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第三章 深淵の鴉
予言5
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国王夫妻主催の狩りは、滞りなく終了した。――少なくとも、表面上は。
陰で王妃の刺客が暗躍し、王太子妃の命を狙ったことなど、当事者たち以外はつゆほども知らぬ。狩りを終えて、元気な姿で帰還した王太子妃を見て、王妃がどれほど悔しげな表情をしたのか。感じ取る者さえいなかったのだから。
「皆様、今宵はお疲れでしょう。宴はまた、後日。催すことにしまして、今夜は早くお休みになられるのが宜しいでしょう」
女主人として、王妃は皆に労いの言葉を述べる。
それに頷きながら、マリサは内心苦笑を禁じ得なかった。王妃の心情を思えば、こんな悠長な言葉を述べるどころではない。今すぐにでも刺客を差し向け、彼女の命をここで断ち切りたいと思うだろう。
壁際に佇むエルナも、その脇で、従者の衣装に姿を変えたティルも、吹き出しそうになるのを堪えているのではないか。
ただ。
ただ、ひとり。青ざめた顔でマリサを見つめるウィルフリートだけは、事の次第を理解しているのか。否、王太子妃が刺客に狙われているということは判ったとしても、首謀者までは分かるまい。仮に王妃が刺客を放ったことを知ったとして、彼はどう思うのか。どう出るのか。王妃につくか、それとも。王太子妃に着くのか。
(多分、わたし)
彼は、王太子妃の側につくであろう。彼女の胎内はらに自らの子を宿らせ、いずれは世継の真実の父としてこの国に君臨することを望んでいるのだから。みすみす、大事な『妃』を、見殺しにするようなことはしないはず。無論、表立って王妃に逆らうようなことはしないだろうが。
離宮の、自身の部屋に戻ったマリサは、盛大な溜息とともに衣裳を脱ぎ捨てた。侍女の手を借りるまでもない、正装でない限り、一人で着替えくらいはできる。楽に動けるよう、部屋着を纏った彼女の元に、
「お客さんは、どうするのさ?」
エルナが渋面のまま現れた。お客さん、とは、ティルのことである。彼は王太子妃の従者として、離宮に連れ帰った。が、従者たちの部屋に置くわけにもいかず。他の使用人達の目を盗むようにして、客間に通したのだ。
「なんだか、胡散臭いガキだねえ。態度デカいし」
自身のことは棚に上げて、エルナはティルがあまり好きではないらしい。なにより、彼の瞳。赤みの強い紫の瞳。覇者の瞳、覇王の瞳、と呼ばれる、ミアルシァにおいては最も毛嫌いされる瞳を持っていることが、引っかかるのだろう。しかも、ティルは黒髪である。エルナが、彼の素性を疑うのも無理はない。
「彼は、盗賊よ。アーシェルの」
「盗賊? アーシェル?」
エルナが眉をひそめる。マリサは、簡単に経緯を話した。巡察の名目で訪れた辺境で、彼らに遭遇したこと。ティルの名は、アヤルカスの初代皇帝と同様、エリアス・リュディガ・アヤルカス・ティル・アグネイヤであること。あの皇帝の瞳が示す通り、神聖帝国皇帝の末裔であること。
そして。
そして――。
「彼のもとには、『巫女』がいるのよ」
巫女、リルカインが。
「――って、妃殿下」
今度は、驚いたらしい。エルナは片手をあげ、「ちょっと待て」と言った仕草で、ちらりと客間に通じる次の間の扉を一瞥した。
「巫女姫、でしょう? アンディルエの。それって、あんたの」
「そう。『妹』の傍にいるはずよね。確か、イリアと言ったかしら」
