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旅立ち
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なんでこんなことに・・・
醜悪な顔の子どものような緑色のそいつは棍棒を思い切り振りおろしてきた。
棍棒を右手に持ったショートソードで受け止めつつ思い出す。
いい匂いだ、木製のテーブルの上に用意された朝食を食べるため木の椅子に腰かける。「タケル、今日で十六歳ねおめでとう」
「ありがとう母さん」
母も椅子に腰かけ自分ににこやかにお祝いの言葉をかけてくれる、 自分と同じ珍しい黒い髪に黒い瞳の母の目はいつも閉じているかのように細い。
「それじゃあ頂きましょうか」
別段、誕生日だからと言って料理が特別豪華になるわけでもないが、固焼きパンとジャガイモのスープのほかに珍しくベーコンが二切れついていた。
「頂きます!」
両の手を合わせ、食事ができることに感謝するいつもの儀式を済ませ朝食に手を付ける。
「頂きます!」
母もこちらが食べ始めるのとほぼ同時に食事に手を付ける。
「十六歳、立派な成人ね」
「ん?まぁ立派かどうかは別としても、これで成人かと思うとうれしいよ、できればもっと身長が伸びてほしいものだけどね」
成人すれば、一人前と認められるようなものだ、責任も大きくなるが、自分の裁量でいろいろと行動できる。
「あなたのお父さんもそんなに高い方ではなかったから・・・身長は諦めなさい」
母がからかうように言ってくる。
「え?父さんそんなに低かったの」
父は自分が生まれた時からいない、母も滅多に父のことを話さないのでどんな姿だったのかも、今生きているかもわからない。
ただ、父のことを話すとき、遠くを見つめる母の微笑は父のことを深く愛しているのだろうということだけは伝わってくる。
「一六五センチ位だったかな、今のあなたと同じくらいよ。私より十五センチは高かったのよね」
「そうなんだ・・・」
自分ががっかりしていると
「ふふふ、諦めなさいっていうのは冗談よ、両親より背の高くなる子どもなんて沢山いるわよ」
母がこの村に越してきたのは、お腹が大きくなっている時だと聞いたことがある、その時父は一緒におらず、お腹の子、つまり自分と母一人でやって来たらしいことを村長が昔言っていた。
この村の人口は百人にも満たないので、村に来る前に見てきたのかな?
「沢山いる」と言う母の言葉は、どこか確信めいていたため、ふと、そう思ってしまった。
「ごちそうさまでした」
食事を終え、食器の片づけをてつだう。
ふと壁際においてある背負い袋が目に入った。
背負い袋はパンパンに張っており、そこに自分がいつも狩の時に持ち歩いている鞘に入ったショートソードが立て掛けてあった。
何故?不思議に思っていると。
「あなたも十六歳になって成人したのだし、あなたの秘密を話すわね」
え?秘密?
母が笑顔を浮かべつつ自分の頬へと手を伸ばしてきて優しくなでてくれる。
「あなたは勇者なの」
へ?
・・・
・・・・
・・・・・
「これからあなたは魔王を倒すために旅に出ないといけないの」
意味が分からない、今まで勇者だとか魔王だとか聞いたこともない、狩や畑仕事を手伝いつつ今まで生きてきた自分には母が何を言っているのか理解できなかった。
「母さん何を言っているの、勇者って、魔王って何」
「魔王っていううのは人々の敵よ、存在するだけで魔物を生み出し続けるの、そしてそれを倒せるのは勇者だけなのよ」
自分の頬にあてられた母の手を軽く握り母を見つめる。
冗談などではなく本気で言っているようだ。
「あなたには力があるわ、これを持っていきなさい」
頬にあてられていた手が名残惜しそうに離れていくと、懐から透明な六角柱で中に火が灯っている幅一センチ長さ五センチくらいの棒のようなものを出し、自分の掌の上にそっと置いてくれた。。
「これは精霊石というのよ、精神を集中することによって石の中に秘められた力を使うことができるの、勇者であるあなたになら使いこなせるはずよ」
「本気・・・なんだね・・・」
母の優しい微笑の中にある真剣さを感じ取り、あぁ、本気なんだな、本気で自分が勇者だと魔王を倒しに行かなくてはならないのだと理解してしまった。
「安心して母さん、自分が勇者なんて実感はまだないけど、必ず魔王を倒して戻ってくるから」
母の用意していてくれた背負い袋を背負い、ショートソードを腰に下げ、村の端で母に笑顔で挨拶をした。
「いってらっしゃいタケル・・・」
「母さん、行ってきます」
母が両手で優しく包みこんだ自分の右手を名残惜しそうに放し、何かをこらえるような笑顔で送り出してくれた。
