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私の中にいるヒーロー
ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか? 22
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「えっ!? ちょっと、どうしたの!?」
突然、部屋の明かりという明かりが、全て消えてしまった。もちろん、パソコンの電源も落ちている。
「ブレーカー、落ちちゃったのかな……。いつもと変わらないのに……。雷でも落ちたのかな……」
ブレーカーが落ちたことは災難だったが、ボスモンスターを倒している時じゃなくてよかった。でも、あの「YES」をクリックした先の出来事が分からなかったのは、少し残念だ。まあ、これ以上、ゲームをするなという神のお告げかなにかだろうと思って、今日は諦めるべきなのだろう。
ゲームのことは、明日の楽しみに取っておくとして、まずはブレーカーをどうにかしないといけない。
とりあえず、薄暗い部屋の中では、玄関にあるブレーカーまでたどり着けないだろうから、明かりになるものを探そう。
「確か、この辺りにタブレットがあったような……」
手探りで探そうとしたが、すぐにタブレットを見つけた。
でも、薄暗い部屋の中で見つけたわけではない。タブレットは、光に当たり、色を放っていた。周りを見れば、部屋の中すべてが光に満ちていた。
「ど、どういうこと」
部屋の照明による発光ではない。まるで日光のような強い光。けれど、日光とは違い、光は上からではなく下から来ていた。
その発光の強さで、目が見えなくなってしまうんじゃないかと不安になるが、それでも、自分の家の異常を確認せずにはいられない。
眩しさに目を細めながら耐え、光に慣れてくると、何が光っているのか分かった。
「な、なにこれ」
円形の枠と、それに沿って書かれた文字のような謎の模様。
それは、まるで、ファンタジー世界に出てくる魔法陣のようだった。
「い、いやいや、流石に……」
誰かが私にドッキリを仕掛けているような状況だが、この家には私一人しかいない。
この魔法陣は、間違いなく、超常現象だった。
何かが起こっていることは分かるのだが、この魔法陣が何の魔法陣か分からない以上、何が起こっているのか分からない。
でも、もしこれがアニメやマンガなら、異世界へと転送する魔法陣に違いない。
この上に立てば、魔法やモンスターが存在するファンタジーの世界にいけるかもしれない。
「いやいや、アニメの見すぎかよ。そんなこと、あり得ない……」
あり得ないのだが、今のこの状況が、すでにあり得ない。
危険を承知で魔法陣に飛び込むべきか、それとも、このまま消えるのを待つべきか。
どちらも決められずに動けないでいると、痺れを切らせたように、魔法陣の光がさらに増した。
「うわっ……眩しい……」
あまりの眩しさに後ろへ下がろうとしたら、何かに躓いて尻餅をついてしまった。
「痛っ……。もう、なんなのよ!」
訳が分からず、手元にあったものを魔法陣に向けて投げつけた。
「痛っ……。なんだ?」
それは私の声ではなく、男性の声だった。
「え……誰?」
恐怖心が増すのと同時に、光は消え、魔法陣は消え去った。
後に残ったのは、魔法陣の上に立つ朧気な人影だけ。
「ん? あぁ、そこにいたのか。座っているから分からなかったよ」
そういいながら、男が近づいてきた。
それに、全く対応できていない。
私の頭では、宇宙人だとか悪魔だとか、いろいろなあり得ない可能性が巡っていた。
そして、一つのあり得る可能性が頭をよぎった。
一年前の事件。
男が女に性的暴行を加えた事件。
でも、私には護身術がある。あるのだが、恐怖に縛られた体は動いてくれない。
男の手が、私に近づいてくる。
私は、このまま……。
「怖がらなくてもいい。俺が来たんだから」
その言葉で不思議と、恐怖はなくなっていった。
