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クマちゃんのホームシック
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◇◇◇◇◇
「そろそろ、がんもがうちに来て1年になるんやでなぁ~!」
俺の頼んだ夜定食を、座敷まで
運んで来てくれたオカンが、しみじみと
言うたから、それを聞いていた美花と
麻由美が、日にちを決めて
皆でお祝いしようと言うて
楽しそうに盛り上がっていた。
「麻由美ちゃんのお腹も、だいぶ大きくなったよなぁ~」
美花が、麻由美のお腹をそっと触って
元気な子が、生まれますようにと笑って、
お腹に向かって、手を合わせていた。
がんもも、麻由美の横に座って
大きくなったお腹に、少しスリンっと
頭のてっぺんを擦り寄せてから
丸くなって、喉をグルグルと鳴らして
寝る体制に入っていた。
「がんももほんま大きくなったなぁ~♪」
拓海がスマホを出して、
がんもの子猫の時の画像を俺に
見せながら、ジョッキに残っていた
ビールをグィッと飲み干して、おかわりを
自分で注ぎにカウンターへ行くと、また
今の画像を比奈ちゃんに見せて笑っていた。
「そう言えば、クマちゃんとマスター。今週になってから
店に来てないみたいやけど? なんかあったんやろか?」
「あっ! 知らんかったん? マスターって、一昨日な
入院したらしいねん。風邪をこじらせて、肺炎を
起こしてたらしい。独り身やから、無理してたみたいや」
麻由美がマスターの心配をしていると
拓海を座敷まで引っ張って来た比奈ちゃんが
マスターが、入院したことを教えてくれた。
「えっ? そしたらクマちゃんは? どうしてるん?」
「クマちゃんの事は、若先生が預かってるらしいわ。
マスターの具合が、悪くなった時に居合わせたらしくて。
そのまま連れて帰って、面倒見てくれてるらしいねん。
うちらも今朝、『黒猫』の常連さんから詳しい話を
聞いたばっかりなんよ!」
麻由美と美花が、猫のクマちゃんの事を
心配してると、比奈ちゃんは大丈夫やと笑って
クマちゃんが、若先生の所にいることも教えてくれた。
俺らに事情を話した後で
比奈ちゃんは、大きな溜め息を吐いていた。
溜め息の理由は、そのクマちゃんが
夜になると、鳴いて何かを訴えるらしくて
若先生が、オカンのとこに相談に来てたらしい。
「もうすぐ、若先生がクマちゃんを連れてくるはずやわ」
比奈ちゃんは、絵美里ちゃんと一緒に
座敷に座って、夜定食を食べながら話を続けた。
「クマちゃんな、急に狭いとこに入れられてな、しかも
大嫌いな動物病院やん。きっと、家に帰りたいって
鳴いてるんやろなぁ~って、そやからオカンが店に
連れて来てやってって、若先生に頼んだんよ」
比奈ちゃんは、事の次第を話し終えると
残りの夜定食をゆっくり絵美里ちゃんと食べていた。
夜定食を食べ終わった絵美里ちゃんは、
お腹が一杯になって満足した様子で
比奈ちゃんの横に座ったままで
コクリコクリと船を漕ぎだしていた。
しばらくして
店の戸が勢い良く開いて
帰って来たのは、クマちゃんを連れた若先生やった。
「こんばんは~♪ クマちゃんを連れて来ました~!」
若先生のフルネームは、若林一郎。
年齢は、俺の3つ上やから34歳やったかな?
