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このたび、大学院を修了し国家試験にも合格した私、山本知紗希(やまもと ちさき)は、この春から1年間、現場にでて実習を積んでいくことが決まりました。
そして、私が実習を積むことになった場所が、ここ、アイリス未来探偵事務所です。
「ここか……」
駅からそれほど離れてはいないし、大通りに面していて、大きな文字で「アイリス未来探偵事務所」と書いてある。流石は大手と言ったところか。宣伝というか主張が激しい。車で通っても視界に入るだろう。
そんな大手の事務所が実習の場ということもあって、私は今、極度の緊張と不安に包まれている。
もし、ミスをしてしまったら。もし、事務所の人たちと馴染めなかったら。もし、いじめられて実習すらさせてくれなかったら。
「いや、大丈夫よ。私だって、大学で勉強して試験にだって合格したんだから。むしろ、このマイナス思考の方がよくない。気持ちを切り替えなくちゃ」
そう簡単に気持ちを切り替えられる訳ではないけれど、両手で頬を叩き、痛みで緊張と不安を紛らわせた。
「……よし、行くぞ」
大学でレベルアップし、試験で最強魔法を習得して、今から最後のダンジョンへと向かう気分なので、白くて清潔感のある事務所も、私には魔王城のように見えてしまう。
そんな心境の中、私は事務所の扉を開けた。
最初に出迎えてくれたフロアは、広いエントランス。白いタイルにふかふかしてそうなソファー。大きめの観葉植物もあって、かなりお洒落な内装だ。
「あの……すいません。受付は10時からなんですけど……」
あまりの高級感に圧倒されていて、すぐ隣に人がいることにも気づかなかった。
「そ、その! 私は! 今日から実習にきました! よ、よろしくお願いします!」
混乱してしまって何を言っているのかも分からないけれど、とりあえず、頭を下げて誠意だけは見せておいた。
「あぁ、実習の方! そう言えば、今日からでしたね」
この空間に負けないほどの美人だ。才色兼備とはまさに彼女のことを言うのだろう。この人もあの試験を乗り越えた人だというのなら、もはや嫉妬心すら沸き上がらない。
「私は受付の遠藤です。これからよろしくお願いしますね」
「は、はい! よろしくお願いします!」
受付と言うことは、あの試験を受けてないのだろう。そのことに少し安堵はするのだが、緊張が消えてしまうことはない。
「まだ仕事が始まった訳じゃないんですから、そんなに緊張しないで。とりあえず、社長に挨拶してきた方がいいんじゃないですか?」
「分かりました! しゃ、社長に挨拶、ですね!」
「リラックス、リラックス。社長室はそこの階段を上がってすぐ右ですから」
そんなアドバイスも耳には入らず、私はエントランスを抜け階段を上がった。
そして、私が実習を積むことになった場所が、ここ、アイリス未来探偵事務所です。
「ここか……」
駅からそれほど離れてはいないし、大通りに面していて、大きな文字で「アイリス未来探偵事務所」と書いてある。流石は大手と言ったところか。宣伝というか主張が激しい。車で通っても視界に入るだろう。
そんな大手の事務所が実習の場ということもあって、私は今、極度の緊張と不安に包まれている。
もし、ミスをしてしまったら。もし、事務所の人たちと馴染めなかったら。もし、いじめられて実習すらさせてくれなかったら。
「いや、大丈夫よ。私だって、大学で勉強して試験にだって合格したんだから。むしろ、このマイナス思考の方がよくない。気持ちを切り替えなくちゃ」
そう簡単に気持ちを切り替えられる訳ではないけれど、両手で頬を叩き、痛みで緊張と不安を紛らわせた。
「……よし、行くぞ」
大学でレベルアップし、試験で最強魔法を習得して、今から最後のダンジョンへと向かう気分なので、白くて清潔感のある事務所も、私には魔王城のように見えてしまう。
そんな心境の中、私は事務所の扉を開けた。
最初に出迎えてくれたフロアは、広いエントランス。白いタイルにふかふかしてそうなソファー。大きめの観葉植物もあって、かなりお洒落な内装だ。
「あの……すいません。受付は10時からなんですけど……」
あまりの高級感に圧倒されていて、すぐ隣に人がいることにも気づかなかった。
「そ、その! 私は! 今日から実習にきました! よ、よろしくお願いします!」
混乱してしまって何を言っているのかも分からないけれど、とりあえず、頭を下げて誠意だけは見せておいた。
「あぁ、実習の方! そう言えば、今日からでしたね」
この空間に負けないほどの美人だ。才色兼備とはまさに彼女のことを言うのだろう。この人もあの試験を乗り越えた人だというのなら、もはや嫉妬心すら沸き上がらない。
「私は受付の遠藤です。これからよろしくお願いしますね」
「は、はい! よろしくお願いします!」
受付と言うことは、あの試験を受けてないのだろう。そのことに少し安堵はするのだが、緊張が消えてしまうことはない。
「まだ仕事が始まった訳じゃないんですから、そんなに緊張しないで。とりあえず、社長に挨拶してきた方がいいんじゃないですか?」
「分かりました! しゃ、社長に挨拶、ですね!」
「リラックス、リラックス。社長室はそこの階段を上がってすぐ右ですから」
そんなアドバイスも耳には入らず、私はエントランスを抜け階段を上がった。
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