名前しか知らぬ、アンディルエの巫女姫。彼女があるからこそ、アグネイヤ四世は、神聖帝国皇帝を名乗ることができる。皇帝と巫女は、光と影。影であるのは、実は皇帝なのだ。光の巫女が国を導き、皇帝はひと振りの剣として、巫女を守る立場にある。俗世の垢にまみれた『政』それを、巫女に代わって執り行うのが皇帝の役目であった。
アンディルエの巫女の存在は、絶対である。
ことに、神聖帝国においては。
「もうひとり、『巫女姫』がいるってこと?」
エルナが眉をひそめる。
もうひとりいるのは、巫女だけではない。
(皇帝も、ね)
いや、真実の皇帝は、ここにいる。背に傷を負った、真実の神聖皇帝は。マリサは、自嘲に近い笑みをこぼす。
なぜ、運命とはこうも皮肉なものなのだろう。諦めていたはずなのに、すべての符号は自身を神聖皇帝の帝冠へと導くのだ。巫女姫の存在、アグネイヤの名をもつ少年の登場、それに、
(予言)
ティルが携えてきたという、リィルの言葉。それは、いかなるものなのか。真実のアグネイヤ、自身に向けての言葉なのだとしたら。それが、帝冠を戴け、というものであるとしたら。自分は、名乗るべきなのだろうか。ここで、『敵地』で。自身が、まことの神聖皇帝なのだと。
(だめでしょう、それは)
そのようなことをすれば、フィラティノアの思う壷だ。国王グレイシス二世は、マリサの存在を盾に、アグネイヤ四世の退位を迫り、まことの皇帝をその地位につけんとするだろう。武力を以てしても。そうなれば、当然神聖帝国、そして、背後にあるミアルシァとも開戦せねばならない。フィラティノアは、ヒルデブラントとの同盟を利用して、さらに戦禍を拡大させる可能性もある。
戦が起こる。
未曽有の、戦が。
マリサは、唇を噛んだ。自身の存在が、中央諸国の運命を決める。大陸の平安を左右する。
歴史における、ただの駒の一つではない、重要な要石なのだと思うと、心の底から甘美な蜜が溢れてくるような気がした。
自分が鍵を握っている。
自分が、運命の輪を回す。
古来よりの占いに登場する、髑髏を掲げる聖女。良くも悪しくも他者を混沌の渦に巻き込むという、虚無の聖女の姿が、脳裏を過った。
「真実のアグネイヤ」
エルナの呟きに、マリサは我に返った。
エルナは知らない。マリサの『正体』を。彼女こそが、アグネイヤ四世を名乗ることのできる唯一の人物であることを、まだ、知らない。ルーラが、話していなければ。
「あんた、ここにそのリィルとやらを、呼び寄せるつもりなのかい?」
不意の質問に、マリサは声を失う。
リィルを呼び寄せる。そんなことは、考えていなかった。けれども、もしも。もしも、彼女が真実の巫女であり、マリサ自身が真実の皇帝であるのなら。表裏一体である皇帝と巫女は、傍にあらねばならない。
「エルナ」
呼びかけて、いったい何を言おうとしたのだろう。マリサは口元を押さえ、息を呑む。本当に、運命が動き出したのであれば、ここは流れに逆らうべきではないのではないか。
「まったく、もー。いつまで待たせてくれちゃうんだよ」
いつの間に現れたのか、腕を組み、扉に寄りかかる少年の姿があった。彼は、赤みの強い紫の瞳に平素の悪童めいた光を浮かべ、じろじろと王太子妃とエルナ、二人を見比べている。
「あっ、あんた! なに勝手に入ってきてるのよ?」
エルナが目を吊り上げても、ティルはまるで耳を貸さず。すたすたと王太子妃の元に歩み寄ってくる。
「オレもさあ、暇じゃないんだよね」
「ああ、ごめんなさい」
後で話を聞く、そういって、放置していたのは悪かった。ティルはこう見えても、アーシェルの『長』である。そう長いこと、故郷を離れてはいられないのだろう。
「連れも待たせてあるし。さっさと伝言だけ言わせてくれねえかなあ」
