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第三章 深淵の鴉
出奔2
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「――つまりは、そういうことです」
ことのあらましを話し終えたリナレスは、そう言葉を結んだ。
ジェルファとその生母アイリアナの画策によって、宮廷は既にミアルシァに押さえられていること。重臣は、ほぼミアルシァに寝返っている。現在のところ、宰相エルハルトだけが皇太后と皇帝に忠誠を尽くしているが。下手をすれば、彼の命も危ない、とリナレスは言う。
「幸いなことに、皇太后陛下はご無事です。陛下は、クラウディア姫に対する牽制の意味でも重要な人質となり得ましょう」
フィラティノアが軍を動かしたとき、ミアルシァはリディアを盾にするつもりだ。サリカは膝の上で拳を固める。母后が人質となれば、サリカも下手な動きはできない。
「正式な通達は、追ってだされることでしょうが……」
サリカに目を向けて、リナレスは続ける。
「ミアルシァの要求は、皇帝アグネイヤ四世の退位です」
それは事実上、神聖帝国の崩壊でもある。ミアルシァは神聖帝国を認めない。国土全てをアヤルカスの名称で統一するつもりだ。そして、その国をすべてミアルシァの属領とする。もしくは、ミアルシァ国王の二重統治にするつもりではないか。退位を余儀なくされたアグネイヤ四世は、幽閉、もしくは配流。時を置かずして暗殺されるだろう。あるいは、既に刺客が放たれているのかもしれない。
「僕が、退位を断れば?」
「皇太后陛下及び、巫女姫の御命を頂くと」
逃げられぬ状況に追い詰め、自ら玉座を降りるように仕向ける気か、叔父は。優しげな美貌を持つ叔父の面影を心に描き、サリカは緩くかぶりを振った。あの叔父が、このように恐ろしげな陰謀に加担するなど。信じられない。
「現在、皇太后陛下は紫芳宮の一室に幽閉されていらっしゃいます。宰相殿も、おそらく」
「リナレスは、どうやってここまで来られたんだ? お前も、危なかったのだろう?」
「――陛下。私の兄の任務をお忘れですか? それに、私の職務も」
リナレスは、にこりと笑う。彼も彼の兄も、密偵を務めているのだ。必要な情報を探り出し、逃亡することなど朝飯前だろう。そのことに思い至り、サリカは頷いた。
そんな二人の会話を、少し離れたところからジェリオが見つめていた。彼は背を壁に預け、腕を組んだまま苦虫を噛み潰したような顔をしている。どうも、面白くないらしい。リナレスはサリカと同じ卓にはつかぬものの、そこは幼馴染、ジェリオとはまた異なる親密度合いで彼女と語っているのだ。リナレスもその部分に優越感を覚えているらしい。時折ちらりとジェリオを見ては、口元を歪める。ジェリオは無視してはいるが、内心は面白くないだろう。
(全く)
国の一大事であるというのに、この二人は。
サリカは、悉く私情をむき出しにする二人の青年を見比べて、深く肩を落とす。
帝位が惜しいわけではない。けれども、神聖帝国を――二百年の時を経て、漸く復活させた神聖帝国を、一年と経たぬうちに滅ぼすわけにはいかぬ。これでジェルファが神聖皇帝を継ぐのであればよい。しかし、彼とその背後にあるミアルシァは、神聖帝国そのものを潰すつもりなのだ。当然、視野にはアグネイヤ四世の退位のほかに、巫女姫の処刑も含まれているのだろう。サリカは退位で済むが、巫女姫であるイリア、彼女の命の保証はない。
こういうときにシェラが彼女の傍にいないことが悔やまれる。よもや、シェリルは実はミアルシァの密偵で、シェラを巫女姫から引き離すために遣わされたのではないか。どころか、あの御者でさえミアルシァの手のもので、シェリルと口裏を合わせてサリカを誑かしたのではないか。考えれば考えるほど、誰もかれもが疑わしく思えてしまう。
だが。シェリルのあの必死の訴えは、芝居とは思えなかった。迫真の演技と言われればそれまでだが、それでも、彼女の清冽な瞳を疑いたくはなかった。
「イリアは? イリアは、無事なのか?」
シェラ不在の今、彼女の元にあるのは、アンディルエの巫女たちのみである。巫女に武術の心得があるとは思えぬが、誰が彼女を守っているのだろう。
「そちらはご安心を。紫芳宮を離れる際に、巫女姫は先に落ち延びられましたから」