少し歩いては振り返り母に手を振る、手を振り返してくれる母が見えなくなるまで繰り返すと、真っすぐに街道の先を見つめ街を目指し歩いて行った。
醜悪な顔の子どものような緑色のそいつは棍棒を思い切り振りおろしてきた。
棍棒を右手に持ったショートソードで受け止めつつ思い出す。
いい匂いだ、木製のテーブルの上に用意された朝食を食べるため木の椅子に腰かける。「タケル、今日で十六歳ねおめでとう」
「ありがとう母さん」
母も椅子に腰かけ自分ににこやかにお祝いの言葉をかけてくれる、 自分と同じ珍しい黒い髪に黒い瞳の母の目はいつも閉じているかのように細い。
「それじゃあ頂きましょうか」
別段、誕生日だからと言って料理が特別豪華になるわけでもないが、固焼きパンとジャガイモのスープのほかに珍しくベーコンが二切れついていた。
「頂きます!」
両の手を合わせ、食事ができることに感謝するいつもの儀式を済ませ朝食に手を付ける。
「頂きます!」
母もこちらが食べ始めるのとほぼ同時に食事に手を付ける。
「十六歳、立派な成人ね」
「ん?まぁ立派かどうかは別としても、これで成人かと思うとうれしいよ、できればもっと身長が伸びてほしいものだけどね」
成人すれば、一人前と認められるようなものだ、責任も大きくなるが、自分の裁量でいろいろと行動できる。
「あなたのお父さんもそんなに高い方ではなかったから・・・身長は諦めなさい」
母がからかうように言ってくる。
「え?父さんそんなに低かったの」
父は自分が生まれた時からいない、母も滅多に父のことを話さないのでどんな姿だったのかも、今生きているかもわからない。
ただ、父のことを話すとき、遠くを見つめる母の微笑は父のことを深く愛しているのだろうということだけは伝わってくる。
「一六五センチ位だったかな、今のあなたと同じくらいよ。私より十五センチは高かったのよね」
「そうなんだ・・・」
自分ががっかりしていると
「ふふふ、諦めなさいっていうのは冗談よ、両親より背の高くなる子どもなんて沢山いるわよ」
母がこの村に越してきたのは、お腹が大きくなっている時だと聞いたことがある、その時父は一緒におらず、お腹の子、つまり自分と母一人でやって来たらしいことを村長が昔言っていた。
この村の人口は百人にも満たないので、村に来る前に見てきたのかな?
「沢山いる」と言う母の言葉は、どこか確信めいていたため、ふと、そう思ってしまった。
「ごちそうさまでした」
食事を終え、食器の片づけをてつだう。
ふと壁際においてある背負い袋が目に入った。
背負い袋はパンパンに張っており、そこに自分がいつも狩の時に持ち歩いている鞘に入ったショートソードが立て掛けてあった。
何故?不思議に思っていると。
「あなたも十六歳になって成人したのだし、あなたの秘密を話すわね」
え?秘密?
母が笑顔を浮かべつつ自分の頬へと手を伸ばしてきて優しくなでてくれる。
「あなたは勇者なの」
へ?
・・・
・・・・
・・・・・
「これからあなたは魔王を倒すために旅に出ないといけないの」
意味が分からない、今まで勇者だとか魔王だとか聞いたこともない、狩や畑仕事を手伝いつつ今まで生きてきた自分には母が何を言っているのか理解できなかった。
「母さん何を言っているの、勇者って、魔王って何」
「魔王っていううのは人々の敵よ、存在するだけで魔物を生み出し続けるの、そしてそれを倒せるのは勇者だけなのよ」
自分の頬にあてられた母の手を軽く握り母を見つめる。
冗談などではなく本気で言っているようだ。
「あなたには力があるわ、これを持っていきなさい」
頬にあてられていた手が名残惜しそうに離れていくと、懐から透明な六角柱で中に火が灯っている幅一センチ長さ五センチくらいの棒のようなものを出し、自分の掌の上にそっと置いてくれた。。
「これは精霊石というのよ、精神を集中することによって石の中に秘められた力を使うことができるの、勇者であるあなたになら使いこなせるはずよ」
「本気・・・なんだね・・・」
母の優しい微笑の中にある真剣さを感じ取り、あぁ、本気なんだな、本気で自分が勇者だと魔王を倒しに行かなくてはならないのだと理解してしまった。
「安心して母さん、自分が勇者なんて実感はまだないけど、必ず魔王を倒して戻ってくるから」
母の用意していてくれた背負い袋を背負い、ショートソードを腰に下げ、村の端で母に笑顔で挨拶をした。
「いってらっしゃいタケル・・・」
「母さん、行ってきます」
母が両手で優しく包みこんだ自分の右手を名残惜しそうに放し、何かをこらえるような笑顔で送り出してくれた。
少し歩いては振り返り母に手を振る、手を振り返してくれる母が見えなくなるまで繰り返すと、真っすぐに街道の先を見つめ街を目指し歩いて行った。
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