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実体のない者

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感覚なので確かではないが。
1時間前後は歩いている気がする。
まだ歩くのか?それとも僕を試している?
少なくても大柄な方には気づかれているはずだし…。
そんなことを考えていると
教会の鐘の音がする。
先程歩いてきた時にあった教会だろうか?
白猫達も鐘の音をじっと聞いている。
僕も、どこか心地よくてすっかり聞き入ってしまった。
短時間にも関わらず
我を忘れて聞き入っていた僕が気づくと猫が視界から消えてしまっていた。
消えてしまった…
帰り道が分からず途方に暮れていると、
フクロウのようなくぐもったような声が聞こえた。

ほほぅ~。
そなたじゃったか…。
悪い者の気配がしたが人間となぁ~。ふーむ…。人間がなぜこの場所に?
この正体がハッキリしない老人?曰く僕はこの場所では異質な存在らしい事が、ニュアンスで解る。
だが、僕の目の前にいるこの存在だって僕にしたら、だいぶ異質な存在なのである。
存在は理解できるが透明で口だけが実体化してるような気味が悪い相手に
僕が悪い者と言われても正直貴方の方こそ … ですよと言い返したくなる。

そんなことを考えていると
相手は口を開いた。
冷静に簡潔な口調で 去れ とだけ言われる。言い返してやろうか…しかし、少し目を離した数秒の間で
いつの間にか老人?は音もなく消え去っていた。周りには暗闇と静寂だけが広がっていた。














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