行く先は、いまだ旅の一座を続けている老婆のもとだ、とリナレスが付け加えた。巫女姫の身代わりとして、巫女がひとり神殿に残っているが、彼女も時が来れば脱出を図るという。
「あとは、陛下だけです」
リナレスは、今すぐにでも離宮を離れるべきだと主張するが。果たしてそれで良いのだろうか。直接会って話し合えば、ジェルファも母后を解放してくれるかもしれない。
「それは……甘すぎます、陛下」
サリカの申し出を、リナレスは即刻却下した。なぜに、と訝る彼女に、リナレスは言葉を渋る。その視線が忙しなく動き、強く引き結んだ唇が幽かに震えている。何か隠し事をしているときの癖だ。
「リナレス?」
サリカが促すと、彼は観念したとばかりに視線を上げた。
「ジェルファ閣下に、お会いになられてはなりません」
「なぜ?」
「――理由は、申し上げられません。ともかく、会われれば後悔されます。ですから」
「リナレスも知っているだろう? 叔父上は……ジェルファは優しい人だ。今回の件も、彼の名で全てが動いているようだが、彼は利用されているだけじゃないのか? だから、……」
「今度ばかりは、その坊ちゃんに賛成だな、俺も」
サリカの言葉を途中で遮り、ジェリオがこちらに歩み寄って来た。彼はサリカの背後に立ち、彼女の身体越しにリナレスを見つめる。
「つまりは、あれだろ? そのジェルファとやらは、皇女さんに惚れている。惚れて、モノにしたいと思っている……そういうことだろう? 坊ちゃん?」
「なっ?」
ジェリオの指摘に、サリカは瞠目する。そんな馬鹿な、と。リナレスに同意を求めたが。リナレスは静かに首を振った。
「残念ながら、その男の言う通りです。陛下」
叔父でもあり従兄でもあるアヤルカス公爵ジェルファ。彼は幼いころから、サリカに邪な思いを抱いていたのだと。リナレスは静かに告げた。
「そればかりではございません。陛下、今ですから申し上げますが……」
続くリナレスの告白に、サリカは言葉を失った。リナレスが苦渋の表情で漏らした言葉。それは。
ジェルファの真の父親は、ガルダイア三世。双子の父である、と。
「おそれながら、ジェルファ閣下は、陛下の実の兄上に当たります。そして、アヤルカスの正当なる第一帝位継承者でもあるのです」
二重の衝撃が、サリカを襲った。
今まで叔父だとばかり思っていた、ジェルファ。彼が実は、異母兄であったとは。母方の系譜から見れば、従兄であることには変わりはない。だが、父方として見れば。サリカは、マリサは、彼を叔父ではなく兄と呼ばねばならないのだ。
ガルダイア三世の長子である『兄』こそが、実は皇帝となるべき存在である。
だとすれば何故、そのことを公にはしなかったのか。理由は至極当たり前のことながら、父と伯母は不義の関係であったからだ。伯母は、祖父の後室として輿入れをしてきた身。父とは義理とはいえ親子に当たる。何を考えて、父は、義理の母と関係を持ってしまったのか。
「王宮内の不義は、ままあることです」
リナレスは冷静だった。一度覚悟を決めてしまえば、怖いものなどないのだろう。彼は淡々と事実を告げていく。
「お二人の間にどのような感情があったのか。わかりません。しいて言えば、老人ともいえる相手への輿入れを、アイリアナ様が嘆かれていた。それを歳の近いガルダイア陛下が慰められて……ということでしょうか。互いに世間一般のような愛情があった、とは思えませんが。ジェルファ様は、戸籍上ガルダイア三世陛下の弟とされたわけです」
サリカは、頷いた。頷くしかなかった。今は、事実を受け止めるしかない。
だが、ジェルファが父帝ガルダイアの長男であったとして。戸籍上それを認めていないのであれば、彼の帝位継承の順位はサリカに劣る。継承権を強制的に放棄させられた『クラウディア』を除けば、依然としてサリカが一位。彼女が即位をした今は、彼が継承権一位となっていた。
それよりも。幼いころから、ジェルファがサリカに懸想していたとは。まるで気づかなかった。病弱で狩りに出ることも剣技を嗜むこともなく、日がな一日読書に明け暮れる彼の元に、話し相手として出向いたことは何度かある。ジェルファを
――陰気臭いから、嫌い。
そう言ってはばからなかったマリサを置いて、一人で彼の部屋に足を向けることが多かったが。そのときも彼は変わった様子を見せなかった。ただ普通に。嬉しそうにサリカの語る『外の世界』について、耳を傾けていただけなのだ。
