まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 16

 予想とは裏腹に、宿ではぐっすりと眠れた。それはもう熟睡という奴だ。生まれてこの方、ここまで気持ちよく寝れたことはない。魔力を補充してもいないのに、体の疲労感はすっかり消えてしまっていた。
「清々しい朝だ。この上ない狩り日和だな!」
 体の疲労感もない。快眠で脳もすっきりしている。それを祝福するように天気も心地よい。最高の環境だ。だというのに……。
「ちょ、ちょっと待って……」
 小娘……ミラは俺と違って、とても疲れている様子だ。
「おいおい、一応、俺の姉という設定なのだろ? そんな体たらくでは俺の姉は名乗らせるわけにはいかないぞ」
「朝は弱いの……」
「それだけなら問題ないんだがな……」
 どうやら、俺が眠ってからも接触を試みていたらしい。心なしか憑依影装がうんざりしている。
「とりあえず、お風呂に行って……そうよ! お風呂よ!」
 急に元気がよくなった。また面倒な予感しかしない。
「お風呂に行きましょう! そして、一緒にお風呂に入りましょう!」
「入る訳ないだろ。馬鹿者」
「大丈夫。アペ君は魔王で精神は大人だけど、見た目は子供だから女湯に入っても問題ないから」
「入らないと言っているだろ」
「でも、その子供の体で男湯に一人で行くのは心配されると思うよ? あっ! それとも、もしかして、恥ずかしいの? 体は子供だけど精神は大人だもんね。私、結構いいスタイルしているもんね」
「何がいいスタイルだ。贅肉を乳にため込んでいるだけだろ」
「えっ……。もしかして、アぺ君、貧乳好きなの……」
「くだらんことを言っていないで、さっさと風呂に入ってシャキっとしてこい」
 憑依影装がミラの額をペシッと弾くと、その衝撃で転がるように銭湯へと入っていった。
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