誰よりもVIVIDに

小森 輝

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誰よりもVIVIDに 4

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 彼には障害か、もしくは傷害が目にあるのだろう。それを隠すためのサングラス。
 クラスのみんなも察している。そして、私も。
 でも、詳しい理由は誰も知らない。だって、そんなことを聞くのは野暮というものだから。
 そういう理由もあってか、彼にはまだ仲のいいクラスメイトはいない。
 できることなら、私が初めての友達になりたい。
 そのためにも、緊張をなんとかして話ぐらいしなければ。いつ席替えの日が来て、このチャンスがなくなるか分からない。いつまでも、隣の席にいられるわけではない。
 今日こそは、何か話題を見つけなければ……。
 ただ、何日も見つからなかった話題がそう簡単に見つかることもなく……。
(いつか席替えが来て、こんなチャンスもなくなっちゃうっていうのに……)
 頭を抱える私とは裏腹に、隣の一色君は授業中だというのに鼻歌を歌っていて上機嫌だ。
「……よし、できた」
 満足げな一色君のノートには、予習や板書はもちろん、文字すら書かれていない。代わりに、鉛筆のみで空の絵が描かれていた。
 いつも授業中に何かを描いていると思っていたが、まさかこんなものを描いていたとは思わなかった。
「……すごい」
 白と黒しかないはずなのに、とても鮮やかだ。授業中の落書きなんてレベルではない。
「……VIVID」
 そう呟きながら、絵の右下に「VIVID」と書いている。自分のサインだろうか。でも……。
「VIVID?」
 英語だろうか。でも、どんな意味が……。
 今は数学の時間で、手元に英和辞典はない。まあ、手元にあったところで調べる時間はなかっただろう。
「これはちょっとした落書きだよ」
 私が見ていることに気づいて、苦笑いをしながら絵が描いてあるノートを閉じてしまった。
「あぁ……」
 「VIVID」という文字に気を取られて、まだあの絵を全体像でしか見ていない。もっと絵の端々まで見て、細かな技術を感じ取っておきたかった。
「下手な絵を見せて、ごめんね。でも、先生には……」
「下手なんかじゃないよ」
 あんな絵を下手だなんて言ったら、私が描くものは絵なんて呼べない。
「下手だよ。僕の絵は……。みんなみたいに鮮やかじゃない」
「そんなこと……」
 「ない」と、今はまだ言えない。私は、彼の絵を少ししか見ていないから。あんな絵をただの直感で感想をいっては失礼になってしまう。
「いいんだ。分かってくれる人はそんなにいないから……」
 笑っているれけど、無理しているのは分かる。でも、一色君だって分かっていない。
「分からないに決まってるじゃない……。少ししか見ていないのに分かるわけ……」
 返答が来るより先に、授業が終わるチャイムのほうが聞こえた。
「教科書、見せてくれてありがとう」
「あっ……うん……」
 思わず、否定的なことを言ってしまった。
 今日の授業がすべて終わったこともあり、一色君は帰り支度をしている。
「その……」
 友達になるどころか、嫌われてしまったかもしれない。
「……僕の絵が見たいなら、放課後に見に来てもいいから」
 それだけ言って、一色君は行ってしまった。
「えっ……ちょ……」
 私は引き留めることもできず、教室に残されてしまった。
「……私も」
 一色君の後を追うために、急いで帰り支度を始めた。
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