『オカンの店』の近所で開業している
『若林動物病院』の院長で『黒猫』と
この店の常連客なんやわ。
「ニャーン! ミャーン!」
クマちゃんの入ったキャリーの前で、
がんもが、早くクマちゃんを出せと鳴いて催促している。
「ごめん、ごめん。すぐに出してあげるからね~!」
若先生がクマちゃんをキャリーから
出したら、2匹はすぐに座敷へ行って
座布団の上でがんもがクマちゃんの毛繕いを始めた。
「クマちゃんとがんもちゃんは、ほんま仲良しやね~。
見てて癒やされるわ~!」
カウンターに座って呑んでいた
美花のオカンの、菜々美ちゃんが
2匹を見て、目を細めて笑っていた。
俺は、マスターの具合が気になったから
若先生に聞いたら、横におったオカンが
若先生の代わりに答えてくれた。
「最低でも2週間は入院やて、昨日検査して主治医に
そない言われたみたいやで。他の検査も色々ついでに
するらしいしなぁ~、そやからクマちゃんをうちで
預かろかなぁ~って、比奈とさっき話しててんけどなぁ…」
「ほんまに良いんですか? 僕は、助かります。マスターも
安心されるでしょうし、クマちゃんもがんもちゃんと
一緒なら、心細くないでしょうしね」
俺にマスターの様子を話しながら、
オカンがクマちゃんを預かる事を
若先生に相談すると、若先生は
2つ返事で了承してから、嬉しそうに
がんもとクマちゃんを見つめていた。
「オカン! クマちゃんとがんもの画像撮ってマスターに
送ったったら? きっと、マスター安心するし元気出るで!」
拓海がオカンに言ったら、オカンも
ウンウンと頷いて、スマホを取り出していた。
「そうやでな! 今の2匹の画像を送ったろう♪
絶対に元気出るはずや!」
オカンはすぐに、座敷の座布団で
2匹で仲良く丸くなってるがんもと
クマちゃんの画像を撮ってマスターに
LINEでその画像を送ってやっていた。
すると、
すぐにマスターからオカンに
お礼のスタンプが、届いていた。
「ほんま…。早く良くなって退院出来たらええねんけど。
病院ってなあ、長くおると気持ちが滅入るから心配やわ」
オカンは、マスターからの
LINEを見て、溜め息を吐いていた。
「がんもの一周年のお祝いは? マスターが退院してからにする?」
オカンに麻由美が聞くと、
オカンもうんうんと頷いていた。
座敷の座布団で、2匹でギュッとひっついて
丸くなって寝ている、がんもとクマちゃんの
様子を眺めて、美花も麻由美もうっとりと
癒やされているようだった。
「可愛いなぁ~♪ たまらんなぁ~♡」
「ええよなぁ~♪ 猫ってほんま可愛いよなぁ~♪
うちの茶々丸も、可愛いもんなぁ~♡(笑)」
麻由美は、茶々丸の画像を
オカンに見せて、うちの猫の自慢をしていた。
しばらくして若先生は、オカンに
よろしくお願いしますと言って帰って行った。
「若先生がついててくれるから、安心して預かれるな!」
俺がそう言って笑ったら、比奈ちゃんが
渋い顔して、首を横に振っていた。
「それでもやっぱり責任重大やで。マスターにとって
クマちゃんは、大事な家族やからなぁ…」
「大丈夫やって! 俺も配達が終わったら、早めに
店に来るし、和美ちゃんにも声掛けとくから。皆で
クマちゃんの面倒見ようや♪ がんもも、嬉しそうやしな!」
俺がそう言って、クマちゃんと
がんもの寝てる顔を見て笑ったら、
美花も宗ちゃんも、仕事が終わったら
すぐに自分達も来るからと賛同してくれた。
「有難いなぁ~。きっとマスターも喜んでくれるわ!」
皆で協力しようということになったので、
オカンも、凄く喜んでくれていた。
◇◇◇
それから1週間後、旅に出ていたオトンも
マスターが入院したとオカンから聞いて、
旅先から飛んで帰って来て、絵美里ちゃんの
子守りをめっちゃ嬉しそうに手伝っていた。
配達を終えて、俺ががんもとクマちゃんの
様子を見ながら、オカンにマスターの
経過を聞くと、オカンはニコニコ笑いながら答えていた。
「昨日な、お見舞いに行って聞いて来てんけど、多分
来週の金曜日位には、退院出来るって言われてるらしい。
他の検査も、特に異常なかったらしいわ!」
「ほな、退院して落ち着いたら、がんものお祝いと
マスターの快気祝いを一緒にやろか?」
オカンと俺が、店の中がいっぱいに
なるかもと、笑いながら話していると
俺の後ろで、いきなり亞夜子ママの声がした。
「祝い事で騒ぐんやったら。きっと、大人数になるんちゃう?