「だから、あんたは鈍いんだよ」
背後からジェリオのぼやきが聞こえる。同時に髪に彼の嘆息がかかった。情熱的なそれとは異なるものだが、昨夜の行為を思い出し、サリカは僅かに顔を赤らめる。彼女の僅かな変化に気づいたリナレスは、不愉快そうに口元を歪めた。彼は何か言いたげに視線を揺らしたのだが、それを遮るかのようにジェリオが言葉を続ける。
「男がどんな目であんたを見ているか。もうちっと気にしとけ。なんかこう、強引に押し切ればモノにできそうな、そんな雰囲気漂わせているから狙われるんだ。もっと毅然として、だな」
どこか説教に近くなった言葉に、サリカは苦笑した。
サリカの、触れなば落ちん、といった態度が、相手に妙な期待をさせるのか。あのカルノリアの士官も、ジェルファも。同様に感じていたのか、と。そう考えると自身の不甲斐なさに嫌気がさしてくる。そんなつもりはないのに、相手は――異性は、サリカを容易く落とせると思ってしまうのだろうか。
「お前は、言い方が露骨すぎる」
リナレスが、声を尖らせた。
「陛下はそんな、異性に媚を売るようなことはされていない。相手が悪いんだ」
「はーん? てめぇもこいつの優しさに付け込んでいるクチなのに、よく言うぜ」
舌を出さんばかりのジェリオの態度に、今度はサリカが嘆息する番だった。こと、リナレスに関わると、彼は子供じみた態度をとるようである。年齢はジェリオの方がはるかに上であるのに、なぜ、同じ目線で争うのか。先に捕えられた折の確執のせいかとも思うが。いまひとつ、理由ははっきりしない。
「――ともあれ、話はこれだけです。今は急ぎ、ここからの脱出を図ることが先決ですからね。陛下もすぐに支度なさってください。わたしは、馬の用意をしておきますので」
「リナレス」
礼を失さぬよう、一礼してからその場を辞そうとするリナレスを、サリカが呼びとめる。彼は振り返り、小さく笑った。
「アウレリエ様の元に、暫く潜んでいてください。流石にミアルシァも、あの土地までは手を伸ばそうとはしないでしょう」
帝国の北の果て。フィラティノアより帰還した折に訪れたその地を、心に描く。大叔母・アウレリエならば、サリカの身柄を快く引き受けてくれるだろう。だが、それは同時に大叔母をも危険にさらすことになるのだ。
(僕のせいで)
犠牲者が生まれる。
自分が皇帝である限り、自分に関わる人物に危害が及ぶのだとしたら。ミアルシァの要求通り、退位をした方が良いのではないか。然る後に、再起を図れば。
(いや)
それでは駄目なのだ。自分は、皇帝でなければならない。皇帝が存在する限り、神聖帝国は滅びない。巫女姫と皇帝、一対の柱たるふたりが在れば、帝国は存続する。ミアルシァの思惑通りに事は運ばない。
「不本意だが」
扉に手をかけたリナレスは、そこで立ち止まり。もう一度こちらを見た。こちらを――サリカと、その背後に佇むジェリオを。彼は黒い瞳に暗い焔を揺らめかせ、
「陛下のことを、頼む」
ジェリオに向けてそれだけ告げると、部屋を出ていった。
「リナレス?」
彼は、ともに脱出をしないのか。サリカをジェリオに任せるとは、そういうことである。リナレスは、紫芳宮へと取って返し、母后及び宰相・エルハルトとともに、来るべき日に備えて準備を整えるつもりなのかもしれない。彼女は、ふとそう思った。
「――もしも、行くところがない、ってんなら」
不意に。ジェリオの声が耳元で聞こえた。耳朶を打つ息に、知らず身体が震える。
「ユリシエルに行くか?」
俺の故郷に。
そこで、彼は自身の過去を探すという。
「ユリシエル」
北の都。カルノリアの首都。ソフィア姫の、シェリルの、故郷でもある街。
サリカは、視線を窓の外に向ける。そこに、足を向けるのも良いかもしれない。国を追われた皇帝が逃げ込む場所は、古より北方と決まっている。かのアグネイヤ一世も、敵の目をくらますために、幼少期はカルノリアで過ごしていた。カルノリアの、タティアンで。
「行こう」
サリカの答えをどう受け止めたのか。ジェリオは無言で椅子越しに彼女の身体を抱きしめる。髪に下りてくる口付けに酔いそうになりながらも、彼女はゆるりと立ち上がった。そうと決まれば、すぐに動かねばならない。愚図愚図していては、ミアルシァの手に落ちてしまう。
