申し訳ありませんが、本日は猫様限定です。

川島美音

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天使のような猫の女の子

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漆黒の闇と風の音すらない静寂の街角に佇みこれからどうしようか考えていると
背後から声をかけられた。
先程の声とは明らかに違う。と思ったが自然と身構えてしまう。
だが、声の主はとても穏やかな口調でこう言った。

身構えないでください。私は怪しい者ではありませんから。

振り返ると僕の背丈より明らかに小柄な猫の女の子が立っていた。
さっきの後を尾行した猫ではないことを柄の違いから判断できた。
僕は、この子がいい子であって欲しいと思った。
さっきの老人のように一言で会話を終了してもらっては困るからだ。
こんな年齢になって恥ずかしいが、とにかく帰り道が知りたい。でないと、
元の世界には戻れないから。自分勝手な言い分だが神様にもすがる思いである。

この辺りでは見かけないけどもしかして迷子さんですか?

女の子がそう言うと、
少し困った表情で僕を見る。
余りにもストレートな物言いで一瞬たじろぐ。だが、

はい…迷子です。

そう認めざる得なかった。
認めなければ帰り道を知る事もできないだろう。

君、人の言葉が喋れるんだ!

僕は、猫は猫語しか話せないと思っていたから素直にびっくりする。
間髪入れず猫の女の子は口を開く。

ここは何でも有りな世界ですから。でも、人間が長く留まってはいけないわ。

女の子が言うには、ここは、人間界とは全く違う世界のようで
長居すると僕の命にもかかわるようだ。
人間にとっては、死後の世界と同じ様な場所のようで
時間が経てば経つほど帰れなくなってしまうのだそうだ。
ピンとはこないがヤバい事であることは理解できた。

帰り道が解らないんだ。どうしたらいいかな?

女の子は、少し考えながら口を開いた。

私も来た道を見ていたわけではないから帰り道は分からないけど、ついてきて…。

不安だったが、取り残されるより先に進めそうだったので
とりあえずついて行ってみることにした。
教会の前を通る。
さっき通った時と外観が微妙に違って見えるのだが、気のせいだろうか?
僕の視線を辿りながら女の子が話し出す。

この教会には特別な力があって、見る角度によっては全然別の建物に見えます。

とても流暢な日本語で説明してくれる。
僕にとってこの世界は居てはならない場所。でも、なぜだろうか?
ここに住んでみたくなってしまう。
何の刺激も感じない毎日。僕にとってこの場所は本当に死に直結する場所なのか?
僕のあるべき場所より居心地の良い世界。
1人考え込む僕に女の子が囁く。

お店があります。一緒に来てみませんか?

時間は惜しいけど、あなたに必要な事なら行くべきだと思います。

僕の悩みを見透かすように話す。不思議な子だ。
教会から1時間たらずの場所にその店はあった。
看板は見当たらない。

営業しているのかな?

そんな疑問を持つ。
僕は、緊張しつつも中へと入って行った。









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