ここじゃ入りきれへんやろし、うちの店でやったら?(笑)」
俺がちょっと驚いて飛び上がったら、
すぐにママに頭を叩かれた。
「お祝いやし、皆に声かけたいしなぁ~! 20人以上に
なるなら『ローズマリー』でさせてもらおうかな?」
俺はオカンにがんもの一周年と、
マスターの快気祝いに参加するメンバーの
人数の確認を任されて、20人以上になるなら
『ローズマリー』でやるということで、話は纏まった。
その夜、麻由美と美花と宗ちゃんと
拓海と桜絵ちゃんと健ちゃんと、座敷に
集まって色々相談していたら、がんもが
座敷に来て鳴き出した。
「どうしたん? あれ? クマちゃんは? 」
さっきまで、がんもと一緒に居たはずの
クマちゃんが、見当たらない事に美花が
気付いて、キョロキョロしていた。
がんもが鳴いて裏口の方に行くから
追いかけて見に行くと、クマちゃんが
何か具合悪そうに、ジッとしてたから
俺は思わず大声で叫んでしまった。
「大変や! クマちゃんが! なんかおかしい。具合悪そうや!」
すぐに、オカンも比奈ちゃんも
飛んできて、そのまますぐに
若先生の病院へクマちゃんを連れて走った。
病院へ行くと、すぐに若先生が
クマちゃんを診察台へ連れて行って
診察してくれていた。
「念の為にした検査の結果なんですが、特に何かの
感染症の病気とかではありませんでした。僕の経験で
言わせて頂くと、これは多分…繊細な猫ちゃん特有の
ストレスからの軽いうつ病やと思います」
若先生は、診察の結果を
オカンと俺に詳しく説明してくれた。
「解りやすく言うとホームシックなんです。別に
世話の仕方に問題があったという訳ではなくてね。
クマちゃんも、だいぶ頑張ってたんやと思います。それでも
やっぱりマスターに会えない、家に帰れない。という事が
少しずつストレスになっていたんでしょうね」
僕も少し配慮が足りませんでしたと
頭を下げて、若先生は謝っていた。
「そや、マスターの匂いのするもんを取ってきたら
どうなんかな? 少しは、安心するかもしれへんで?」
店に戻りながら俺が言ったら、
オカンもそうかもしれへんと頷いて
一緒にマスターのマンションへ寄って
マスターの使っていたひざ掛けを持って帰る事にした。
もちろん、その事はLINEでオカンが
事前にマスターに了解を貰っていた。
店の戸を開けて帰ると、皆は
クマちゃんが心配で帰らずに待っていた。
がんもも、ずっと戸の前で帰りを待っていたらしい。
「おかえり~! どうやったん? クマちゃん大丈夫なん?」
美花がキャリーからクマちゃんを
出してやって、座布団にひざ掛けを
敷いて寝かせてやってくれた。
「もう少しやからな! 頑張ってマスターの事をがんもと
一緒に待ってよなぁ~♪ クマちゃん♡」
オカンはクマちゃんの頭を優しく
撫でながら、目に涙を浮かべていた。
がんもも、クマちゃんの頭を少し舐めて
毛繕いしてやってから、横で丸くなっていた。
翌朝になって、店に行くとクマちゃんは、
元気を取り戻して、がんもと美味しそうに
一緒にご飯を平らげていた。
その3日後に、マスターの仮退院が決まって
オカンの言う通り、金曜日には退院出来る事になった。
金曜日の朝、俺はさっさと配達を済ませて、
病院までマスターを迎えに行った。
「こうちゃん、わざわざ迎えに来てくれてありがとう♪」
「俺のほんまのオカンも、いつも『黒猫』で世話になってるし、
クマちゃんも、首を長くしてマスターの事待ってるしな。
それに、配達が今日は少なかったからええねん。(笑)」