死は恐ろしくはないが、自身のせいで国が滅びることだけは避けたかった。
歴史に愚帝として名を残すのは、辛い。
輝ける『アグネイヤ』の名を、汚したくはなかった。
◆
厩でサリカとジェリオ、二人の馬を用意しているリナレスの元に、そっと近寄る人影があった。振り返らずとも分かる。
「エーディト」
名を呼べは
「あー、気付かれていましたか」
相変わらず女装をしているであろう細工師の弟子は、けらけらと笑った。その声を背中で聞き流しながら、リナレスは黙々と作業に打ち込む。こんなところで油を売らずに、さっさと師匠ともどもどこかへ逃げろと、心の内で叫んではいたが。あえて口にはしなかった。する必要もない。彼ら師弟はとっくに逃げる算段を整えているであろうから。
と、すれば。エーディトは馬を取りに来たのだろう。ここから徒歩で逃走するには無理がある。アシャンティは、街道からも外れており、交通の便は至極悪い土地だ。交易街道に出るまでに、徒歩ではどれほどの時間を要するだろうか――考えた彼らは、厩へと足を運んだのだろう。
「この二頭以外なら、好きな馬を使っていい」
言って振り向いたリナレス、その顔は瞬く間に驚愕に凍りついた。彼の目の前に佇んでいたのは、エーディトではなくアグネイヤ四世だったのだ。しかも、無骨な男装ではない。華やかな衣裳に身を包み、丹念に化粧を施した貴婦人としてのアグネイヤ四世である。
「へ、陛下っ?」
リナレスはそれこそ、腰を抜かさんばかりに驚き、後ずさった。これほど女性らしい皇帝を見たのは、久方ぶりである。まだ、彼女がクラウディア同様、衣裳を纏っていた時分以来だろうか。
漂う薫衣草の香りに酔いそうになりながら、彼は激しく瞬きを繰り返した。
「いやですねえ、そう驚かないでくださいよ」
腰に手を当てて上体を反らすアグネイヤ四世。その声は、どう聞いてもエーディトのものだった。
「まあ、わたしが気合い入れて女装したら、こんなもんですけどね。髭もちゃんと剃りましたし、陛下の好きな香水も拝借しましたし、衣裳部屋からこっそり服も借りていますからね。って、なに興奮しているんですか、若様?」
「な、な、な……」
もう、それしか言いようがない。
あのちんけな女装は、偽りの姿だったというのか。いま、目の前に存在するエーディトは、まごうかたなき美少女であった。化粧で化けたと言われればそれまでだが、亜麻色のはずの髪も黒く染められている。青灰色の双眸を流石に変色させることは不可能だろうが、遠目に見れば――否、近くから見たとしても、瞳の色を確認しなければ、アグネイヤ四世に瓜二つ、といっても過言はないだろう。
「若様、陛下の身代わりとして、ここで時間を稼ぐつもりだったのでしょう? そんな格好いいことさせませんよ? 女装ならば、エッダにお任せ。ほぼ完璧に、陛下を演じて見せますよ」
ふふふーんと、鼻を鳴らすエーディト。リナレスは全身の力を失い、その場にへたり込んだ。
「とりあえず、仮面でもつけておきますかね。あとは、部屋を暗くしておいて。目の色さえ見られなければ、ばっちりですし」
既にエーディトは、やる気満々である。彼の大事な師匠はどうしたのだ、と力なく問えば、
「あ、もうとっくに逃げちゃいました」
てへ、と、彼は舌を出す。どこまでもちゃっかりとした師弟である。
「あー、でもでも。わたし、待つって好きじゃないんですよね。どちらかというと攻めていく方? なので、こっちから乗り込んでみましょうか、紫芳宮に?」
『アグネイヤ』の口元が、僅かに歪む。息遣いすら聞こえそうなほど顔を近づけられ、リナレスの心臓は破裂寸前であった。これは男だ、偽物だと必死で己に言い聞かせるも、理性は納得するが感情は素直に従おうとはしない。
「とはいえ、多勢に無勢、どうしたもんですかねえ。紫芳宮内でお味方はどれくらいなんです? 幾らわたしでも、そう沢山の敵を相手に立ち回れるほど器用ではないですし。ああ、勿論、皇太后陛下を救出するとか、そんな芸当も無理です。自分の身を守るので精一杯ですしねえ。ジェルファ閣下に迫られたりしたら、逃げる自信もないですし。彼も美形ですからねえ、つい、ふらっとよろめいちゃったりして……あ、逆によろめかせてみましょうか、あの坊ちゃんを」
含み笑いを漏らしたり、身をくねらせたり、考え込んだり。忙しいことこの上ない様子で、エーディトは一人熱弁を振るう。リナレスはその場にへたりこんだまま、緩く頭を振った。