ここにいるのは飽きた、と、言わんばかりの表情で、彼は肩をすくめる。マリサはもう一度謝ると、彼を促したのだが。
「――? 連れ、って?」
引っかかった言葉。連れが来ていると、そう言ったティルの言葉が気になって、つい、尋ねてしまう。ティルは苦笑を浮かべ、小さく頷いた。
「ああ。チビ助。やつを、王都の宿に残してきているからさ」
返事を待つまでもない。
マリサは自身の肩に圧し掛かる、『歴史の奔流』を予感して、大きく眼を見開いた。
◆
城下へと繰り出すのは、久しぶりだった。
騎士の装束を纏い、馬を操り、行動を疾駆する。長い黒髪は編みあげ、帽子の下に封じてしまえば、誰も彼女を王太子妃だとは思わぬだろう。
「ほんとにもう、とんだじゃじゃ馬だよ」
簡素ではあるが女性の衣装のまま馬上の人となったエルナは、彼女につき従いながら、わざと聞こえるように舌打ちをする。その傍らを並走する、黒髪の少年――ティルも
「ああ、まったくだね」
口調はぞんざいであるが、どこかしら親しみを込めた物言いで、エルナに同意した。
エルナは、相変わらずティルを疑っているのか、胡散臭そうな視線を彼に向ける。
――アーシェルに、黒髪の人間が生まれるものか。
――あれは、ミアルシァの封印王族に決まっている。
何度も、彼女はマリサに忠告してきた。
確かに、アーシェルは北の果てであり、銀髪の民は多くても黒髪は希少である。エルナも、ティルがただ『赤みの強い紫の瞳』を持っていたのであれば、「ああ、そうかい」と素直に納得しただろう。だが、ティルの黒髪、それも南方独特の艶のある濡れ羽の髪を見たとなれば、話は別だった。
おそらくエルナは、今、頭の中で記憶を総動員して封印王族の名を思い出していることであろう。
それを考えると、可笑しくなって。マリサは、知らず笑みをこぼした。
「こんだけ飛ばして笑ってられるって、かなり余裕だね、お嬢さん」
これまた、息一つ切らせずに前に出たティルが、
「もう少し――この先の角を曲がった宿に、奴がいる」
簡単に案内を述べて、先に馬を走らせた。
リィルに会う。
言い出したのは、マリサだった。リィルが王都にいるのであれば、話は早い。彼女を離宮に呼びつけるよりも、自分が出向いた方が、更に早くことが済む。場合によっては、リィルの身柄をそのまま預かってもよいかもしれない――マリサの思惑を知ってか知らずか、
「じゃあ、案内してやるよ」
ティルは「しょうがねぇな」と苦笑しつつ、案内役を買って出たのである。この行動に、エルナが過敏に反応した。ミアルシァの密偵かも知れぬ男の手に、王太子妃を預けることはできない、そんな理由で彼女も強引に同行してきたのだ。
エルナの手配で、マリサは今夜は王太子ディグルの元に行ったことになっている。ディグルもそれくらい話を合わせてくれるだろう。こういうとき、夫婦別居の生活は便利だと、マリサはつまらぬところで満足していた。
リィルの投宿している宿は、一階が居酒屋と食堂を兼ねている、中央諸国によく見られるごく普通の宿屋であった。アーシェルの民が金子を持ち寄ったのか、そこそこに上質な宿である。さすがに、一族の長たる少年と、巫女姫としてあがめている少女――実際は男児だが――の宿として、恥ずかしくないものを用意したかったのだろう。ティルもその気持ちを汲んでか、敢えて安宿は避けた様子であった。
(そこが、彼が慕われる理由かしらね)
つかみどころのないティルという少年に、マリサが抱いた印象――彼は、人の上に立つべき資質を備えている。それは、確かだった。王者の風格ではない、寧ろ、英雄と言ったところか。彼に従えば大丈夫だと、そう思わせる何かがティルにはあるのだ。