申し訳無さそうに、謝るマスターの顔を見て
俺はニィっと笑って、荷物を受け取って
車に積んで、マスターのマンションへ向かった。
マンションに着いて部屋へ入ると、
すぐにクマちゃんがマスターの所へ
走って飛んで来て、出迎えていた。
「よしよし、お利口さんやったなぁ~! クマ…。
寂しい思いさせて悪かったなぁ~…」
そう言って、クマちゃんを抱き上げて
撫でてやってるマスターの瞳からは、
涙がこぼれ落ちていた。
「退院おめでとうございます♪」
その様子を見ていたオカンも
目頭を押さえながら、マスターに
快気祝いやと言って、新しいひざ掛けを渡した。
「ありがとうございます。無理言ってクマの事を
見てもらっていたのに、こんなもんまで頂いて、部屋も
こんなに綺麗にしてもろうて、ほんまに助かりました。
陽子さん、こうちゃん、ほんまにありがとう」
クマちゃんをギュっと抱いて瞳を潤ませて、
マスターは、オカンと俺にお礼を言っていた。
「退院したからって、すぐに無理はせんといて下さいね。
少し、お家で身体を慣らしてから、店開けて下さいよ!
クマちゃんのためにもね!」
オカンはマスターに、念を押すようにお願いしていた。
「あと、来週の金曜日にがんもの一周年のお祝いと
マスターの快気祝いを『ローズマリー』でやるんで
絶対にクマちゃんと一緒に来て下さいね♡」
そうオカンが言うと、マスターは
凄く驚いていたけど、すぐに満面の笑顔で
絶対出席しますと、約束してくれていた。
「そろそろ、がんもがうちに来て1年になるんやでなぁ~!」
俺の頼んだ夜定食を、座敷まで
運んで来てくれたオカンが、しみじみと
言うたから、それを聞いていた美花と
麻由美が、日にちを決めて
皆でお祝いしようと言うて
楽しそうに盛り上がっていた。
「麻由美ちゃんのお腹も、だいぶ大きくなったよなぁ~」
美花が、麻由美のお腹をそっと触って
元気な子が、生まれますようにと笑って、
お腹に向かって、手を合わせていた。
がんもも、麻由美の横に座って
大きくなったお腹に、少しスリンっと
頭のてっぺんを擦り寄せてから
丸くなって、喉をグルグルと鳴らして
寝る体制に入っていた。
「がんももほんま大きくなったなぁ~♪」
拓海がスマホを出して、
がんもの子猫の時の画像を俺に
見せながら、ジョッキに残っていた
ビールをグィッと飲み干して、おかわりを
自分で注ぎにカウンターへ行くと、また
今の画像を比奈ちゃんに見せて笑っていた。
「そう言えば、クマちゃんとマスター。今週になってから
店に来てないみたいやけど? なんかあったんやろか?」
「あっ! 知らんかったん? マスターって、一昨日な
入院したらしいねん。風邪をこじらせて、肺炎を
起こしてたらしい。独り身やから、無理してたみたいや」
麻由美がマスターの心配をしていると
拓海を座敷まで引っ張って来た比奈ちゃんが
マスターが、入院したことを教えてくれた。
「えっ? そしたらクマちゃんは? どうしてるん?」
「クマちゃんの事は、若先生が預かってるらしいわ。
マスターの具合が、悪くなった時に居合わせたらしくて。
そのまま連れて帰って、面倒見てくれてるらしいねん。
うちらも今朝、『黒猫』の常連さんから詳しい話を
聞いたばっかりなんよ!」
麻由美と美花が、猫のクマちゃんの事を
心配してると、比奈ちゃんは大丈夫やと笑って
クマちゃんが、若先生の所にいることも教えてくれた。
俺らに事情を話した後で
比奈ちゃんは、大きな溜め息を吐いていた。
溜め息の理由は、そのクマちゃんが
