まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 24

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 群の主の突進と俺の剣がぶつかり合う。火花が弾け飛びそうなほどの衝撃。剣が押し返されそうになる。だが、俺も負けられない。そう思うと、力が漲ってくるような気がする。
 全身の力を剣に集中させる。それは、まるで極大魔法の時のように。
「負けるかぁ!」
 体中の力が剣へと吸い込まれていくような感覚。それと同時に、突然、剣が軽くなった。
「なにっ……」
 全体重を乗せていたので、振り下ろした剣と同じように、自分の体も顔から地面へと衝突した。
「い……痛い……」
 足の小指を角でぶつけたような唐突な痛み。この体になって初めて感じた痛覚。
「うぅ……鼻が……」
 顔面から地面にぶつかったせいで、鼻が強烈に痛い。ここまで屈辱的な痛みは、生まれてこの方受けたことがない。
 幸い、無様に鼻血を垂れ流すようなことはなかったのだが、そんなのは問題ではない。今は群の主との戦闘中だ。慌てて立ち上がり、剣を構えるのだが、そこに群の主はいない。
 俺の攻撃は直撃していたが、それをうまいこといなされ、憑依影装に弾かれたのだろう。
 そう思い、奴の姿を探すと、大きな大木の下に寝転がっていた。
「どういうことだ……」
 憑依影装は防御専用の防具。攻撃を弾くことはあるが、それ自体に攻撃力はない。そのはずなのだが、群の主が吹き飛んでぶつかった木には血が付着している。それに、倒れている主も血を流して起きあがる様子はない。憑依影装に攻撃力も攻撃を反射する能力も備わっていない。どうしてこんなことが……。
 そう悩んでいると、周りを囲んでいたイノシシ型の魔物たちは一斉に散り散りになりながら逃げていった。
 何が起こったのか分からずにいると、剣が未だに赤みを帯びていることに気がついた。その赤みはスキルの影響ではなく、魔物の血。
「まさか……」
 俺があの一撃で魔物を倒していた……?
「やったよ! アペ君! 倒したんだよ!」
 そう騒ぎながら後ろから俺に抱きつこうとしたミラを憑依影装が弾いた。もちろん、ミラは弾かれただけ。やはり、憑依影装の力ではない。この剣で俺はあの魔物を倒したということだ。
「本当に……?」
「本当だよ! ズバッて! ズバッて感じでさ!」
 絶望の淵から救い上げられたミラはとても興奮している。だが、俺は同じ気持ちにはなれない。なぜ、取り巻きの魔物にはダメージを与えられなかったのに、群の主は一撃で倒すことができたのか。都合よく、剣の熟練度があがったのだろうか。それとも、この勇者の体には逆境を跳ね返す何かしらの能力が備わっているのだろうか。
 疑問は晴れないままだ。






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