それは、自分も同じ。同じだと、考えている。
同じ日に生まれた双子、顔から姿から声から、すべて同じ二人だが、異なる点があるとすれば、ただ一つ。資質、である。自分にあって、片翼にないもの。それは、帝王としての資質。覚悟の問題でも、気概の有無でもない。それは、決して後付けでは生まれてはこないものだ。
ティルも、覇王の瞳を持って、双子と同じ日に生まれた。
彼も何か、定められし運命を背負っているのだろう。
「長」
リィルがいる、言われた部屋の扉を叩くと、真っ先に姿を現したのは
「腰巾着」
アウリールであった。やはり、彼がティルの傍を離れることはなかったか。
アウリールも、扉の前に佇んでいたのがティルではなくマリサであると認めた刹那、
「……」
渋い顔をした。彼も、マリサに対しては、あまり良い感情を持ってはいない。自身を含む、アーシェルの民を苦しめる貴族の筆頭。彼は、マリサをそうやって認識しているのだ。
「お久し振り、ね」
微妙な沈黙を破ったのは、マリサだった。彼女は首を傾け
「入って、いいかしら」
ほぼ一方的に言葉を押しつけると、中へと足を踏み入れる。部屋は比較的広かった。成年男性が十分に眠れる大きさの寝台が二つ。卓子テーブルがひとつ。申し訳程度に、椅子が二つ。基本的なものは、揃っている。寝具もそれ程悪くはない。ピシリと整えられ、きちんと洗濯・糊付けされていることが伺える。
「るきあ」
奥の寝台に件の人は、いた。
朝霧を思わせる、乳白色の髪に、黄昏の瞳。全体的な印象は、白――けれども、大きな瑠璃の瞳が、聖なる色の中に一点の闇をもたらす。十歳にも満たない、小柄な子供のはずなのに、なぜかその姿が大きく見えて。否、成熟した女性の存在を感じさせて、マリサは僅かに眩暈を覚えた。
「るきあ」
相変わらず、言葉は拙く愛らしい。その落差が更にマリサの感覚を狂わせる。
「リィル――」
久しぶり、元気だった? 呼びかけようとしたマリサの言葉遮るかのように。
「あぐねいや」
リィルはにこりと笑った。
「り……」
「るきあ、うそついていた。ほんとうは、あぐねいや。だから、りぃるもうそついていた」
「……?」
嘘。リィルが嘘をついていた。自分は、何か偽られたろうか。記憶を辿るマリサを眩しげに見つめ、
「それで、ほんとうのことをいいにきた」
リィルにしては饒舌に語り始める。マリサは惹きつけられるように、彼女のもとへと進んだ。まがい物の巫女姫――限りなく瑠璃に近い青い瞳を持つリルカインは、自らを真実の巫女姫だといい、マリサを真実のアグネイヤだと言った。リルカインは、巫女としてなにか予兆を得たに違いない。巫女の役割は、『兆し』を皇帝に告げること。皇帝は、巫女の言葉を自分なりに解釈し、政を行うのだ。
「……」
巫女の言葉を聞く。マリサの体が震えた。彼女の背後では、胸に手を当て、恭順の姿勢を示したアウリールが床に片膝をついている。ティルは相変わらずの不遜な態度で、壁に寄りかかり。エルナも同じく腕を組んだまま扉に肩を預けていた。
「わたしを、あんでぃるえにつれていって」
しんじつの、あぐねいやにしかたのめない――リルカインは言う。
神聖帝国の首都・アンディルエは、二百年前の戦で跡形もなく破壊された。現在は、どこにあるのかわからない状態である。このフィラティノアの国土のどこか、という噂もあれば、旧アヤルカス帝国領の一部となっている、という話もあった。神聖帝国亡き後、この地域は諸国に見捨てられ、長らく荒廃していたのだ。誰も、当時の様子を知る者はいない。
アンディルエが既に幻の都となっていることは、リィルも承知のはず。
と、いうことは。
(アンディルエの跡地?)