夜になると、鳴いて何かを訴えるらしくて
若先生が、オカンのとこに相談に来てたらしい。
「もうすぐ、若先生がクマちゃんを連れてくるはずやわ」
比奈ちゃんは、絵美里ちゃんと一緒に
座敷に座って、夜定食を食べながら話を続けた。
「クマちゃんな、急に狭いとこに入れられてな、しかも
大嫌いな動物病院やん。きっと、家に帰りたいって
鳴いてるんやろなぁ~って、そやからオカンが店に
連れて来てやってって、若先生に頼んだんよ」
比奈ちゃんは、事の次第を話し終えると
残りの夜定食をゆっくり絵美里ちゃんと食べていた。
夜定食を食べ終わった絵美里ちゃんは、
お腹が一杯になって満足した様子で
比奈ちゃんの横に座ったままで
コクリコクリと船を漕ぎだしていた。
しばらくして
店の戸が勢い良く開いて
帰って来たのは、クマちゃんを連れた若先生やった。
「こんばんは~♪ クマちゃんを連れて来ました~!」
若先生のフルネームは、若林一郎。
年齢は、俺の3つ上やから34歳やったかな?
『オカンの店』の近所で開業している
『若林動物病院』の院長で『黒猫』と
この店の常連客なんやわ。
「ニャーン! ミャーン!」
クマちゃんの入ったキャリーの前で、
がんもが、早くクマちゃんを出せと鳴いて催促している。
「ごめん、ごめん。すぐに出してあげるからね~!」
若先生がクマちゃんをキャリーから
出したら、2匹はすぐに座敷へ行って
座布団の上でがんもがクマちゃんの毛繕いを始めた。
「クマちゃんとがんもちゃんは、ほんま仲良しやね~。
見てて癒やされるわ~!」
カウンターに座って呑んでいた
美花のオカンの、菜々美ちゃんが
2匹を見て、目を細めて笑っていた。
俺は、マスターの具合が気になったから
若先生に聞いたら、横におったオカンが
若先生の代わりに答えてくれた。
「最低でも2週間は入院やて、昨日検査して主治医に
そない言われたみたいやで。他の検査も色々ついでに
するらしいしなぁ~、そやからクマちゃんをうちで
預かろかなぁ~って、比奈とさっき話しててんけどなぁ…」
「ほんまに良いんですか? 僕は、助かります。マスターも
安心されるでしょうし、クマちゃんもがんもちゃんと
一緒なら、心細くないでしょうしね」
俺にマスターの様子を話しながら、
オカンがクマちゃんを預かる事を
若先生に相談すると、若先生は
2つ返事で了承してから、嬉しそうに
がんもとクマちゃんを見つめていた。
「オカン! クマちゃんとがんもの画像撮ってマスターに
送ったったら? きっと、マスター安心するし元気出るで!」
拓海がオカンに言ったら、オカンも
ウンウンと頷いて、スマホを取り出していた。
「そうやでな! 今の2匹の画像を送ったろう♪
絶対に元気出るはずや!」
オカンはすぐに、座敷の座布団で
2匹で仲良く丸くなってるがんもと
クマちゃんの画像を撮ってマスターに
LINEでその画像を送ってやっていた。
すると、
すぐにマスターからオカンに
お礼のスタンプが、届いていた。
「ほんま…。早く良くなって退院出来たらええねんけど。
病院ってなあ、長くおると気持ちが滅入るから心配やわ」
オカンは、マスターからの
LINEを見て、溜め息を吐いていた。
「がんもの一周年のお祝いは? マスターが退院してからにする?」
オカンに麻由美が聞くと、
オカンもうんうんと頷いていた。
座敷の座布団で、2匹でギュッとひっついて
丸くなって寝ている、がんもとクマちゃんの
様子を眺めて、美花も麻由美もうっとりと
癒やされているようだった。
