悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 23

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 魔石から映し出されたのは、手乗りサイズで人形のような少女の映像だった。
 まるで白雪姫やシンデレラのような、いかにもお嬢様という感じで、私と同い年のこの少女がグリゼーラ国の女王で私の親友であるアルシュだ。
「ハァーイ! ヤヨイ、聞こえてる?」
 映像のアルシュは両手で大きく手を振り、お嬢様の見た目とはかけ離れた陽気なテンションで話し始めた。
「まさかとは思うけど、私のこと忘れてないでしょうね?」
 悪戯っぽく上目遣いで聞いてくるのだが、これは通話しているのではなく、あらかじめ撮られた映像。いくら質問したとしても返事が帰ってくるはずもない。
 それでも、映像のアルシュは数秒待ち、そして話し出した。
「正解! 私はアルシュ・グリゼーラ。ヤヨイの親友よ!」
 返答してくることを考えて数秒待ってから話し出したのだろう。実際は、私が返答することはなかったし、むしろ、白い目で映像のアルシュを見ていた。
 まあ、こういうお茶目なところもかわいいと思うのだが、慣れてしまうと何とも言えない恥ずかしい気持ちになってしまう。
「え? 親友じゃなくて大親友だって? もう! ヤヨイったら。私だって大大大親友だって思ってるわよ」
 なんだろう。この恋人同士がやるような「私の方が大好きなんだから」「じゃあ俺は大大大好きだ」みたいなやり取り。しかも、私は何も答えてないのにこんな恥ずかしい話へと進んで行くし……。
「あぁ、それより、話なんだけどね」
「はぁ……やっと本題に入ってくれた。魔石の無駄遣いとはこのことね」
 魔石は高価というほどではないが、無駄に使えるほど安くはない。この魔石だって、日本の手紙と比べたら圧倒的に価値が高い。そんなものをこんな風に無駄遣いできるのは貴族の特権だろう。
「あっ、話っていっても私の話じゃなくてね。弟のことなんだけど……」
 アルシュには弟がいる。それも一人息子。今はアルシュが国を治めているが、成人したら国王となる器の持ち主がアルシュの弟だ。日本にいたころの私なら、次期国王なんて恵まれた人生で勝ち組じゃないかなんて思っていただろうが、今は違う。私は魔王を倒してやっと女王になった。つまり、それと同様の苦難を幼少期から強いられているのだ。悩みも多いだろう。
「父と母が……あ、あれ、ちょっと待って! まだ話が」
 慌てふためくアルシュの姿を最後に、映像は消えてしまった。
「な、何だったんでしょうか……」
 一緒に見ていたセバスも口を開けて呆けていた。
 まさか、魔石の録画時間内に話が終わらず映像が消えてしまうとは思わなかった。というか、映像のほとんどが挨拶で終わっている。これでは何が言いたかったのか全く分からない。
「仕方ない。これを届けてくれた使者はまだ居るんでしょ?」
「はい。客間の方でお待ちしていただいております」
「じゃあ、そっちに話を聞きましょうか」
 親友といえど、これでは何が言いたかったのか全く分からない。でも、幸い、これを持ってきた使者がいる。彼らから話を聞けば何か分かるだろう。
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