そこに連れて行け、というのか。違う。マリサはかぶりを振った。そうではなく、リィルが言わんとしていること、それは。
マリサに、真実のアグネイヤとして即位せよと。
そう言っている。
「……」
予感はあった。そう言われるであろうことは、ティルからの伝言を聞いたときに、想像していた。だが、実際『巫女姫』の言葉を受けてみれば。情けないことに、震えている。大きなうねりを周囲に感じて、鼓動が早鐘を打ち始める。これは、恐れなのか。それとも、高揚感からくるものなのか。
「いくさをはじめるのもあぐねいや、おわらせるのもあぐねいや。へいあんのよをきずくいしずえとなるのは、あぐねいやごせい」
淡々と語られる、巫女姫の言葉。マリサは、息を呑んで耳を傾けていたが、
「アグネイヤ五世?」
その部分が引っかかった。現在の皇帝は、アグネイヤ四世である。自分が即位するとしたら、やはりアグネイヤ四世を名乗るのが妥当であろう。こちらが真実のアグネイヤであれば、五世を名乗る必要はない。だとしたら。
アグネイヤ五世、とは。
いったい、誰を指すのだろうか。
陰で王妃の刺客が暗躍し、王太子妃の命を狙ったことなど、当事者たち以外はつゆほども知らぬ。狩りを終えて、元気な姿で帰還した王太子妃を見て、王妃がどれほど悔しげな表情をしたのか。感じ取る者さえいなかったのだから。
「皆様、今宵はお疲れでしょう。宴はまた、後日。催すことにしまして、今夜は早くお休みになられるのが宜しいでしょう」
女主人として、王妃は皆に労いの言葉を述べる。
それに頷きながら、マリサは内心苦笑を禁じ得なかった。王妃の心情を思えば、こんな悠長な言葉を述べるどころではない。今すぐにでも刺客を差し向け、彼女の命をここで断ち切りたいと思うだろう。
壁際に佇むエルナも、その脇で、従者の衣装に姿を変えたティルも、吹き出しそうになるのを堪えているのではないか。
ただ。
ただ、ひとり。青ざめた顔でマリサを見つめるウィルフリートだけは、事の次第を理解しているのか。否、王太子妃が刺客に狙われているということは判ったとしても、首謀者までは分かるまい。仮に王妃が刺客を放ったことを知ったとして、彼はどう思うのか。どう出るのか。王妃につくか、それとも。王太子妃に着くのか。
(多分、わたし)
彼は、王太子妃の側につくであろう。彼女の胎内はらに自らの子を宿らせ、いずれは世継の真実の父としてこの国に君臨することを望んでいるのだから。みすみす、大事な『妃』を、見殺しにするようなことはしないはず。無論、表立って王妃に逆らうようなことはしないだろうが。
離宮の、自身の部屋に戻ったマリサは、盛大な溜息とともに衣裳を脱ぎ捨てた。侍女の手を借りるまでもない、正装でない限り、一人で着替えくらいはできる。楽に動けるよう、部屋着を纏った彼女の元に、
「お客さんは、どうするのさ?」
エルナが渋面のまま現れた。お客さん、とは、ティルのことである。彼は王太子妃の従者として、離宮に連れ帰った。が、従者たちの部屋に置くわけにもいかず。他の使用人達の目を盗むようにして、客間に通したのだ。
「なんだか、胡散臭いガキだねえ。態度デカいし」
自身のことは棚に上げて、エルナはティルがあまり好きではないらしい。なにより、彼の瞳。赤みの強い紫の瞳。覇者の瞳、覇王の瞳、と呼ばれる、ミアルシァにおいては最も毛嫌いされる瞳を持っていることが、引っかかるのだろう。しかも、ティルは黒髪である。エルナが、彼の素性を疑うのも無理はない。
「彼は、盗賊よ。アーシェルの」
「盗賊? アーシェル?」
エルナが眉をひそめる。マリサは、簡単に経緯を話した。巡察の名目で訪れた辺境で、彼らに遭遇したこと。ティルの名は、アヤルカスの初代皇帝と同様、エリアス・リュディガ・アヤルカス・ティル・アグネイヤであること。あの皇帝の瞳が示す通り、神聖帝国皇帝の末裔であること。
そして。
そして――。
「彼のもとには、『巫女』がいるのよ」
巫女、リルカインが。
「――って、妃殿下」
今度は、驚いたらしい。エルナは片手をあげ、「ちょっと待て」と言った仕草で、ちらりと客間に通じる次の間の扉を一瞥した。