「可愛いなぁ~♪ たまらんなぁ~♡」
「ええよなぁ~♪ 猫ってほんま可愛いよなぁ~♪
うちの茶々丸も、可愛いもんなぁ~♡(笑)」
麻由美は、茶々丸の画像を
オカンに見せて、うちの猫の自慢をしていた。
しばらくして若先生は、オカンに
よろしくお願いしますと言って帰って行った。
「若先生がついててくれるから、安心して預かれるな!」
俺がそう言って笑ったら、比奈ちゃんが
渋い顔して、首を横に振っていた。
「それでもやっぱり責任重大やで。マスターにとって
クマちゃんは、大事な家族やからなぁ…」
「大丈夫やって! 俺も配達が終わったら、早めに
店に来るし、和美ちゃんにも声掛けとくから。皆で
クマちゃんの面倒見ようや♪ がんもも、嬉しそうやしな!」
俺がそう言って、クマちゃんと
がんもの寝てる顔を見て笑ったら、
美花も宗ちゃんも、仕事が終わったら
すぐに自分達も来るからと賛同してくれた。
「有難いなぁ~。きっとマスターも喜んでくれるわ!」
皆で協力しようということになったので、
オカンも、凄く喜んでくれていた。
◇◇◇
それから1週間後、旅に出ていたオトンも
マスターが入院したとオカンから聞いて、
旅先から飛んで帰って来て、絵美里ちゃんの
子守りをめっちゃ嬉しそうに手伝っていた。
配達を終えて、俺ががんもとクマちゃんの
様子を見ながら、オカンにマスターの
経過を聞くと、オカンはニコニコ笑いながら答えていた。
「昨日な、お見舞いに行って聞いて来てんけど、多分
来週の金曜日位には、退院出来るって言われてるらしい。
他の検査も、特に異常なかったらしいわ!」
「ほな、退院して落ち着いたら、がんものお祝いと
マスターの快気祝いを一緒にやろか?」
オカンと俺が、店の中がいっぱいに
なるかもと、笑いながら話していると
俺の後ろで、いきなり亞夜子ママの声がした。
「祝い事で騒ぐんやったら。きっと、大人数になるんちゃう?
ここじゃ入りきれへんやろし、うちの店でやったら?(笑)」
俺がちょっと驚いて飛び上がったら、
すぐにママに頭を叩かれた。
「お祝いやし、皆に声かけたいしなぁ~! 20人以上に
なるなら『ローズマリー』でさせてもらおうかな?」
俺はオカンにがんもの一周年と、
マスターの快気祝いに参加するメンバーの
人数の確認を任されて、20人以上になるなら
『ローズマリー』でやるということで、話は纏まった。
その夜、麻由美と美花と宗ちゃんと
拓海と桜絵ちゃんと健ちゃんと、座敷に
集まって色々相談していたら、がんもが
座敷に来て鳴き出した。
「どうしたん? あれ? クマちゃんは? 」
さっきまで、がんもと一緒に居たはずの
クマちゃんが、見当たらない事に美花が
気付いて、キョロキョロしていた。
がんもが鳴いて裏口の方に行くから
追いかけて見に行くと、クマちゃんが
何か具合悪そうに、ジッとしてたから
俺は思わず大声で叫んでしまった。
「大変や! クマちゃんが! なんかおかしい。具合悪そうや!」
すぐに、オカンも比奈ちゃんも
飛んできて、そのまますぐに
若先生の病院へクマちゃんを連れて走った。
病院へ行くと、すぐに若先生が
クマちゃんを診察台へ連れて行って
診察してくれていた。
「念の為にした検査の結果なんですが、特に何かの
感染症の病気とかではありませんでした。僕の経験で
言わせて頂くと、これは多分…繊細な猫ちゃん特有の
ストレスからの軽いうつ病やと思います」
若先生は、診察の結果を
オカンと俺に詳しく説明してくれた。
