オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

文字の大きさ
10 / 32

交際スタート

しおりを挟む
✡✡✡✡✡✡
  
 彼女との熱いキスを交わしたオレは、後悔よりも男としてこのまま彼女を失いたくないと、心に強く感じていた。

「降参やわ。参りました。もう、綺麗ごとはナシや。マジでオレと付き合う覚悟出来てる? お母さんに反対されるかもしれへんで! それでも、ええか? オレは覚悟決めた。ユイちゃんのこと、他の誰にも渡したくない」
「出来てる。覚悟なんかとっくに出来てるもん。私も誠二さんを他の誰にも渡したくないって思ってる」

 オレは彼女を真剣に見つめながら、お互いの気持ちに揺るぎが無いことを確認していた。

「わかった。これで、決まりや! とりあえず、交際を始めてみよう。ユイちゃんのお母さんにも挨拶に行くわ。これは、遊びじゃないからな。結婚前提の真剣な交際やで? ほんまにええねんな?」
「はい…。嬉しい。でも、なんか緊張する」
「ところでや。ユイちゃんは進学するんか? それとも、就職するつもりなんか?」
「あ。就職か専門学校です。大学に行くつもりは、ありません」

少し冷静さを取り戻したオレは、彼女にこれからの進路についてどうする気持ちでいたのかを聞いてみた。

「オレはな、ユイちゃんには色々と経験してほしいから、結婚を急ぐつもりは無いからな!」
「そうなんですか?  私は早く誠二さんのお嫁さんになりたいのに。なんで?」

 大きな瞳をオレの顔に近づけて、彼女はオレの気持ちに疑問を感じたようで少し膨れっ面をしてみせた。

「オレと付き合いながら、ユイちゃんはユイちゃんのやりたいことをやってほしい。まだまだ、何にでも挑戦したらええんや!」
「なんか、保護者が増えただけのような気がする…」

確かに、どちらかと言うとオレも保護者のような気持ちではあった。彼女の将来を見守っていきたい。そして、いずれは結婚出来れば良い。まずは、彼女には、オレと付き合いつつ、やりたいことを存分にやらせてやりたいとオレは真剣に考えていた。

「あの。それより、お願いがあるんやけど…」
「なんや? どうしたん?」
「えっと…あの。もう1回…」

彼女は、モジモジしながらオレの首に両手を絡めてもう一度熱いキスをして満足そうにニッコリ笑った。

✡✡

 このまま部屋で2人でおると、どうにも理性を保てそうに無かったのでオレは彼女を家まで送っていくと立ち上がって、外出着に着替えて彼女を連れて部屋を出た。相棒には申し訳ないが、ケージに入ってもらってオレの帰りを待ってもらうことにした。

「チビちゃん。大丈夫かな?」
「ほんのちょっとやから、大丈夫やと思うで! ご飯もあげたから寝てると思うわ」

彼女の家は思っていたよりも近くて、オレの家の2つ筋違いの同じ町内にあるマンションやった。

「ほんまにお母さんに会っていくの?」
「うん。早いほうがええからな!」

 部屋の前まで来ると、彼女はオレの後ろに回って少し顔を強張らせて緊張しているようやった。オレは覚悟を決めてインターホンを鳴らした。すると、返事よりも先に玄関のドアが勢い良く開いた。

「ユイ! もう~! めっちゃ心配してんからね! あ、藤田さん? ですよね? ユイがご迷惑をおかけしてしまってほんまにすみませんでした」
「いえ。あの。初めまして、藤田誠二です。ユイさんと良く話し合わせてもらって、真面目にお付き合いさせてもらうことになりました。その、ご挨拶もかねて伺わせて頂きました」
「ほんまに? ええんですか? こんなガキンチョですよ? ユイを傷つけんとこうと思って気を使ってはるんやったら、そんなんやめて下さいね」

彼女の母親が玄関を開けてオレを見て、何度も頭を下げて謝るので、オレも勢いで彼女との交際のことを告げて頭を下げて挨拶をした。すると、一瞬…目を丸くして母親は驚いていたが、オレが彼女を傷つけんとこうと思って気を使って彼女と付き合うことになったんやと勘違いしたようだった。

「そんなんちがうもん! 誠二さんも私のこと、好きって言うてくれてる。真剣やで!」
「本当に良いんですか?」
「今すぐどうこうは、オレも考えていませんが。彼女とユイさんと付き合いながら、将来のことを考えていきたいと思ってます」

オレの話を聞いた彼女の母親は、オレの両手をギュッと握り締めると、彼女のことをお願いしますとその瞳には薄っすらと涙を浮かべていた。

「ママは、反対じゃないの?」
「反対するわけないやん! こんなええ人。今どきおらんもん。ママが再婚したい位やわ」
「いや。あはは。ご承諾、ありがとうございます」

こうして、オレと彼女の交際がスタートした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...