もう、どうにでもしてくれ。
そんな気分である。
ことのあらましを話し終えたリナレスは、そう言葉を結んだ。
ジェルファとその生母アイリアナの画策によって、宮廷は既にミアルシァに押さえられていること。重臣は、ほぼミアルシァに寝返っている。現在のところ、宰相エルハルトだけが皇太后と皇帝に忠誠を尽くしているが。下手をすれば、彼の命も危ない、とリナレスは言う。
「幸いなことに、皇太后陛下はご無事です。陛下は、クラウディア姫に対する牽制の意味でも重要な人質となり得ましょう」
フィラティノアが軍を動かしたとき、ミアルシァはリディアを盾にするつもりだ。サリカは膝の上で拳を固める。母后が人質となれば、サリカも下手な動きはできない。
「正式な通達は、追ってだされることでしょうが……」
サリカに目を向けて、リナレスは続ける。
「ミアルシァの要求は、皇帝アグネイヤ四世の退位です」
それは事実上、神聖帝国の崩壊でもある。ミアルシァは神聖帝国を認めない。国土全てをアヤルカスの名称で統一するつもりだ。そして、その国をすべてミアルシァの属領とする。もしくは、ミアルシァ国王の二重統治にするつもりではないか。退位を余儀なくされたアグネイヤ四世は、幽閉、もしくは配流。時を置かずして暗殺されるだろう。あるいは、既に刺客が放たれているのかもしれない。
「僕が、退位を断れば?」
「皇太后陛下及び、巫女姫の御命を頂くと」
逃げられぬ状況に追い詰め、自ら玉座を降りるように仕向ける気か、叔父は。優しげな美貌を持つ叔父の面影を心に描き、サリカは緩くかぶりを振った。あの叔父が、このように恐ろしげな陰謀に加担するなど。信じられない。
「現在、皇太后陛下は紫芳宮の一室に幽閉されていらっしゃいます。宰相殿も、おそらく」
「リナレスは、どうやってここまで来られたんだ? お前も、危なかったのだろう?」
「――陛下。私の兄の任務をお忘れですか? それに、私の職務も」
リナレスは、にこりと笑う。彼も彼の兄も、密偵を務めているのだ。必要な情報を探り出し、逃亡することなど朝飯前だろう。そのことに思い至り、サリカは頷いた。
そんな二人の会話を、少し離れたところからジェリオが見つめていた。彼は背を壁に預け、腕を組んだまま苦虫を噛み潰したような顔をしている。どうも、面白くないらしい。リナレスはサリカと同じ卓にはつかぬものの、そこは幼馴染、ジェリオとはまた異なる親密度合いで彼女と語っているのだ。リナレスもその部分に優越感を覚えているらしい。時折ちらりとジェリオを見ては、口元を歪める。ジェリオは無視してはいるが、内心は面白くないだろう。
(全く)
国の一大事であるというのに、この二人は。
サリカは、悉く私情をむき出しにする二人の青年を見比べて、深く肩を落とす。
帝位が惜しいわけではない。けれども、神聖帝国を――二百年の時を経て、漸く復活させた神聖帝国を、一年と経たぬうちに滅ぼすわけにはいかぬ。これでジェルファが神聖皇帝を継ぐのであればよい。しかし、彼とその背後にあるミアルシァは、神聖帝国そのものを潰すつもりなのだ。当然、視野にはアグネイヤ四世の退位のほかに、巫女姫の処刑も含まれているのだろう。サリカは退位で済むが、巫女姫であるイリア、彼女の命の保証はない。
こういうときにシェラが彼女の傍にいないことが悔やまれる。よもや、シェリルは実はミアルシァの密偵で、シェラを巫女姫から引き離すために遣わされたのではないか。どころか、あの御者でさえミアルシァの手のもので、シェリルと口裏を合わせてサリカを誑かしたのではないか。考えれば考えるほど、誰もかれもが疑わしく思えてしまう。
だが。シェリルのあの必死の訴えは、芝居とは思えなかった。迫真の演技と言われればそれまでだが、それでも、彼女の清冽な瞳を疑いたくはなかった。
「イリアは? イリアは、無事なのか?」
シェラ不在の今、彼女の元にあるのは、アンディルエの巫女たちのみである。巫女に武術の心得があるとは思えぬが、誰が彼女を守っているのだろう。
「そちらはご安心を。紫芳宮を離れる際に、巫女姫は先に落ち延びられましたから」
行く先は、いまだ旅の一座を続けている老婆のもとだ、とリナレスが付け加えた。巫女姫の身代わりとして、巫女がひとり神殿に残っているが、彼女も時が来れば脱出を図るという。
