願いだから数学だけはご勘弁を……。
 そう祈りながら見てみると、破れていたのは数学の教科書ではありませんでした。それどころか、教科書でもありません。
「よかったぁ……」
 命拾いしました。
 もし教科書が破れていたら、私の体もビリビリに引き裂かれていたかもしれません。
「それにしても……何が破れたんだろう」
 破れてしまったのは、一枚のプリントでした。どうやら、私が強引に取り出そうとした教科書と一緒についてきたはいいものの、他の教科書に挟まっていて、そのまま破れてしまったみたいです。
 そんな上下で真っ二つになったプリントをくっつけて見ると、そこにはどこかの惑星が描かれています。
「あぁ、これって……」
 これは下校中に名前も知らない男子生徒が渡してきたプリントです。
「そう言えば、名前もクラスも知らないや」
 どうせなら聞いておけばよかったのですが、これから二度と会うことがないかもしれないので、必要ではない情報になっていたかもしれません。ただでさえ、勉強で脳味噌の要領はパンクしているので、無駄な情報は記憶したくありません。
 そんなことを考えながらプリントを眺めるのですが、いまいち書いてあることがよく分かりません。鞄の中でクシャクシャになり、さらに破れてしまったから読めないと言っておきましょう。英語が多すぎて読む気になれないと言う本音は隠しておきます。
 それでも、一番大きなフォントで書かれている文字ぐらいは頑張って読んでみます。
「UNMC……ウニテド、ナチオンズ、マーズ、クルブ……? クラブ? ってことは、部活? まさか、蟹じゃないだろうし……」
 何とかclubだけは読みとれたのですが、他のunitedとnationsとmarsは読めないし意味も分かりません。数学が一番の苦手科目ですが、英語が得意という訳ではないのです。勉強全般が苦手なのです。
「部活か……。そう言えば、部活に誘ってる風だったもんな。でも、何の部活かも分からないし……。まあ、今度会った時にでも聞けばいいかな」
 ここで分からない単語を調べないのが、私の学力が低い理由の一つなのでしょう。
 そんなことは分かっているのですが、誰かに聞けば分かることをわざわざ自分で調べないのが私です。
 自分の学力のことを考えていたら、ようやく、自分がやろうとしていたことを思い出しました。
「それより宿題やらなくちゃ……。土日じゃないのに宿題が出るとか……。高校生は遊べると思っていたのに……」
 友達とカラオケとか、ボーリングとか、プールとか、海とか、もっといっぱい遊べると思っていたのに、実際は勉強、勉強、勉強の毎日です。帰宅部の私ですらこんな灰色の高校生活なのに、部活動に入って放課後も献上している人たちは一体何色の高校生活を過ごしているのでしょうか。もはや白黒でさえ現せられないのではないのかと不安になります。
 そんな風に考えると、あの男子生徒から貰ったプリント、なんたらクラブというものへの興味も一気に失ってしまいました。
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