オートマーズ

小森 輝

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3章 唐突な旅立ち

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 そのまま彦君に手を引かれて歩いていき、そして、パソコン室まで来ると、躊躇なくドアを開き入っていきました。
「失礼しまーす!」
 まだ準備をしているゲーム部の部員の人たちから鋭い視線を向けられますが、彦君は構わず進みます。そして、私もその中を進みます。
 ゲーム部というだけあって、部員の人たちはみんなオタクっぽい見た目です。そんな中を男女が手を繋いで通っているのです。たぶん、リア充爆発しろなんて古くさいことを思われていることでしょう。
 そんなことを考えているうちに、パソコン室を突っ切り、奥にある扉の前へと来ました。
「火星……探査部……?」
 扉の上には、確かにそう書いてあります。漢字に自信がない私でもこれぐらいの漢字を読み間違うことはありません。書けと言われたら微妙なところですが……。
 とにかく、ここが彦君の所属している部活動の部室で間違いないでしょう。国連とかそういった文字はありませんが、火星と入っていますし、間違いないはずです。
 しかし、彦君はすぐには入りません。ドアの前に立つと、一呼吸置き、咳払いをして喉の調子も確かめています。
 パソコン室に入った時は、そんなこと全くしていなかったのに、部室にはいるのに緊張しているのでしょうか。私としては、ゲーム部の人たちから視線を突きつけられる方が緊張するような気がするのですが。
「えっと……」
「うん。よし」
 辛抱できずに「私が開けようか」と口に出そうとしましたが、それより先に彦君の心の準備が終わったようです。
 彦君が扉を開け、そして、第一声。
「こんちは!」
 運動部さながらの元気のいい挨拶でした。
「部長! 昨日言ってた見学希望の1年生を連れてきました!」
 もの凄い上下関係がしっかりした運動部系の報告をしています。もしかして、ここの部長は怖い先輩なのでしょうか。ただの見学なのに、そのまま入部する事になって、高校生活の全てを先輩の舎弟として過ごすなんてことになるのはごめんです。
 恐る恐る部屋の中を覗いたのですが、そこに居たのは、まるで周囲の空間が輝いていると錯覚するほど美人な女子生徒が座っていました。
 そう言えば、久遠たちが火星部の部長はミスコンで優勝したと言っていました。その話にも頷けます。正直、私と同じ制服を着ているとは思えません。そんな美人が着飾るのですから、それはもう文句なしで優勝するでしょう。
 そんなことを考えながら見とれていると、美女が柔らかく私に微笑みかけてくれました。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
「初めまして。私は火星探査部の部長をしている大葉夏目(おおば なつめ)です」
「あっ、わ、私は、羽金緋色(はがね ひいろ)です!」
「緋色さん。よろしくね」
「は、はい!」
 思わず、私もハキハキと体育会系のような話し方をしてしまいました。どうやら、上下関係に厳しい怖い先輩ではなく、とてつもなく美人で話すだけでも緊張してしまう先輩だったようです。
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