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9話 標的発見。

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 「達也くん、起きて!」

 「ん~……おは、ようございます……」

 達也は、目に突き刺さる日差しを手で避けながら起きた。
 
 「今日はいつもより眠そうね。夜はあんまり寝れなかったの?」

 「ん?うん……ちょっと考え事をしてました」

 「まぁ、仕方がないよ。記憶がないんだから、普通に生活なんて出来ないよね。でも!だからこそ、私は君を連れ出します!」

 瑠衣は、いつもより気合が入ってるように見えた。
 よく見ると、少し濃い化粧にお腹が見えている際どいTシャツに、ダメージズボンといつもよりオシャレでだった。
 
 「ん?今日は、オシャレですね」

 「おぉ!よくできました!もしかして、気づかないんじゃないかと心配しちゃったよ。今日は、達也くんに元気になってもらう為、私とデートしてもらいます!!」

 「で、デートですって!?!?!」

 「お、おぉ……」

 達也のあまりに大きなリアクションに、瑠衣は引き気味だった。
 もちろん、無反応よりは良いがこれはこれで少し怖いと思った瑠衣だった。

 ーーもしかして、私まずい事しちゃったかな?この子、女性が不慣れだと思ってたけど……いや、いや、そんなこと起きないよ。だって、この部屋で寝てても何もしてくれないし。いや、してくれないって何言ってるの私は!いかんいかん、こんな私よりも何歳も若い子に手を出すなんて……

 「きゃーー」

 「ん!?」

 「はっ!!」

 瑠衣は、思わず出てしまった声に目が天になってる達也と目があった。

 「あはは~……よし、準備するのだ青年よ!!」

 「あ、はい!!」

 勢いで乗り切った瑠衣だった。
 達也の準備ができると、外には少し型の古いビートルに乗った瑠衣がいた。

 「ささ、乗って乗って!!」

 達也は案内されるがまま、助手席は座った。
 車内は、いかにも女の子が使いそうな芳香剤……では無く、薄いさっぱりとしたシトラスの匂いがした。
 
 「……シートベルト」

 達也が乗り込んでから、瑠衣の様子が少し違和感を感じた。
 それに、なぜかブレーキを踏む脚は小刻みに揺れていた。

 「あ、はい!

 少し焦りながら、シートベルトを入れると瑠衣は強くブレーキを踏み込み、ちぎれる様な音がハンドルから聞こえてきた。

 「青年よ!!無限の彼方へ、さあ行くぞ!!!」

 瑠衣は、車のギアをドライブへ行き良いよく入れると同時にアクセルを踏んだ!!!
 そして、制限速度より5キロほど遅いスピードで走り出した。
 
 「あはは。はい、行きましょう!」

  どこに行くのかもよく分からず、達也を乗せた車は走り出した。

 それから1時間。
 
 「さぁ、着いたわよ!」

 「ここは……」

 達也の目の前には、無数のホテルが立ち並んでいた。

 「……ング」

 達也は、生唾を飲み込んだ。

 ーーこ、これは!!まさか……そんな、本当に……『達也くん……おいで?。あ……少し痛い……でも、はいったね?』なんて事が起きてしまう!!!

 ……なんて事はもちろん起きず、瑠衣たちが来たのは大きいショッピングモールだった。

 ーーっく。なんで商業施設の近くにホテルなんて立てたんだよ。空気を読んでくれよ。

 達也は、悶々としたまま店内を見て回った。
 が、こちろも悶々としていた。

 ーーうぅ……なんでこの子はもっと、想像だけじゃなくて行動もして来ないかな。私はてっきり『あ、瑠衣さん……ここって……もう僕我慢できな……一緒に入ろう』キャーーーってことを期待していたのに。全然予定になかったショッピングモール来ちゃったよ。てか、なんでこんなホテル街にショッピングモールなんてあるのよ。これじゃ、少し休もうか作戦も使えないじゃないの。

 っと、こちらはこちらで大変であった。

 「さ、しょうがない。達也くん私のお下がりしか着てなかったから、ここで服買おっか」

 「あ、はい!でも僕お金持ってないですよ?」

 「あ、良いの良いの。会社の経費で落とすから。じゃあ、散財に行くわよ!!」

 瑠衣は気持ちを切り替え、さまざまな店舗をはしごした、
 もちろん達也の……いや、主に自分の服を買っていた。

 「ふぅ~買った買った~」

 「いや、本当に、めちゃくちゃ買いましたね」

 達也は、大量の荷物を持ちながら店を見て歩いていた。
 
 「ちょっと、ここで休憩しようか。もう少ししたら、うちの会社の子ではないけど、結構有名なアイドルが来るのよ。良い機会だから、君も見ていきな」

 「はい。有名なアイドルか……それは楽しみですね」

 少しワクワクしながら、登場も待っていると急にアナウンスがかかった。

 「皆様、本日はご多忙の中お越しいただき誠にありがとうございました。本日のスペシャルゲストは、アイドルグループ『メイメル』のメンバー みゆきちゃんのご登場です!!」

 「「「キャァーーー みゆきちゃーーん」」」

 男の人より、女性の応援する声が多かったが今の達也の耳に残っているのは、アイドルの『みゆき』と言う名前だ。
 
 ーーみゆき……どこかで聞いた名前で……どこだ……は!!そうだ、あいつが言っていたんだ。死ぬ間明に隆二が会いたいって言っていた女か!いや、他の女の可能性も高いんだ。そんなに早く決め……つけ……嘘だろおい。

 達也の目線の先には、なんども見てきた忘れる筈がない顔の男がいた。
 男の顔見た瞬間、達也の表情は壊れ口角は右上に大きく上がり、瞳孔は完全に開いていた。
 その表情にいち早く気がついた瑠衣だったが、彼女は驚くこともなくただ、達也のことを見ていた。
 本来であれば、ここまで人間の表情が急変するなんて事は滅多にない。それが自分の目の前で起きている筈なのに、落ち着いている瑠衣はどこか危ない雰囲気をしていたが、達也はそれに気がつく事なく隆二を殺さんと言わんばかり睨んでいた。
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