「巫女姫、でしょう? アンディルエの。それって、あんたの」
「そう。『妹』の傍にいるはずよね。確か、イリアと言ったかしら」
名前しか知らぬ、アンディルエの巫女姫。彼女があるからこそ、アグネイヤ四世は、神聖帝国皇帝を名乗ることができる。皇帝と巫女は、光と影。影であるのは、実は皇帝なのだ。光の巫女が国を導き、皇帝はひと振りの剣として、巫女を守る立場にある。俗世の垢にまみれた『政』それを、巫女に代わって執り行うのが皇帝の役目であった。
アンディルエの巫女の存在は、絶対である。
ことに、神聖帝国においては。
「もうひとり、『巫女姫』がいるってこと?」
エルナが眉をひそめる。
もうひとりいるのは、巫女だけではない。
(皇帝も、ね)
いや、真実の皇帝は、ここにいる。背に傷を負った、真実の神聖皇帝は。マリサは、自嘲に近い笑みをこぼす。
なぜ、運命とはこうも皮肉なものなのだろう。諦めていたはずなのに、すべての符号は自身を神聖皇帝の帝冠へと導くのだ。巫女姫の存在、アグネイヤの名をもつ少年の登場、それに、
(予言)
ティルが携えてきたという、リィルの言葉。それは、いかなるものなのか。真実のアグネイヤ、自身に向けての言葉なのだとしたら。それが、帝冠を戴け、というものであるとしたら。自分は、名乗るべきなのだろうか。ここで、『敵地』で。自身が、まことの神聖皇帝なのだと。
(だめでしょう、それは)
そのようなことをすれば、フィラティノアの思う壷だ。国王グレイシス二世は、マリサの存在を盾に、アグネイヤ四世の退位を迫り、まことの皇帝をその地位につけんとするだろう。武力を以てしても。そうなれば、当然神聖帝国、そして、背後にあるミアルシァとも開戦せねばならない。フィラティノアは、ヒルデブラントとの同盟を利用して、さらに戦禍を拡大させる可能性もある。
戦が起こる。
未曽有の、戦が。
マリサは、唇を噛んだ。自身の存在が、中央諸国の運命を決める。大陸の平安を左右する。
歴史における、ただの駒の一つではない、重要な要石なのだと思うと、心の底から甘美な蜜が溢れてくるような気がした。
自分が鍵を握っている。
自分が、運命の輪を回す。
古来よりの占いに登場する、髑髏を掲げる聖女。良くも悪しくも他者を混沌の渦に巻き込むという、虚無の聖女の姿が、脳裏を過った。
「真実のアグネイヤ」
エルナの呟きに、マリサは我に返った。
エルナは知らない。マリサの『正体』を。彼女こそが、アグネイヤ四世を名乗ることのできる唯一の人物であることを、まだ、知らない。ルーラが、話していなければ。
「あんた、ここにそのリィルとやらを、呼び寄せるつもりなのかい?」
不意の質問に、マリサは声を失う。
リィルを呼び寄せる。そんなことは、考えていなかった。けれども、もしも。もしも、彼女が真実の巫女であり、マリサ自身が真実の皇帝であるのなら。表裏一体である皇帝と巫女は、傍にあらねばならない。
「エルナ」
呼びかけて、いったい何を言おうとしたのだろう。マリサは口元を押さえ、息を呑む。本当に、運命が動き出したのであれば、ここは流れに逆らうべきではないのではないか。
「まったく、もー。いつまで待たせてくれちゃうんだよ」
いつの間に現れたのか、腕を組み、扉に寄りかかる少年の姿があった。彼は、赤みの強い紫の瞳に平素の悪童めいた光を浮かべ、じろじろと王太子妃とエルナ、二人を見比べている。
「あっ、あんた! なに勝手に入ってきてるのよ?」
エルナが目を吊り上げても、ティルはまるで耳を貸さず。すたすたと王太子妃の元に歩み寄ってくる。
「オレもさあ、暇じゃないんだよね」
「ああ、ごめんなさい」
後で話を聞く、そういって、放置していたのは悪かった。ティルはこう見えても、アーシェルの『長』である。そう長いこと、故郷を離れてはいられないのだろう。
「連れも待たせてあるし。さっさと伝言だけ言わせてくれねえかなあ」
ここにいるのは飽きた、と、言わんばかりの表情で、彼は肩をすくめる。マリサはもう一度謝ると、彼を促したのだが。
「――? 連れ、って?」
引っかかった言葉。連れが来ていると、そう言ったティルの言葉が気になって、つい、尋ねてしまう。ティルは苦笑を浮かべ、小さく頷いた。