恐怖心が消えた心で見ると、迫ってきた男の手は、私を捕らえるためではなく差し伸べられたものだった。
「俺はコルテ。君のヒーローだ」
それは、私が誰かに言ってほしかった憧れの言葉だった。
突然、部屋の明かりという明かりが、全て消えてしまった。もちろん、パソコンの電源も落ちている。
「ブレーカー、落ちちゃったのかな……。いつもと変わらないのに……。雷でも落ちたのかな……」
ブレーカーが落ちたことは災難だったが、ボスモンスターを倒している時じゃなくてよかった。でも、あの「YES」をクリックした先の出来事が分からなかったのは、少し残念だ。まあ、これ以上、ゲームをするなという神のお告げかなにかだろうと思って、今日は諦めるべきなのだろう。
ゲームのことは、明日の楽しみに取っておくとして、まずはブレーカーをどうにかしないといけない。
とりあえず、薄暗い部屋の中では、玄関にあるブレーカーまでたどり着けないだろうから、明かりになるものを探そう。
「確か、この辺りにタブレットがあったような……」
手探りで探そうとしたが、すぐにタブレットを見つけた。
でも、薄暗い部屋の中で見つけたわけではない。タブレットは、光に当たり、色を放っていた。周りを見れば、部屋の中すべてが光に満ちていた。
「ど、どういうこと」
部屋の照明による発光ではない。まるで日光のような強い光。けれど、日光とは違い、光は上からではなく下から来ていた。
その発光の強さで、目が見えなくなってしまうんじゃないかと不安になるが、それでも、自分の家の異常を確認せずにはいられない。
眩しさに目を細めながら耐え、光に慣れてくると、何が光っているのか分かった。
「な、なにこれ」
円形の枠と、それに沿って書かれた文字のような謎の模様。
それは、まるで、ファンタジー世界に出てくる魔法陣のようだった。
「い、いやいや、流石に……」
誰かが私にドッキリを仕掛けているような状況だが、この家には私一人しかいない。
この魔法陣は、間違いなく、超常現象だった。
何かが起こっていることは分かるのだが、この魔法陣が何の魔法陣か分からない以上、何が起こっているのか分からない。
でも、もしこれがアニメやマンガなら、異世界へと転送する魔法陣に違いない。
この上に立てば、魔法やモンスターが存在するファンタジーの世界にいけるかもしれない。
「いやいや、アニメの見すぎかよ。そんなこと、あり得ない……」
あり得ないのだが、今のこの状況が、すでにあり得ない。
危険を承知で魔法陣に飛び込むべきか、それとも、このまま消えるのを待つべきか。
どちらも決められずに動けないでいると、痺れを切らせたように、魔法陣の光がさらに増した。
「うわっ……眩しい……」
あまりの眩しさに後ろへ下がろうとしたら、何かに躓いて尻餅をついてしまった。
「痛っ……。もう、なんなのよ!」
訳が分からず、手元にあったものを魔法陣に向けて投げつけた。
「痛っ……。なんだ?」
それは私の声ではなく、男性の声だった。
「え……誰?」
恐怖心が増すのと同時に、光は消え、魔法陣は消え去った。
後に残ったのは、魔法陣の上に立つ朧気な人影だけ。
「ん? あぁ、そこにいたのか。座っているから分からなかったよ」
そういいながら、男が近づいてきた。
それに、全く対応できていない。
私の頭では、宇宙人だとか悪魔だとか、いろいろなあり得ない可能性が巡っていた。
そして、一つのあり得る可能性が頭をよぎった。
一年前の事件。
男が女に性的暴行を加えた事件。
でも、私には護身術がある。あるのだが、恐怖に縛られた体は動いてくれない。
男の手が、私に近づいてくる。
私は、このまま……。
「怖がらなくてもいい。俺が来たんだから」
その言葉で不思議と、恐怖はなくなっていった。
恐怖心が消えた心で見ると、迫ってきた男の手は、私を捕らえるためではなく差し伸べられたものだった。
「俺はコルテ。君のヒーローだ」
それは、私が誰かに言ってほしかった憧れの言葉だった。
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