誰よりもVIVIDに

小森 輝

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誰よりもVIVIDに 3

 それは、私の隣の席。
 そこには、まさにバラの花が似合いそうな美男子が座っている。
 校内一……かどうかは分からないけど、クラス内で一番のイケメンだということは間違いない。
 そんなイケメン男子生徒と隣の席だというだけでも、この学校にいる女子生徒の中では運がいいのかもしれない。けれど、私の幸運はそれだけで終わらなかった。
 クラスの女子生徒が羨むような出来事が、数学の授業でよく起きる。
「……しまった」
 隣の席にいる私じゃないと聞き逃してしまうような小さな呟きの後、突然、立ち上がった。
 授業中ということもあって、一気に注目の的になる。もちろん、私も。
 でも、驚くようなことはない。見慣れた光景だ。だから、次に彼が叫ぶ言葉を誰もが分かった。
「すみません! 教科書間違えてしまいました!」
 私の隣では、イケメンが深々と頭を下げていた。
「また一色か……。仕方ない。隣の人に見せてもらいなさい」
 隣の席。右隣は廊下。彼の隣は私しかいない。つまり……。
「ごめんね。教科書、一緒に見せてくれない?」
「も、もちろん、です」
 同じクラスの同級生だというのに「です」なんて敬語を使ってしまった。もう何度も同じ経験をしているというのに、未だに緊張している。
「本当に、何度も何度も、ごめんね、藤井さん」
 教科書を共有するために机も引っ付けると、一色君と肩が触れそうな距離まで近づいた。
 たぶん、クラスの女子からはすごい目を向けられているだろうが、緊張でそんなことを気にしている余裕はない。
 イケメンな上に、うっかりしたところもある。緑色の数学1とオレンジ色の数学Aを間違えるなんて、かなりうっかり屋さんなのだろう。
 でも、見所はそれだけじゃない。
 隣の机を見れば、ノートは綺麗な字で書かれている。それも内容は今日の授業のもの。彼はちゃんと予習して授業を受けている。それを裏付けるように、成績もいい。その成績の良さは入学式で新入生代表を勤めたほどだ。
 顔もよくて勉強もできる。まさに、才色兼備(女性ではない)なのだが、彼には致命的な欠点がある。
「ごめん、藤井さん。あそこ、2番の問題、Xの前にある数字、教えてくれない?」
「えっと……5みたい」
「5か……。ごめんね、いつもいつも聞いちゃって」
「い、いや、これぐらい別に……。いつでも聞いてくれていいから」
 こうやって黒板に書かれている文字を聞かれるのは、机を引っ付けているときだけじゃない。小さな文字を書かれたときや画数が多い漢字を書かれたときはいつも聞いてくる。
 視力が悪いのだろうが、おそらく、それだけではない。
 彼は教室の中だというのにサングラスをかけている。
 それがおしゃれではないことぐらい、誰でも分かる。
 彼はただ視力が悪いだけでないのだろう。
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