エロ同人みたいな能力で、渋々、異世界救います

小森 輝

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「な、なにが起こったんだ……」
 エルビーとエドムは、攻撃してもないのに敵が倒れて、何が起こっているのか分からないといった様子だ。
「た、大変! ジンがいない!」
 カナとコウランは、後方から全体を見やすい場所にいたので、俺が消えたことに気づき軽いパニックを起こしていた。このダンジョンは、俺一人だと危険らしいので、おそらく、驚きよりも不安の方が勝っているのだろう。
 あまり長い時間、心配させていては問題になってしまうので、透明化を解いて姿を現すことにした。
 俺が透明化を解きたいと思うだけで、俺の体はインクを流し込まれたように色を取り戻した。
「うおっ! いつの間に……」
 俺の目の前にエルビーがいるように、エルビーの目の前に俺が突然現れたのだろう。驚くのも無理はない。もう少し気を使った方がよかったかもしれない。
「よかった。はぐれたり連れ去られたりしたんじゃないかと心配したんだよ!」
「あっ……その……ごめん……」
 そりゃあ、一人では危険なダンジョンの中で突然姿を消したのだから怒るのも当然だ。
「そ、それより、今、何をしたんだ?」
 同じパーティーなのだから説明は必要だろう。もちろん、元は男だったことや異世界転生、エロ同人の能力までは言わないが。
「姿を消すことができるんだ。だから、それで敵の背後をとって攻撃したんだ」
「そ、そうか……」
 驚きのあまり、エルビーは俺の能力を理解できていないようだ。しかし、能力は理解できていなくても、カナは俺の失敗を理解できているようだ。
「そう言う能力があるなら、あらかじめ言っておいてよ……。知らずに誤射しちゃうかもしれないんだから」
 咄嗟に思いついた透明化という能力だとしても、事前に説明しておくべきだった。
「でも、こんな能力があるなら、私たちの戦力としては申し分ないわね。エルビーが敵意をちゃんと取っていれば、ジンが隠れていてもばれない訳だし。エドムの攻撃範囲なんて剣の長さまでなんだし、問題は、私か。うっかりジンを巻き込んじゃったじゃ済まないわけだし……」
 他の3人は俺が透明になっていても問題ないので、これは俺とカナの問題になってくる。俺が攻撃するためにカナが手を抜いていては本末転倒だ。だから、ちゃんとコミュニケーションを取りながら戦闘を行わなければならない。若干、コミュ障なところもあるが、それでも俺はサラリーマンとして今まで食ってきた。仕事と思えば多少のコミュニケーションだってとれるはずだ。
「とりあえず、反復練習だな。数をこなして、体に覚えさせるところから始めないとな。つまり、今日はガンガン戦闘してガンガン経験値を貯める日って訳だ。よーし! ガンガン敵を集めるぞ!」
 俺とカナの問題なのに、なぜかエルビーが張り切っていた。
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