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51・持たざる者のやぶれかぶれ
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今回の討伐場所は、城下近くの森の中。きのうサフィールが潜んでいた藪の近くだ。うっそうと茂った木々に囲まれて、辺りは昼なお薄暗い。こんな場所に魔物が出るとしたら、対抗手段を持たない一般市民にとっては死活問題だろう。
俺たちの気配に反応したのか、葉陰の重なる一番暗い場所から、真っ黒な影がむくむくと盛り上がる。闇だ。場所柄のせいもあるんだろうか、前のより少し大きい気がする。
「では、手筈通りに陣形を展開しろ。ミマ、今回も頼むぜ」
「はいっ! 頑張ります、ふふっ♡」
「ふふっ、かーわいい。さっすが僕のミマちゃん♡」
「も、もう、恥ずかしいですよ、アメティスタ様ぁ」
曲が流れ出す。最初に聞いたのと同じやつだ。和やかなやりとりから始まった戦闘は、相変わらず俺を無視して進んでいく。うう。
円陣から放たれる魔法と剣技が、色とりどり華やかに絡み合う。前回は呆然としてて気づかなかったけど、そもそもこの陣形、中心にいるミマの方が格段に有利だ。端っこに追いやられた俺がビッツを弾き返せるチャンスなんてほとんどない。も、もうちょっと、なんとかホームポジション取らねえと!
「サフィール様! 危ないっ!」
「くっ、恩に着るっ!」
「お、俺もっ」
「お前は退いていろ!」
「あうっ」
……無理! 剣持って駆け回ってる大男たちの間に、か弱い一般市民が割り込むなんて絶対無理! そりゃミマみたいに守られポジションキープできるなら話は別だけどさあ! ああ、くそ、結局またしても持てる者の勝ちってかぁ!?
「ち、ちくしょーちくしょー! 俺だって……」
「……! おい、馬鹿!」
半ば無理矢理騎士サマたちのそばに割り込もうとした瞬間、横から誰かに強く突き飛ばされた。弾き飛んで尻餅をついたとき、辺りに剣の落ちる音が響いた。
「ぐ……っ」
「え……っ、ジルコン!?」
見上げた先には、顔を歪めたジルコンがいた。だらんと垂れた左腕に、焼き付いたような黒いもやがまとわりついている。嘘だろ、こいつ、俺をかばって!?
「おっ、前っ、何やって……!」
「っ、いいから立て! 次が来るぞ!」
「……っ!」
鬼気迫る怒鳴り声に跳ねるように立ち上がる。黒く燃え上がるビッツは、練習とは比べ物にならない速度で旋回しながらジルコンへと飛んできている。まだ震えの取れない手のひらを、ジルコンに向けてかざした。生成された虹色のバリアに、ビッツがぶつかってしゃん、と弾けた。
「……は、よかったじゃないか。1スコアゲットだ」
「ば、バカ、んなこと言ってる場合じゃっ」
「チュー太郎!」
名前を呼ばれて振り返る。いつの間にかすぐそばに来ていたスマラクトが、剣をスキアに向けたまま俺へと叫ぶ。
「お願いします!」
「へ? お、おう!!」
慌てて彼の方に手を向けた。生まれた緑のバリアにビッツが弾ける。スマラクトがちらりとこちらを振り返る。
「感謝します!」
「……おうっ!」
再びスキアに対峙するスマラクトとは逆に、ジルコンの元へと駆け寄った。腕の黒いもやはいつの間にか消えている。ひとまずそれはよかった、けど、でも。
俺たちの気配に反応したのか、葉陰の重なる一番暗い場所から、真っ黒な影がむくむくと盛り上がる。闇だ。場所柄のせいもあるんだろうか、前のより少し大きい気がする。
「では、手筈通りに陣形を展開しろ。ミマ、今回も頼むぜ」
「はいっ! 頑張ります、ふふっ♡」
「ふふっ、かーわいい。さっすが僕のミマちゃん♡」
「も、もう、恥ずかしいですよ、アメティスタ様ぁ」
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「お、俺もっ」
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半ば無理矢理騎士サマたちのそばに割り込もうとした瞬間、横から誰かに強く突き飛ばされた。弾き飛んで尻餅をついたとき、辺りに剣の落ちる音が響いた。
「ぐ……っ」
「え……っ、ジルコン!?」
見上げた先には、顔を歪めたジルコンがいた。だらんと垂れた左腕に、焼き付いたような黒いもやがまとわりついている。嘘だろ、こいつ、俺をかばって!?
「おっ、前っ、何やって……!」
「っ、いいから立て! 次が来るぞ!」
「……っ!」
鬼気迫る怒鳴り声に跳ねるように立ち上がる。黒く燃え上がるビッツは、練習とは比べ物にならない速度で旋回しながらジルコンへと飛んできている。まだ震えの取れない手のひらを、ジルコンに向けてかざした。生成された虹色のバリアに、ビッツがぶつかってしゃん、と弾けた。
「……は、よかったじゃないか。1スコアゲットだ」
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「へ? お、おう!!」
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