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8話 似たもの同士
しおりを挟む「ま、まゆさん!その人の名前はなんて言うんですか!?」
達也は、急に大きな声でまゆを、問いただした。
「きゃ!ちょっと何よ急に!驚かさないでよ!」
まゆは、染め息を切らし胸に手を当てている。
「あ、ごめん。ちょっと、取り乱しちゃった」
「本当よ全く。この人は 鳥居 令子よ! ハリウッドデビューまでしてる、国の誇りと言われている女優よ」
「令子……そうか、令子っていうのか」
達也は、あの日一度だけ弥生が彼女のことを令子と呼んでいたことを思い出した。
ーー国の誇りか……確かに、あれが演技だなんて思えなかったからな。あぁ……今でも、怒りが湧く……命をかけて守った人間に裏切られたんだもんな……あいつの目には、刺され血を流している俺はどんなふうに映っていたんだろうな。あぁ……怒りで視界が揺れる。あいつは、どんなふうに殺してやろうか……
「ちょ、あなた……なんて顔してるのよ」
指摘された達也の顔は、眠たいのかと思うほどの目つきに、不気味に上がる口角。
それわまるで、映画の中から飛び出したかと思うほどの、悪役のそれだった。
「え?そんな変な顔してた?」
達也は笑って誤魔化した。
が、そんなことで誤魔化せる訳もなく、まゆは達也に何かを感じていた。
「……まぁ、別にいいけど」
「あ、それで。その令子って人になんで対抗心を抱いているの?」
「別に大した理由じゃないわ。昔、彼女にいじめられたことがあるの。もちろん、周りに話したって信じる人はいないから、わざわざ言わないけどね」
「え……なら何で僕に」
「それも大した理由じゃないわ。さっきのあなたの表情を見ていると、昔の自分を見ているみたいだったから。きっと、あなたも私と同じなのかな?って思ってね……ま、だから特に理由はないかな」
まゆは、憐れむかのように達也を見つめていた。
「そっか……それで僕には真実を……そっか。確かに似た理由かな。そうか……僕は、弥生。君は、令子。なんか、不思議な運命を感じるよ。これもあの人のサービスなのかって思うぐらいだよ」
達也は少し笑いながら、何かを思い出していた。
もちろん、まゆからしたら不気味な男の子でしかない訳だが、なぜか不思議と信じることができた。
「あの人が誰かは知らないけど、お互い頑張りましょうね。あ、そうだ、これ私の連絡先。何かあったら、連絡してきても良いわよ」
そう言って、まゆは電話番号を書いた紙を渡した。
「私はまた練習するから。またね」
まゆは、スッと立ち上がると小走りで戻っていった。
達也はその後も、フラフラと歩きながら瑠衣が帰ってくるのを待っていた。
「ごめん、ごめん。お待たせ!それで、どうだった?なにか、良い情報は得られた?」
「はい!為になる事ばかりでした!ここに来れたよかったです。あ、あと、まゆさんって方の連絡先を教えてもらいましたが、大丈夫ですか?」
「ええ、連絡先の交換ぐらいはいいけど、あなた携帯持ってないわよ?」
「あ!そうでした!ど、どうしよう!!」
「そうね……まぁ、1台ぐらいは、いいよね」
そう言いながら、何処かへ行き、戻ってくると手にはスマートフォンを持っていた。
「はい、これ。うちの会社のだけど良かったら使って。通信制限もないし、電話で話し放題だから遠慮せずに使って」
「あ、ありがとうございます!!」
ーーこれで、弥生や令子の事を調べることができる。
「うふふ。それじゃあ、帰ろうか」
こうして、達也の職場見学は終わった。
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