「ああ。チビ助。やつを、王都の宿に残してきているからさ」
返事を待つまでもない。
マリサは自身の肩に圧し掛かる、『歴史の奔流』を予感して、大きく眼を見開いた。
◆
城下へと繰り出すのは、久しぶりだった。
騎士の装束を纏い、馬を操り、行動を疾駆する。長い黒髪は編みあげ、帽子の下に封じてしまえば、誰も彼女を王太子妃だとは思わぬだろう。
「ほんとにもう、とんだじゃじゃ馬だよ」
簡素ではあるが女性の衣装のまま馬上の人となったエルナは、彼女につき従いながら、わざと聞こえるように舌打ちをする。その傍らを並走する、黒髪の少年――ティルも
「ああ、まったくだね」
口調はぞんざいであるが、どこかしら親しみを込めた物言いで、エルナに同意した。
エルナは、相変わらずティルを疑っているのか、胡散臭そうな視線を彼に向ける。
――アーシェルに、黒髪の人間が生まれるものか。
――あれは、ミアルシァの封印王族に決まっている。
何度も、彼女はマリサに忠告してきた。
確かに、アーシェルは北の果てであり、銀髪の民は多くても黒髪は希少である。エルナも、ティルがただ『赤みの強い紫の瞳』を持っていたのであれば、「ああ、そうかい」と素直に納得しただろう。だが、ティルの黒髪、それも南方独特の艶のある濡れ羽の髪を見たとなれば、話は別だった。
おそらくエルナは、今、頭の中で記憶を総動員して封印王族の名を思い出していることであろう。
それを考えると、可笑しくなって。マリサは、知らず笑みをこぼした。
「こんだけ飛ばして笑ってられるって、かなり余裕だね、お嬢さん」
これまた、息一つ切らせずに前に出たティルが、
「もう少し――この先の角を曲がった宿に、奴がいる」
簡単に案内を述べて、先に馬を走らせた。
リィルに会う。
言い出したのは、マリサだった。リィルが王都にいるのであれば、話は早い。彼女を離宮に呼びつけるよりも、自分が出向いた方が、更に早くことが済む。場合によっては、リィルの身柄をそのまま預かってもよいかもしれない――マリサの思惑を知ってか知らずか、
「じゃあ、案内してやるよ」
ティルは「しょうがねぇな」と苦笑しつつ、案内役を買って出たのである。この行動に、エルナが過敏に反応した。ミアルシァの密偵かも知れぬ男の手に、王太子妃を預けることはできない、そんな理由で彼女も強引に同行してきたのだ。
エルナの手配で、マリサは今夜は王太子ディグルの元に行ったことになっている。ディグルもそれくらい話を合わせてくれるだろう。こういうとき、夫婦別居の生活は便利だと、マリサはつまらぬところで満足していた。
リィルの投宿している宿は、一階が居酒屋と食堂を兼ねている、中央諸国によく見られるごく普通の宿屋であった。アーシェルの民が金子を持ち寄ったのか、そこそこに上質な宿である。さすがに、一族の長たる少年と、巫女姫としてあがめている少女――実際は男児だが――の宿として、恥ずかしくないものを用意したかったのだろう。ティルもその気持ちを汲んでか、敢えて安宿は避けた様子であった。
(そこが、彼が慕われる理由かしらね)
つかみどころのないティルという少年に、マリサが抱いた印象――彼は、人の上に立つべき資質を備えている。それは、確かだった。王者の風格ではない、寧ろ、英雄と言ったところか。彼に従えば大丈夫だと、そう思わせる何かがティルにはあるのだ。
それは、自分も同じ。同じだと、考えている。
同じ日に生まれた双子、顔から姿から声から、すべて同じ二人だが、異なる点があるとすれば、ただ一つ。資質、である。自分にあって、片翼にないもの。それは、帝王としての資質。覚悟の問題でも、気概の有無でもない。それは、決して後付けでは生まれてはこないものだ。
ティルも、覇王の瞳を持って、双子と同じ日に生まれた。
彼も何か、定められし運命を背負っているのだろう。
「長」
リィルがいる、言われた部屋の扉を叩くと、真っ先に姿を現したのは
「腰巾着」
アウリールであった。やはり、彼がティルの傍を離れることはなかったか。
アウリールも、扉の前に佇んでいたのがティルではなくマリサであると認めた刹那、