「あとは、陛下だけです」
リナレスは、今すぐにでも離宮を離れるべきだと主張するが。果たしてそれで良いのだろうか。直接会って話し合えば、ジェルファも母后を解放してくれるかもしれない。
「それは……甘すぎます、陛下」
サリカの申し出を、リナレスは即刻却下した。なぜに、と訝る彼女に、リナレスは言葉を渋る。その視線が忙しなく動き、強く引き結んだ唇が幽かに震えている。何か隠し事をしているときの癖だ。
「リナレス?」
サリカが促すと、彼は観念したとばかりに視線を上げた。
「ジェルファ閣下に、お会いになられてはなりません」
「なぜ?」
「――理由は、申し上げられません。ともかく、会われれば後悔されます。ですから」
「リナレスも知っているだろう? 叔父上は……ジェルファは優しい人だ。今回の件も、彼の名で全てが動いているようだが、彼は利用されているだけじゃないのか? だから、……」
「今度ばかりは、その坊ちゃんに賛成だな、俺も」
サリカの言葉を途中で遮り、ジェリオがこちらに歩み寄って来た。彼はサリカの背後に立ち、彼女の身体越しにリナレスを見つめる。
「つまりは、あれだろ? そのジェルファとやらは、皇女さんに惚れている。惚れて、モノにしたいと思っている……そういうことだろう? 坊ちゃん?」
「なっ?」
ジェリオの指摘に、サリカは瞠目する。そんな馬鹿な、と。リナレスに同意を求めたが。リナレスは静かに首を振った。
「残念ながら、その男の言う通りです。陛下」
叔父でもあり従兄でもあるアヤルカス公爵ジェルファ。彼は幼いころから、サリカに邪な思いを抱いていたのだと。リナレスは静かに告げた。
「そればかりではございません。陛下、今ですから申し上げますが……」
続くリナレスの告白に、サリカは言葉を失った。リナレスが苦渋の表情で漏らした言葉。それは。
ジェルファの真の父親は、ガルダイア三世。双子の父である、と。
「おそれながら、ジェルファ閣下は、陛下の実の兄上に当たります。そして、アヤルカスの正当なる第一帝位継承者でもあるのです」
二重の衝撃が、サリカを襲った。
今まで叔父だとばかり思っていた、ジェルファ。彼が実は、異母兄であったとは。母方の系譜から見れば、従兄であることには変わりはない。だが、父方として見れば。サリカは、マリサは、彼を叔父ではなく兄と呼ばねばならないのだ。
ガルダイア三世の長子である『兄』こそが、実は皇帝となるべき存在である。
だとすれば何故、そのことを公にはしなかったのか。理由は至極当たり前のことながら、父と伯母は不義の関係であったからだ。伯母は、祖父の後室として輿入れをしてきた身。父とは義理とはいえ親子に当たる。何を考えて、父は、義理の母と関係を持ってしまったのか。
「王宮内の不義は、ままあることです」
リナレスは冷静だった。一度覚悟を決めてしまえば、怖いものなどないのだろう。彼は淡々と事実を告げていく。
「お二人の間にどのような感情があったのか。わかりません。しいて言えば、老人ともいえる相手への輿入れを、アイリアナ様が嘆かれていた。それを歳の近いガルダイア陛下が慰められて……ということでしょうか。互いに世間一般のような愛情があった、とは思えませんが。ジェルファ様は、戸籍上ガルダイア三世陛下の弟とされたわけです」
サリカは、頷いた。頷くしかなかった。今は、事実を受け止めるしかない。
だが、ジェルファが父帝ガルダイアの長男であったとして。戸籍上それを認めていないのであれば、彼の帝位継承の順位はサリカに劣る。継承権を強制的に放棄させられた『クラウディア』を除けば、依然としてサリカが一位。彼女が即位をした今は、彼が継承権一位となっていた。
それよりも。幼いころから、ジェルファがサリカに懸想していたとは。まるで気づかなかった。病弱で狩りに出ることも剣技を嗜むこともなく、日がな一日読書に明け暮れる彼の元に、話し相手として出向いたことは何度かある。ジェルファを
――陰気臭いから、嫌い。
そう言ってはばからなかったマリサを置いて、一人で彼の部屋に足を向けることが多かったが。そのときも彼は変わった様子を見せなかった。ただ普通に。嬉しそうにサリカの語る『外の世界』について、耳を傾けていただけなのだ。
「だから、あんたは鈍いんだよ」
