オタサーの姫が異世界転生したら婚約破棄された悪役令嬢だったけど、男なんてチョロイもんよ! と思ってたけどなんかこの世界おかしいんですけど!?

小森 輝

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オタサーの姫、異世界転生しまぁす!

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 お城ということもあって、廊下は長いし幅も広い。学校でもこんな廊下見たことない。それに、部屋も多い。いったい、私の部屋はどこにあるんだ。
 ドレスなんて着れてラッキーって思ってたけど、動きにくいし、お腹は締め付けられて苦しいし、早く脱ぎたいのに、部屋が見つからない。
 と、そこにちょうどよく人がいた。
「ちょっと、あんた!」
 窓の掃除をしている私と同い年ぐらいの女性に声をかけた。
 おそらく、メイドだろう。ただ、日本のメイドカフェとは違い、ミニスカでもなければヒラヒラのフリルもついていないメイド服。あのおっさんの趣味だろうか。控えめに言って地味だ。地味っ子モエ~とかキモいこと考えているんだろ、きっと。
「どうかされましたか、お嬢様」
「あぁ……」
 私はこの城のお姫様だった。いけない、いけない。基本的に女は敵だが、囲いを作るまでは変な噂を流されては困る。
「私の部屋はどこだったかしら?」
「え……そこですけど」
 私の部屋はちょうど目の前だったらしい。
「そ、そう……」
 ま、まあ、今は婚約破棄で傷心していると思われているだろうから、少しの奇行ぐらいなら心を病んでいる可哀想な美女と思われるだろう。
「あぁ、そうだ。少し、着替えを手伝ってくれない?」
「お出かけですか?」
「少しね」
 お城で優雅に暮らすのも悪くない。けれど、それでは男が寄ってこない。最初は多少、アクティブに男を引っかけ、そこから人間関係を発展していくのが一番だ。
 部屋に入り、着替えを見つけようとクローゼットを開けたが、中にあるのはドレス、ドレス、そして、ドレス。
「お姫様にはドレスしか着る権利がないっていうの……」
 男というのは、高飛車なお嬢様よりも薄幸の美少女に弱い。
「町にでようと思うから、ドレスじゃないほうがいいんだけど……」
「買い物でしたら、私が」
「買い物じゃなくて、ちょっと町を歩きたいだけ」
「そうですか……」
 このメイドは使えそうにないな。自分で探すしかない。
 クローゼットにはないし……。
「あ、あるじゃない!」
 それは、ベッドの上に置かれていた。
 ドレスのように派手ではないし締め付けることもないワンピースのようなもの。少々、見窄らしいが、これはこれでいいかもしれない。
 作戦はこうだ。
 薄幸の美少女と思わせ近づかせ、実は手の届かないお姫様だった。しかも、この婚約破棄というのは使える。そんな過去を抱えていれば、男は自分が支えにならなくてはなんて考える。そして、彼氏がいないという事実をワンチャン自分が彼氏に、なんて考える。そして、他と競わせれば、もう貢ぎ物の押収。男なんて、みんなチョロいのよ。
「お嬢様……それは、寝衣ですよ……」
「そう、よね……」
 寝衣……パジャマということか。流石にパジャマを着てうろつくわけにはいかない。
「お嬢様、これはどうでしょうか?」
 メイドが見せたのは、白いスカートに上半身が濃い赤のこれもドレスのようなもの。
「あんまり、身分をあかしたくないんだけど」
「それなら、これを羽織るのはどうでしょうか?」
 白いカッターシャツのようなものに赤いベストのようなもの。
 確かに、これをあわせれば、ハイジの民族衣装みたいになる。このメイド、思ったよりやるじゃん。
「じゃあ、それにするわ。着替え、手伝ってちょうだい」
「分かりました」
 メイドがいてよかった。こんなドレス、脱ぎ方が分かっても一人じゃ脱げなかった。
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