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70・総集編回は手紙書きがち
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前略。今はどことも知れない遠い空の下にいる、俺こと煤ヶ谷鍮太郎の母ちゃん様へ。
俺は今、異世界にいます。厳密に言うと、スマートフォン向けボーイズラブソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈』の世界に。七人のキラキライケメン騎士サマに協力する『灯士』となって、戦ったり騎士サマたちとイチャイチャしたりするゲームです。母ちゃんが知ったらきっと羨ましがることでしょう。代われるもんなら代わってあげたいくらいです。いやそしたら俺の方が見知らぬ男と遠い空の下に出奔する羽目になんのか。それは嫌だ。代われねえ。
ともかく相手が男であっても、顔のいいキラキラ人間たちに優しくされる喜びを覚えてしまった俺ですが、その先に思わぬ罠がありました。なんとこのゲームの真の主人公は、俺の同期であるプリティ系美少年にして本性は腹黒ニセショタの転生者、ミマ=クリアブライトだったのです。廃課金者の彼はカネの力で騎士サマハーレムを築き上げ、ライバルポジの俺はこのままだといずれ怪鳥の餌まっしぐら。前世ではミミズやダンゴムシに例えられる生を送ってきた俺ですが、食物連鎖的な意味でガチミミズポジになっては死んでも死に切れません。
そんな俺の前に現れた一筋の光。それが、看板ヒーローにして慇懃執事の皮をかぶったコンプラ無視王子、ジルコン=ラタナキリことディアマンテ=ジルコニアス=エーデルシュタイン、あれ、結局こいつの正式な名前ってどっちなんだっけ? まあとにかく今頭の上に表示されてるキャラ名がジルコンだからジルコンって呼んでるけど、要するにそいつ、です。
こいつはマジで、俺に対して、人に言えない恥ずかしいことや因業ババアめいた陰湿な暴力を平然と実行するとんでもない奴です。けれど顔面偏差値はくっそ高いし、仲間を大切に思う有言実行の有能王子だし、そして何より俺と同じく、ミマのハーレムを阻止したいと願う同志でもあります。こいつの協力の元、俺は俺がイケメンたちにチヤホヤされる俺専用ハーレムを築くべく、今日まで体を張って頑張ってきたと言うわけです。
俺がこの世界に生まれ変わって、そろそろ3ヶ月が経ちます。短いけれど濃すぎる3ヶ月でした。騎士サマたちと重ねた演習は、俺のスキルを着実にアップさせてくれました。15回で音を上げていた腕立ては、今や50回は余裕になりました。魔法……と呼べるもんなのかどうかはともかく、音ゲーもだいぶ上手くなった自覚はあります。座学の方は正直まだまだですが、この世界の地名とか歴史なんかは多少頭に入ってきました。これまでの俺を思い出すと、こんなレベルでも立派なもんです。自分で褒めてやりてえ。
騎士サマたちとの交友も、日々深めようと努力してます。小さなイベントも多々クリアしました。ルビーノから逃げた鳩を捕まえようとして、目をつつかれて流血沙汰になったり。女の人から逃げるサフィールを見送ったり。アメティスタから逃げたなにかを見て見ぬふりしたり。女の人から逃げるサフィールを見送ったり。女の人に捕まるサフィールを見送ったり。
取るに足らない日常を重ねて、なんとか少しずつでも上げた親愛度は、しかしいつも速攻でミマに塗り返されてしまいます。げに恐ろしきはカネの力です。そのたびに温度を失う騎士サマたちの目に、折れそうになったことも何回となくありました。
でも、俺は負けません。幸いなことに特殊なイベントをこなしたスマラクト、そして俺に協力してくれるジルコンの二人は、今も俺に対してニュートラルな態度を保ってくれています。希望はある。前世に比べりゃなんだってマシだ。その根性だけで今の俺は、この理不尽な異世界を生き抜いています。
そしてこれから先も、そんな日々はしばらく続いていきます。例えば──そう、例えば、こんな感じで。
俺は今、異世界にいます。厳密に言うと、スマートフォン向けボーイズラブソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈』の世界に。七人のキラキライケメン騎士サマに協力する『灯士』となって、戦ったり騎士サマたちとイチャイチャしたりするゲームです。母ちゃんが知ったらきっと羨ましがることでしょう。代われるもんなら代わってあげたいくらいです。いやそしたら俺の方が見知らぬ男と遠い空の下に出奔する羽目になんのか。それは嫌だ。代われねえ。
ともかく相手が男であっても、顔のいいキラキラ人間たちに優しくされる喜びを覚えてしまった俺ですが、その先に思わぬ罠がありました。なんとこのゲームの真の主人公は、俺の同期であるプリティ系美少年にして本性は腹黒ニセショタの転生者、ミマ=クリアブライトだったのです。廃課金者の彼はカネの力で騎士サマハーレムを築き上げ、ライバルポジの俺はこのままだといずれ怪鳥の餌まっしぐら。前世ではミミズやダンゴムシに例えられる生を送ってきた俺ですが、食物連鎖的な意味でガチミミズポジになっては死んでも死に切れません。
そんな俺の前に現れた一筋の光。それが、看板ヒーローにして慇懃執事の皮をかぶったコンプラ無視王子、ジルコン=ラタナキリことディアマンテ=ジルコニアス=エーデルシュタイン、あれ、結局こいつの正式な名前ってどっちなんだっけ? まあとにかく今頭の上に表示されてるキャラ名がジルコンだからジルコンって呼んでるけど、要するにそいつ、です。
こいつはマジで、俺に対して、人に言えない恥ずかしいことや因業ババアめいた陰湿な暴力を平然と実行するとんでもない奴です。けれど顔面偏差値はくっそ高いし、仲間を大切に思う有言実行の有能王子だし、そして何より俺と同じく、ミマのハーレムを阻止したいと願う同志でもあります。こいつの協力の元、俺は俺がイケメンたちにチヤホヤされる俺専用ハーレムを築くべく、今日まで体を張って頑張ってきたと言うわけです。
俺がこの世界に生まれ変わって、そろそろ3ヶ月が経ちます。短いけれど濃すぎる3ヶ月でした。騎士サマたちと重ねた演習は、俺のスキルを着実にアップさせてくれました。15回で音を上げていた腕立ては、今や50回は余裕になりました。魔法……と呼べるもんなのかどうかはともかく、音ゲーもだいぶ上手くなった自覚はあります。座学の方は正直まだまだですが、この世界の地名とか歴史なんかは多少頭に入ってきました。これまでの俺を思い出すと、こんなレベルでも立派なもんです。自分で褒めてやりてえ。
騎士サマたちとの交友も、日々深めようと努力してます。小さなイベントも多々クリアしました。ルビーノから逃げた鳩を捕まえようとして、目をつつかれて流血沙汰になったり。女の人から逃げるサフィールを見送ったり。アメティスタから逃げたなにかを見て見ぬふりしたり。女の人から逃げるサフィールを見送ったり。女の人に捕まるサフィールを見送ったり。
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でも、俺は負けません。幸いなことに特殊なイベントをこなしたスマラクト、そして俺に協力してくれるジルコンの二人は、今も俺に対してニュートラルな態度を保ってくれています。希望はある。前世に比べりゃなんだってマシだ。その根性だけで今の俺は、この理不尽な異世界を生き抜いています。
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