転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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82・青空に浮かぶあなたの面影

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 とぼとぼと帰り道を選……ぼうとした、その直前、はたと思いつく。そうだ。この際だから俺は俺で、トパシオに話を聞きに行ってみようか。さっきミマは俺たちが戦うことになるとかなんとか言っていた。ってことは俺も立派な当事者、事情説明を受ける権利くらいあるはずだ。うん。行こう。少なくとも一人でしょんぼり帰るよりは、何かしら有意義なことをやった気分になれる。

 Uターンしてトパシオの居場所を探す。演習漬けだったこの3ヶ月で、城の歩き方にはだいぶ慣れた。人探しならやみくもに歩き回るより、効率的な裏技があることも知っている。
 まずは中庭中央のオブジェに触れつつ、城全体をぐるりと見渡す。すると城のところどころに、名前と騎士サマたちのアイコンが浮かび上がってきた。これぞ本作便利機能の一つ、マップ式移動。現在城にいる騎士サマの居場所を表示して、必要とあらばそこまでワープできる機能だ。誰からも何も説明されなかったから、演習のときに偶然気づいたんだけど。運営もこういうのはチュートリアルに入れとけよな。あのときは何の前触れもなく浮かんだルビーノやサフィールの笑顔に、もしやこいつら死んだんかと思っちゃったじゃねーか。

「えーっと、トパシオ、トパシオは……あ、いた」

 幸いトパシオの名前は2階のあたりにあった。あの辺は確か、騎士サマそれぞれの執務室がある区域だ。相変わらず爽やかさ全開なトパシオの笑顔に、視線を合わせて念を送る。周囲の景色がホワイトアウトして、戻ったときにはそこはもう、トパシオのいる机の前だ。

「あれ、チュー太郎じゃないか。執務室に来るなんて珍しいね。何か用かい?」

 突如として自室に現れた俺に、トパシオは驚き一つ見せず笑顔を浴びせた。肝が太い。俺がこんなことやられたらマジで、いろんな意味でたまったもんじゃねえと思うけど。それでも見ていた書類はさっと机に伏せているあたり、やっぱり大事なところでは抜け目ない奴だ。

「ちょっと、話があんだけど」
「話? 商談ならアポを取ってから」
「じゃなくて。いや、お前にとっては単なる商談かもしれないけど、俺にとってはちょっとした心身の危機だから」
「なんだか穏やかじゃないな。どうしたんだい」

 眉を寄せて手を組んだトパシオは、ぱっと見には心底親身に話を聞こうとしてくれているように見える。いや、見た目通り心底親身なのだ、この瞬間だけは。そこから自分の利に繋がるかどうかで出方が変わるだけで。

「あのさ。ミマがお前と、闘技場に出て俺たちと試合する契約を交わしたって」
「ああ、その話か。したね。久々のでかい興行になりそうで、今から楽しみだよ」
「あー……それなんだけど、ちょっと行き違いがあったみたいで」
「行き違い?」

 笑顔のまま首を傾げる。さあ、こっからが本番だ。気を引き締めて行こう。現時点でのこいつは、敵味方どっちに転ぶかもわからない。
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