転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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93・今のはメラでは無い

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「灯士ミマ=クリアブライト、及び騎士ディアマンテ=ジルコニアス=エーデルシュタイン! 並びに灯士チュー太郎=
ブラスワークス、及び騎士ランジン=ハイネ!!」

 増幅されたトパシオの声が、満員の闘技場に響き渡る。途端にヤジと喧騒がすっと引いた。うーん、この掌握っぷりよ。

「汝らを守護する輝石に誓って、今宵ここに持てる限りの武勇を示さんことを! それでは……」

 メッキの剣を抜いてミマが構える。ジルコンもミマも、眼光鋭く俺を捉えている。ううっ。もう逃げられない。やるしかねえ。いや、逃げる気なんてさらさらねえ!
 ほんの一瞬、息詰まるような間を置いて。

「試合……開始!!」
「はああああっ!!」

 鐘が鳴った瞬間、裂帛の気合いとともにランジンが駆け出した。疾い。向かうはジルコン、一直線。空を裂く勢いで飛び込んだランジンの木剣を、だがジルコンは難なく剣身で受け止める。

「ほう。また腕を上げたようだな。だが、軽い」
「うぁっ!?」

 ひねるように受け流されたランジンが、たたらを踏みかけて振り返る。刃のないフェイクの剣だ。勢いつけなきゃ威力は出ない。鍔迫らずいったん飛び退いて、切先をジルコンに向けるランジンに、ジルコンは無表情のまま目を細めてみせる。

「まったく。こうも流麗に磨き上げたその武勇、俗悪な見世物に堕すのはあまりに惜しい」
「殿下……申し訳ありません。処分を下されると仰るのであれば、いかようにも」
「いいや。法ではお前を止め得ぬ以上、ここに立つか否かはお前の意志だ。意志には意志をもって、叩き潰すのみ」
「くっ……!」

 今度はジルコンが攻勢に出る。真芯をとらえた正確な一撃。一瞬顔を歪めたランジンは、しかし痺れを打ち捨てるように剣を払い、再び前へと打って出る。
 剣と剣がぶつかり、弾き合う。国の最高峰たる騎士同士の剣戟は、まるで演舞のごとく美しい。木剣の鈍い打撃音すらも、澄んだ金属音に聞こえるくらいだ。観客はもちろん試合の相方である俺すらも、ひととき目を奪われて立ち尽くす。
 ……いや。って言うかこれ、俺いらなくね? 疑問符つけるまでもなくいらねーだろ、どう考えたって。
 これでも一応、ランジンから魔法の手ほどきは受けてきた。修行を重ねてどうにかこうにか、自分の手から魔法らしきものが出るようになった日には、両手を上げて感動すらした。でもそれにしたって俺が使えるのは、メラとかファイアとかひのことかその程度の初期技だけだ。対して彼らの戦闘は、地獄の周回式ソシャゲでも余裕でランカークラス。今の俺じゃとても戦力になんかならない。

「どうしたの、チュー君。手助けしてあげないの?」
「うぐ……」

 ミマが微笑んで小首をかしげる。くそう。こいつだってわかってるだろうに。あん中に魔法を放ったところで、よくてジルコンの尻を焦がすくらいか、悪けりゃランジンに直撃しておしまいだ。どっちにしろ後でひどいことになるのは言うまでもないだろう。
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