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4章 赤い大地
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「でも、どうせ作るなら、もっと大きいお城みたいなのを作ってくれたらよかったのに。基地にしてはちょっと狭いですよね」
「確かにそうですけど……」
大葉部長は困ったように笑いながら言葉を濁しています。
そんな部長に代わって私の質問に答えてくれたのは、もう一人の部員でした。
「あのな、ここは火星なんだぞ。物資も限られているし、環境だっていいとは言えない。そんな中で、会ったこともない未来の部員たちのためにって作ってくれてるんだぞ」
地面の中にある基地から這い出てきたのは、先ほどまで具合が悪くて休んでいた彦君でした。
「それは……分かってるけど……」
「それにな、砂嵐でも耐えれるようにってわざわざ土の中に作ってくれてるんだぞ。たった3人の部員で固い地面を掘って、他にやりたいことなんてたくさんあっただろうに……。文句言ってないで感謝しろよな」
「うん…………」
半分冗談半分本気だったので、こんなに正論を言われると、私としては返す言葉がありません。
そんな状況を見て、大葉部長が間に入ってきてくれました。
「まあ、喧嘩は帰ってからで……。それより、鷲斗君、気分はもう大丈夫ですか?」
「はい。もう大丈夫です」
その声に力強さは感じられません。もう少し休んでいたらいいのにと思いますが、大葉部長に気に入られるためには多少の無理ぐらい平気ということでしょうか。おっちょこちょいさんですが、男らしい一面もあるようです。
「分かりました。では、今回のミッションについて説明しますね」
「……ミッション!」
ただの部活ではなく国連という名前が入っているだけあって、やることも過酷なものなのでしょうか。期待で胸が膨らみます。
「何をやるんですか? 火星人を探すとか、謎の遺跡を見つけるとか、地球にはいない新生物の発見とかですか?」
彦君のため息が聞こえますが、気にはしません。私だって、バカなことを言っているという自覚はあります。それでも、ロマンを叫ばずにはいられません。
「そういうミッションもあるんですけど、今日は緋色さんも見学ということなので、遠出をする予定はありません」
「そんな……」
「当然だろ。歩き回りたかったら帰って入部届を出すんだな」
当然なのですが、新たな発見ができるかもと期待していた分、かなり残念です。
「話を逸らしてしまって、すいません。それで、今日のミッションは何ですか?」
「今日のミッションは水やりです」
「…………え?」
大葉部長は確かに「水やり」と言いました。それも両手を合わせて嬉しそうに。まるで、学校の花壇に水をあげましょうみたいなノリで。
道のない危険な冒険。未知の生物との接触。そんな過酷なことを覚悟していたのに水やりだなんて、落差で言葉も出ません。
「確かにそうですけど……」
大葉部長は困ったように笑いながら言葉を濁しています。
そんな部長に代わって私の質問に答えてくれたのは、もう一人の部員でした。
「あのな、ここは火星なんだぞ。物資も限られているし、環境だっていいとは言えない。そんな中で、会ったこともない未来の部員たちのためにって作ってくれてるんだぞ」
地面の中にある基地から這い出てきたのは、先ほどまで具合が悪くて休んでいた彦君でした。
「それは……分かってるけど……」
「それにな、砂嵐でも耐えれるようにってわざわざ土の中に作ってくれてるんだぞ。たった3人の部員で固い地面を掘って、他にやりたいことなんてたくさんあっただろうに……。文句言ってないで感謝しろよな」
「うん…………」
半分冗談半分本気だったので、こんなに正論を言われると、私としては返す言葉がありません。
そんな状況を見て、大葉部長が間に入ってきてくれました。
「まあ、喧嘩は帰ってからで……。それより、鷲斗君、気分はもう大丈夫ですか?」
「はい。もう大丈夫です」
その声に力強さは感じられません。もう少し休んでいたらいいのにと思いますが、大葉部長に気に入られるためには多少の無理ぐらい平気ということでしょうか。おっちょこちょいさんですが、男らしい一面もあるようです。
「分かりました。では、今回のミッションについて説明しますね」
「……ミッション!」
ただの部活ではなく国連という名前が入っているだけあって、やることも過酷なものなのでしょうか。期待で胸が膨らみます。
「何をやるんですか? 火星人を探すとか、謎の遺跡を見つけるとか、地球にはいない新生物の発見とかですか?」
彦君のため息が聞こえますが、気にはしません。私だって、バカなことを言っているという自覚はあります。それでも、ロマンを叫ばずにはいられません。
「そういうミッションもあるんですけど、今日は緋色さんも見学ということなので、遠出をする予定はありません」
「そんな……」
「当然だろ。歩き回りたかったら帰って入部届を出すんだな」
当然なのですが、新たな発見ができるかもと期待していた分、かなり残念です。
「話を逸らしてしまって、すいません。それで、今日のミッションは何ですか?」
「今日のミッションは水やりです」
「…………え?」
大葉部長は確かに「水やり」と言いました。それも両手を合わせて嬉しそうに。まるで、学校の花壇に水をあげましょうみたいなノリで。
道のない危険な冒険。未知の生物との接触。そんな過酷なことを覚悟していたのに水やりだなんて、落差で言葉も出ません。
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