背後からジェリオのぼやきが聞こえる。同時に髪に彼の嘆息がかかった。情熱的なそれとは異なるものだが、昨夜の行為を思い出し、サリカは僅かに顔を赤らめる。彼女の僅かな変化に気づいたリナレスは、不愉快そうに口元を歪めた。彼は何か言いたげに視線を揺らしたのだが、それを遮るかのようにジェリオが言葉を続ける。
「男がどんな目であんたを見ているか。もうちっと気にしとけ。なんかこう、強引に押し切ればモノにできそうな、そんな雰囲気漂わせているから狙われるんだ。もっと毅然として、だな」
どこか説教に近くなった言葉に、サリカは苦笑した。
サリカの、触れなば落ちん、といった態度が、相手に妙な期待をさせるのか。あのカルノリアの士官も、ジェルファも。同様に感じていたのか、と。そう考えると自身の不甲斐なさに嫌気がさしてくる。そんなつもりはないのに、相手は――異性は、サリカを容易く落とせると思ってしまうのだろうか。
「お前は、言い方が露骨すぎる」
リナレスが、声を尖らせた。
「陛下はそんな、異性に媚を売るようなことはされていない。相手が悪いんだ」
「はーん? てめぇもこいつの優しさに付け込んでいるクチなのに、よく言うぜ」
舌を出さんばかりのジェリオの態度に、今度はサリカが嘆息する番だった。こと、リナレスに関わると、彼は子供じみた態度をとるようである。年齢はジェリオの方がはるかに上であるのに、なぜ、同じ目線で争うのか。先に捕えられた折の確執のせいかとも思うが。いまひとつ、理由ははっきりしない。
「――ともあれ、話はこれだけです。今は急ぎ、ここからの脱出を図ることが先決ですからね。陛下もすぐに支度なさってください。わたしは、馬の用意をしておきますので」
「リナレス」
礼を失さぬよう、一礼してからその場を辞そうとするリナレスを、サリカが呼びとめる。彼は振り返り、小さく笑った。
「アウレリエ様の元に、暫く潜んでいてください。流石にミアルシァも、あの土地までは手を伸ばそうとはしないでしょう」
帝国の北の果て。フィラティノアより帰還した折に訪れたその地を、心に描く。大叔母・アウレリエならば、サリカの身柄を快く引き受けてくれるだろう。だが、それは同時に大叔母をも危険にさらすことになるのだ。
(僕のせいで)
犠牲者が生まれる。
自分が皇帝である限り、自分に関わる人物に危害が及ぶのだとしたら。ミアルシァの要求通り、退位をした方が良いのではないか。然る後に、再起を図れば。
(いや)
それでは駄目なのだ。自分は、皇帝でなければならない。皇帝が存在する限り、神聖帝国は滅びない。巫女姫と皇帝、一対の柱たるふたりが在れば、帝国は存続する。ミアルシァの思惑通りに事は運ばない。
「不本意だが」
扉に手をかけたリナレスは、そこで立ち止まり。もう一度こちらを見た。こちらを――サリカと、その背後に佇むジェリオを。彼は黒い瞳に暗い焔を揺らめかせ、
「陛下のことを、頼む」
ジェリオに向けてそれだけ告げると、部屋を出ていった。
「リナレス?」
彼は、ともに脱出をしないのか。サリカをジェリオに任せるとは、そういうことである。リナレスは、紫芳宮へと取って返し、母后及び宰相・エルハルトとともに、来るべき日に備えて準備を整えるつもりなのかもしれない。彼女は、ふとそう思った。
「――もしも、行くところがない、ってんなら」
不意に。ジェリオの声が耳元で聞こえた。耳朶を打つ息に、知らず身体が震える。
「ユリシエルに行くか?」
俺の故郷に。
そこで、彼は自身の過去を探すという。
「ユリシエル」
北の都。カルノリアの首都。ソフィア姫の、シェリルの、故郷でもある街。
サリカは、視線を窓の外に向ける。そこに、足を向けるのも良いかもしれない。国を追われた皇帝が逃げ込む場所は、古より北方と決まっている。かのアグネイヤ一世も、敵の目をくらますために、幼少期はカルノリアで過ごしていた。カルノリアの、タティアンで。
「行こう」
サリカの答えをどう受け止めたのか。ジェリオは無言で椅子越しに彼女の身体を抱きしめる。髪に下りてくる口付けに酔いそうになりながらも、彼女はゆるりと立ち上がった。そうと決まれば、すぐに動かねばならない。愚図愚図していては、ミアルシァの手に落ちてしまう。
死は恐ろしくはないが、自身のせいで国が滅びることだけは避けたかった。
歴史に愚帝として名を残すのは、辛い。
輝ける『アグネイヤ』の名を、汚したくはなかった。
◆