「……」
渋い顔をした。彼も、マリサに対しては、あまり良い感情を持ってはいない。自身を含む、アーシェルの民を苦しめる貴族の筆頭。彼は、マリサをそうやって認識しているのだ。
「お久し振り、ね」
微妙な沈黙を破ったのは、マリサだった。彼女は首を傾け
「入って、いいかしら」
ほぼ一方的に言葉を押しつけると、中へと足を踏み入れる。部屋は比較的広かった。成年男性が十分に眠れる大きさの寝台が二つ。卓子テーブルがひとつ。申し訳程度に、椅子が二つ。基本的なものは、揃っている。寝具もそれ程悪くはない。ピシリと整えられ、きちんと洗濯・糊付けされていることが伺える。
「るきあ」
奥の寝台に件の人は、いた。
朝霧を思わせる、乳白色の髪に、黄昏の瞳。全体的な印象は、白――けれども、大きな瑠璃の瞳が、聖なる色の中に一点の闇をもたらす。十歳にも満たない、小柄な子供のはずなのに、なぜかその姿が大きく見えて。否、成熟した女性の存在を感じさせて、マリサは僅かに眩暈を覚えた。
「るきあ」
相変わらず、言葉は拙く愛らしい。その落差が更にマリサの感覚を狂わせる。
「リィル――」
久しぶり、元気だった? 呼びかけようとしたマリサの言葉遮るかのように。
「あぐねいや」
リィルはにこりと笑った。
「り……」
「るきあ、うそついていた。ほんとうは、あぐねいや。だから、りぃるもうそついていた」
「……?」
嘘。リィルが嘘をついていた。自分は、何か偽られたろうか。記憶を辿るマリサを眩しげに見つめ、
「それで、ほんとうのことをいいにきた」
リィルにしては饒舌に語り始める。マリサは惹きつけられるように、彼女のもとへと進んだ。まがい物の巫女姫――限りなく瑠璃に近い青い瞳を持つリルカインは、自らを真実の巫女姫だといい、マリサを真実のアグネイヤだと言った。リルカインは、巫女としてなにか予兆を得たに違いない。巫女の役割は、『兆し』を皇帝に告げること。皇帝は、巫女の言葉を自分なりに解釈し、政を行うのだ。
「……」
巫女の言葉を聞く。マリサの体が震えた。彼女の背後では、胸に手を当て、恭順の姿勢を示したアウリールが床に片膝をついている。ティルは相変わらずの不遜な態度で、壁に寄りかかり。エルナも同じく腕を組んだまま扉に肩を預けていた。
「わたしを、あんでぃるえにつれていって」
しんじつの、あぐねいやにしかたのめない――リルカインは言う。
神聖帝国の首都・アンディルエは、二百年前の戦で跡形もなく破壊された。現在は、どこにあるのかわからない状態である。このフィラティノアの国土のどこか、という噂もあれば、旧アヤルカス帝国領の一部となっている、という話もあった。神聖帝国亡き後、この地域は諸国に見捨てられ、長らく荒廃していたのだ。誰も、当時の様子を知る者はいない。
アンディルエが既に幻の都となっていることは、リィルも承知のはず。
と、いうことは。
(アンディルエの跡地?)
そこに連れて行け、というのか。違う。マリサはかぶりを振った。そうではなく、リィルが言わんとしていること、それは。
マリサに、真実のアグネイヤとして即位せよと。
そう言っている。
「……」
予感はあった。そう言われるであろうことは、ティルからの伝言を聞いたときに、想像していた。だが、実際『巫女姫』の言葉を受けてみれば。情けないことに、震えている。大きなうねりを周囲に感じて、鼓動が早鐘を打ち始める。これは、恐れなのか。それとも、高揚感からくるものなのか。
「いくさをはじめるのもあぐねいや、おわらせるのもあぐねいや。へいあんのよをきずくいしずえとなるのは、あぐねいやごせい」
淡々と語られる、巫女姫の言葉。マリサは、息を呑んで耳を傾けていたが、
「アグネイヤ五世?」
その部分が引っかかった。現在の皇帝は、アグネイヤ四世である。自分が即位するとしたら、やはりアグネイヤ四世を名乗るのが妥当であろう。こちらが真実のアグネイヤであれば、五世を名乗る必要はない。だとしたら。
アグネイヤ五世、とは。
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