「解りやすく言うとホームシックなんです。別に
世話の仕方に問題があったという訳ではなくてね。
クマちゃんも、だいぶ頑張ってたんやと思います。それでも
やっぱりマスターに会えない、家に帰れない。という事が
少しずつストレスになっていたんでしょうね」
僕も少し配慮が足りませんでしたと
頭を下げて、若先生は謝っていた。
「そや、マスターの匂いのするもんを取ってきたら
どうなんかな? 少しは、安心するかもしれへんで?」
店に戻りながら俺が言ったら、
オカンもそうかもしれへんと頷いて
一緒にマスターのマンションへ寄って
マスターの使っていたひざ掛けを持って帰る事にした。
もちろん、その事はLINEでオカンが
事前にマスターに了解を貰っていた。
店の戸を開けて帰ると、皆は
クマちゃんが心配で帰らずに待っていた。
がんもも、ずっと戸の前で帰りを待っていたらしい。
「おかえり~! どうやったん? クマちゃん大丈夫なん?」
美花がキャリーからクマちゃんを
出してやって、座布団にひざ掛けを
敷いて寝かせてやってくれた。
「もう少しやからな! 頑張ってマスターの事をがんもと
一緒に待ってよなぁ~♪ クマちゃん♡」
オカンはクマちゃんの頭を優しく
撫でながら、目に涙を浮かべていた。
がんもも、クマちゃんの頭を少し舐めて
毛繕いしてやってから、横で丸くなっていた。
翌朝になって、店に行くとクマちゃんは、
元気を取り戻して、がんもと美味しそうに
一緒にご飯を平らげていた。
その3日後に、マスターの仮退院が決まって
オカンの言う通り、金曜日には退院出来る事になった。
金曜日の朝、俺はさっさと配達を済ませて、
病院までマスターを迎えに行った。
「こうちゃん、わざわざ迎えに来てくれてありがとう♪」
「俺のほんまのオカンも、いつも『黒猫』で世話になってるし、
クマちゃんも、首を長くしてマスターの事待ってるしな。
それに、配達が今日は少なかったからええねん。(笑)」
申し訳無さそうに、謝るマスターの顔を見て
俺はニィっと笑って、荷物を受け取って
車に積んで、マスターのマンションへ向かった。
マンションに着いて部屋へ入ると、
すぐにクマちゃんがマスターの所へ
走って飛んで来て、出迎えていた。
「よしよし、お利口さんやったなぁ~! クマ…。
寂しい思いさせて悪かったなぁ~…」
そう言って、クマちゃんを抱き上げて
撫でてやってるマスターの瞳からは、
涙がこぼれ落ちていた。
「退院おめでとうございます♪」
その様子を見ていたオカンも
目頭を押さえながら、マスターに
快気祝いやと言って、新しいひざ掛けを渡した。
「ありがとうございます。無理言ってクマの事を
見てもらっていたのに、こんなもんまで頂いて、部屋も
こんなに綺麗にしてもろうて、ほんまに助かりました。
陽子さん、こうちゃん、ほんまにありがとう」
クマちゃんをギュっと抱いて瞳を潤ませて、
マスターは、オカンと俺にお礼を言っていた。
「退院したからって、すぐに無理はせんといて下さいね。
少し、お家で身体を慣らしてから、店開けて下さいよ!
クマちゃんのためにもね!」
オカンはマスターに、念を押すようにお願いしていた。
「あと、来週の金曜日にがんもの一周年のお祝いと
マスターの快気祝いを『ローズマリー』でやるんで
絶対にクマちゃんと一緒に来て下さいね♡」
そうオカンが言うと、マスターは
凄く驚いていたけど、すぐに満面の笑顔で
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