29 / 56
6 アペルピシアという魔王
まさか魔王が異世界で 29
しおりを挟む
いつもと変わらない様子で、あの大量の料理を体のどこかに納め宿のベッドで寝たところで、その日の俺の記憶は途絶えてしまった。
次に意識を取り戻した原因は、宿にいても聞こえる外の騒ぎだった。
「何だ? こんな朝っぱらから……」
騒音で起こされるなんて、とても不機嫌な寝覚めだ。しかも、それが人間の声だと思うと余計に腹が立つ。
「何だってこんなに騒いでいるんだ」
窓から外を眺めると、忙しなく人間が行き来している。朝の喧噪と言ってしまえばそれまでなのだが、昨日と比べると騒がしいし人も多い。
「何か祭りの準備でもしているのか?」
不覚にも、昨日ミラが言っていたことと同じ言葉を呟いていた。
「人間の体になることで精神でも汚染されているのか」
それもミラに汚染されているというのは、かなりの屈辱だ。
「よりによって、こんな人間に似るとはな……」
ミラはまだベッドの上で寝ている。
「いや、それはないな」
こんな騒がしいのに熟睡していて、さらにあれだけの暴食なんて、俺とは全く似ていない。心配するような問題でもなさそうだ。
そんなことよりも、この騒ぎの原因を突き止めなければ。
そのためには、まずこの大口を開けて寝ている小娘を起こすところから始めなければならない。
「おい、いつまで寝ているんだ。さっさと起きろ」
「…………zzZ」
問いかけてもイビキしか帰ってこない。
昨日は自然と起きていたのだが、疲れていたのか、今日は全く起きる気配がない。
仕方がない。ならば、次の手段だ。
「いい加減に起きろ!」
そんな怒号と共にカーテンを開けた。気持ちのいい朝日がミラの顔を直撃した。
「ん…………」
この攻撃には流石に起きるだろうと思っていたのだが、寝返りを打つだけで終わってしまった。
魔王を召還するほどの図々しさは健在のようだ。
「いっそ片腕を切り落とすか」
流石の魔王も人を起こすために片腕を切り落とすほど残酷ではない。
「いつまでも毛布にくるまっていないで、さっさと起きるんだ!」
思いっきり毛布を引っ張ると、一緒にミラまで付いてきた。
流石は魔王を召還するだけのずる賢さを持つ小娘。ベッドから落とされても眠り続け、何があっても毛布を放さないほどの執念深さ。
これには、魔王の俺も完敗だ。
「暴食だけではなく怠惰まで貪る気か」
この様子なら、七つの大罪を全てコンプリートしているのではないのだろうか。
「まあ、いい。そのうち起きるだろう」
「え? 起きるって?」
俺が諦めた瞬間に起きやがった。
「今日は早いんだね……」
「お前が遅いんだ」
「……? 昨日と同じ時間に起きたんだけどな……」
俺には体内時計もなければ、魔力で時間を計ることもできないので今の時間は分からないが、ミラは魔力で時間でも計っていたのだろうか。
いや、今、それはどうでもいい。
「それより、外の様子を見に行くぞ! 早く準備しろ!」
体内時計なんて今はどうでもいい。それよりも外の騒ぎの方が気になる。
次に意識を取り戻した原因は、宿にいても聞こえる外の騒ぎだった。
「何だ? こんな朝っぱらから……」
騒音で起こされるなんて、とても不機嫌な寝覚めだ。しかも、それが人間の声だと思うと余計に腹が立つ。
「何だってこんなに騒いでいるんだ」
窓から外を眺めると、忙しなく人間が行き来している。朝の喧噪と言ってしまえばそれまでなのだが、昨日と比べると騒がしいし人も多い。
「何か祭りの準備でもしているのか?」
不覚にも、昨日ミラが言っていたことと同じ言葉を呟いていた。
「人間の体になることで精神でも汚染されているのか」
それもミラに汚染されているというのは、かなりの屈辱だ。
「よりによって、こんな人間に似るとはな……」
ミラはまだベッドの上で寝ている。
「いや、それはないな」
こんな騒がしいのに熟睡していて、さらにあれだけの暴食なんて、俺とは全く似ていない。心配するような問題でもなさそうだ。
そんなことよりも、この騒ぎの原因を突き止めなければ。
そのためには、まずこの大口を開けて寝ている小娘を起こすところから始めなければならない。
「おい、いつまで寝ているんだ。さっさと起きろ」
「…………zzZ」
問いかけてもイビキしか帰ってこない。
昨日は自然と起きていたのだが、疲れていたのか、今日は全く起きる気配がない。
仕方がない。ならば、次の手段だ。
「いい加減に起きろ!」
そんな怒号と共にカーテンを開けた。気持ちのいい朝日がミラの顔を直撃した。
「ん…………」
この攻撃には流石に起きるだろうと思っていたのだが、寝返りを打つだけで終わってしまった。
魔王を召還するほどの図々しさは健在のようだ。
「いっそ片腕を切り落とすか」
流石の魔王も人を起こすために片腕を切り落とすほど残酷ではない。
「いつまでも毛布にくるまっていないで、さっさと起きるんだ!」
思いっきり毛布を引っ張ると、一緒にミラまで付いてきた。
流石は魔王を召還するだけのずる賢さを持つ小娘。ベッドから落とされても眠り続け、何があっても毛布を放さないほどの執念深さ。
これには、魔王の俺も完敗だ。
「暴食だけではなく怠惰まで貪る気か」
この様子なら、七つの大罪を全てコンプリートしているのではないのだろうか。
「まあ、いい。そのうち起きるだろう」
「え? 起きるって?」
俺が諦めた瞬間に起きやがった。
「今日は早いんだね……」
「お前が遅いんだ」
「……? 昨日と同じ時間に起きたんだけどな……」
俺には体内時計もなければ、魔力で時間を計ることもできないので今の時間は分からないが、ミラは魔力で時間でも計っていたのだろうか。
いや、今、それはどうでもいい。
「それより、外の様子を見に行くぞ! 早く準備しろ!」
体内時計なんて今はどうでもいい。それよりも外の騒ぎの方が気になる。
0
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる