まさか魔王が異世界で

小森 輝

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7 勇者の帰還

まさか魔王が異世界で 56

「もしや、ミラ様、記憶を……おのれ悪魔め!」
 ミラが記憶を失っている、もしくは記憶を書き換えられていると勝手に勘違いしているようだ。
「おい! そこの悪魔! 早くミラ様から離れろ!」
 俺としては別にこの暴食の悪魔がいなくなっても町の信頼を勝ち取っている今なら別に構わないのだが。
 ミラはそう思ってはいないようだ。
「あ、悪魔なんかじゃないよ? ほら、どことなくフレットにも似てるでしょ? 魔族との戦いで子供の体になる呪いを受けてしまったの」
「確かに。そう言われてみれば、そんな面影も……」
 ここで一言、気の利いた台詞でも言えたらよかったのだが、この体の記憶を保有している訳ではないので下手な言葉は疑問を生むかもしれない。
 しかし、黙っていると、それはそれで怪しいらしい。
「いや、騙されてはいけません! この町は悪魔に掌握されているのだから!」
 その理由に心当たりはある。
「昨日の魔族の襲撃か?」
「そうだ! この町でとてつもない魔力を感知したからな」
「でも、大丈夫。伯爵とか言ってたけど、その魔族は倒したから」
「伯爵だと?」
 ミラの言葉に男は眉を潜めた。これはミラの失言だったようだ。
「あれは伯爵なんて魔力量じゃなかった。侯爵、いや、王、魔王クラスの魔力だった。あんなのこの町どころか教会でも太刀打ちできるかどうか……」
 どうやら、感知した魔力というのは襲撃してきた魔族の魔力ではなく、俺の魔力だったようだ。魔王の力の片鱗にすぎなかったのだが、やりすぎたようだ。
「でも、もう大丈夫です、ミラ様。あの時はまだ勇者第二候補でしたが、今は正式に勇者として協会から命を受けた身。魔族からこの町を、いいえ、ミラ様を解放して見せます!」
 男はかなり意気込んではいるが、こちらとしては大変迷惑な話だ。さっさと無視して先を急ごう。
「そうか。それなら頑張ってくれ。俺たちは俺たちで別の用事があるから」
「動くな!」
 たった一歩動いただけで、男は過剰な反応を見せた。
「知っているぞ。この町で一番能力が高いミラ様の近くにいる者。そいつが一番危険だということを!」
 思い込みが激しいようだが、俺の中身が魔族だということは事実なので、鋭いと言えば鋭いのだが……。
「ここで僕が倒してやる!」
 そう発展してほしくはなかった。
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