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84・ショウほど素敵な商売はない
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「ともかくオレにとっては、現時点でこの興行を中止する理も利も義理もない、ってことだ。オレだって相応のリスクを負っているんだからさ。君から一方的に解除できるような、瑕疵のある契約とはとても言えないはずだよ」
「そ、そこをなんとか! ジュエネルも出すから!! 100までなら!!」
「あはは! 本当、君は面白いこと言うなあ。でも駄目なものは駄目だよ。今回の興行は各方面からも注目されてるんだ。『輝石の魂を持つ騎士と、騎士の輝きを護る灯士。二人の心が繋がれたとき、闇夜を照らす耀燈となる』……預言にも詠われた、かのランプ同士が剣を交えるなんて、この機を逃せばそうそう見られるもんじゃないからね」
「だから俺はっ、……ランプ『同士』?」
さらりと出てきたその単語に、違和感を覚えて言葉を止めた。斜めにこちらを向いたトパシオが、きょとんと目を丸くする。
「ん? 『同士』だろ? 君もミマも、お互い騎士を一人ずつ従えて戦うことになるんだから」
「騎士を……って、え、ミマも!?」
「なんだ、そんなことまで忘れちゃったのかい? チュー太郎、君、前の討伐で頭でも打ったかな」
微妙に失礼なセリフを吐きながら、トパシオは一つの名前を口にする。
「ジルコンだよ」
「え?」
「ジルコン……ああ、今回ばかりはディアマンテ殿下とお呼びするべきかな。ミマと一緒に戦うパートナーは、彼だ」
「…………は?」
条件反射で声が漏れた。二回同じ名前を聞いたあとでも、理解がまったく追い付いていない。誰が、誰の、パートナーだって?
「いやあ、まさか彼が闘技場に出てくれるなんてね。昔からダメ元でオファーはしてたんだけど、首を縦に振らないどころか苦言まで呈される有様だったのに。世間も大騒ぎだよ。彼は王位継承権こそ高くないけれど、ファンは老若男女問わずこの地を埋め尽くすほどに多いから。ってなわけでこれはもうオレだけじゃなく期待してくれるみんなのためにも、何があったって絶対に止めちゃいけない興行なんだ。ショウマストゴーオン、ってやつだね、ははっ」
トパシオが頷きながらぺらぺら喋っている言葉は、全部右耳から左耳に抜けていった。それこそ頭でも打ったみたいに、脳の中に何も残らない。
「……なんで?」
かろうじてそう口にすると、トパシオは軽く首をかしげた。
「さあ? でも多分、ミマと同じ理由なんじゃないかな。仲間のために、って。泣けるよな。それもまたいいバックストーリーに……って、あれ?」
最後まで聞き届けるより前に、足が動いていた。ものも言わずにきびすを返し、石造りの廊下を引き返す。刻む歩みの足音が、勝手に速度を増していく。
「おーい、チュー太郎。話はもういいのかい? ってことはつまり、ご理解いただけたと取ってもいいのかな?」
開いたままのドアから、トパシオの声が聞こえていたけれど、俺にはもうそんなことどうでもよかった。とにかく一分一秒でも早く、ジルコンを問い詰めなくちゃいけない。トパシオの言っていることは本当なのか。本当ならば、なんでなのか。話を聞かなきゃいけない。他の奴じゃなくてあいつ自身、ジルコン本人の口から。
「そ、そこをなんとか! ジュエネルも出すから!! 100までなら!!」
「あはは! 本当、君は面白いこと言うなあ。でも駄目なものは駄目だよ。今回の興行は各方面からも注目されてるんだ。『輝石の魂を持つ騎士と、騎士の輝きを護る灯士。二人の心が繋がれたとき、闇夜を照らす耀燈となる』……預言にも詠われた、かのランプ同士が剣を交えるなんて、この機を逃せばそうそう見られるもんじゃないからね」
「だから俺はっ、……ランプ『同士』?」
さらりと出てきたその単語に、違和感を覚えて言葉を止めた。斜めにこちらを向いたトパシオが、きょとんと目を丸くする。
「ん? 『同士』だろ? 君もミマも、お互い騎士を一人ずつ従えて戦うことになるんだから」
「騎士を……って、え、ミマも!?」
「なんだ、そんなことまで忘れちゃったのかい? チュー太郎、君、前の討伐で頭でも打ったかな」
微妙に失礼なセリフを吐きながら、トパシオは一つの名前を口にする。
「ジルコンだよ」
「え?」
「ジルコン……ああ、今回ばかりはディアマンテ殿下とお呼びするべきかな。ミマと一緒に戦うパートナーは、彼だ」
「…………は?」
条件反射で声が漏れた。二回同じ名前を聞いたあとでも、理解がまったく追い付いていない。誰が、誰の、パートナーだって?
「いやあ、まさか彼が闘技場に出てくれるなんてね。昔からダメ元でオファーはしてたんだけど、首を縦に振らないどころか苦言まで呈される有様だったのに。世間も大騒ぎだよ。彼は王位継承権こそ高くないけれど、ファンは老若男女問わずこの地を埋め尽くすほどに多いから。ってなわけでこれはもうオレだけじゃなく期待してくれるみんなのためにも、何があったって絶対に止めちゃいけない興行なんだ。ショウマストゴーオン、ってやつだね、ははっ」
トパシオが頷きながらぺらぺら喋っている言葉は、全部右耳から左耳に抜けていった。それこそ頭でも打ったみたいに、脳の中に何も残らない。
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