厩でサリカとジェリオ、二人の馬を用意しているリナレスの元に、そっと近寄る人影があった。振り返らずとも分かる。
「エーディト」
名を呼べは
「あー、気付かれていましたか」
相変わらず女装をしているであろう細工師の弟子は、けらけらと笑った。その声を背中で聞き流しながら、リナレスは黙々と作業に打ち込む。こんなところで油を売らずに、さっさと師匠ともどもどこかへ逃げろと、心の内で叫んではいたが。あえて口にはしなかった。する必要もない。彼ら師弟はとっくに逃げる算段を整えているであろうから。
と、すれば。エーディトは馬を取りに来たのだろう。ここから徒歩で逃走するには無理がある。アシャンティは、街道からも外れており、交通の便は至極悪い土地だ。交易街道に出るまでに、徒歩ではどれほどの時間を要するだろうか――考えた彼らは、厩へと足を運んだのだろう。
「この二頭以外なら、好きな馬を使っていい」
言って振り向いたリナレス、その顔は瞬く間に驚愕に凍りついた。彼の目の前に佇んでいたのは、エーディトではなくアグネイヤ四世だったのだ。しかも、無骨な男装ではない。華やかな衣裳に身を包み、丹念に化粧を施した貴婦人としてのアグネイヤ四世である。
「へ、陛下っ?」
リナレスはそれこそ、腰を抜かさんばかりに驚き、後ずさった。これほど女性らしい皇帝を見たのは、久方ぶりである。まだ、彼女がクラウディア同様、衣裳を纏っていた時分以来だろうか。
漂う薫衣草の香りに酔いそうになりながら、彼は激しく瞬きを繰り返した。
「いやですねえ、そう驚かないでくださいよ」
腰に手を当てて上体を反らすアグネイヤ四世。その声は、どう聞いてもエーディトのものだった。
「まあ、わたしが気合い入れて女装したら、こんなもんですけどね。髭もちゃんと剃りましたし、陛下の好きな香水も拝借しましたし、衣裳部屋からこっそり服も借りていますからね。って、なに興奮しているんですか、若様?」
「な、な、な……」
もう、それしか言いようがない。
あのちんけな女装は、偽りの姿だったというのか。いま、目の前に存在するエーディトは、まごうかたなき美少女であった。化粧で化けたと言われればそれまでだが、亜麻色のはずの髪も黒く染められている。青灰色の双眸を流石に変色させることは不可能だろうが、遠目に見れば――否、近くから見たとしても、瞳の色を確認しなければ、アグネイヤ四世に瓜二つ、といっても過言はないだろう。
「若様、陛下の身代わりとして、ここで時間を稼ぐつもりだったのでしょう? そんな格好いいことさせませんよ? 女装ならば、エッダにお任せ。ほぼ完璧に、陛下を演じて見せますよ」
ふふふーんと、鼻を鳴らすエーディト。リナレスは全身の力を失い、その場にへたり込んだ。
「とりあえず、仮面でもつけておきますかね。あとは、部屋を暗くしておいて。目の色さえ見られなければ、ばっちりですし」
既にエーディトは、やる気満々である。彼の大事な師匠はどうしたのだ、と力なく問えば、
「あ、もうとっくに逃げちゃいました」
てへ、と、彼は舌を出す。どこまでもちゃっかりとした師弟である。
「あー、でもでも。わたし、待つって好きじゃないんですよね。どちらかというと攻めていく方? なので、こっちから乗り込んでみましょうか、紫芳宮に?」
『アグネイヤ』の口元が、僅かに歪む。息遣いすら聞こえそうなほど顔を近づけられ、リナレスの心臓は破裂寸前であった。これは男だ、偽物だと必死で己に言い聞かせるも、理性は納得するが感情は素直に従おうとはしない。
「とはいえ、多勢に無勢、どうしたもんですかねえ。紫芳宮内でお味方はどれくらいなんです? 幾らわたしでも、そう沢山の敵を相手に立ち回れるほど器用ではないですし。ああ、勿論、皇太后陛下を救出するとか、そんな芸当も無理です。自分の身を守るので精一杯ですしねえ。ジェルファ閣下に迫られたりしたら、逃げる自信もないですし。彼も美形ですからねえ、つい、ふらっとよろめいちゃったりして……あ、逆によろめかせてみましょうか、あの坊ちゃんを」
含み笑いを漏らしたり、身をくねらせたり、考え込んだり。忙しいことこの上ない様子で、エーディトは一人熱弁を振るう。リナレスはその場にへたりこんだまま、緩く頭を振った。
もう、どうにでもしてくれ。
そんな気分である。
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