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155・背もたれなし肘掛けあり
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約束の、そして運命の日曜日がやってきた。
エーデルシュタイン城の一室、会議の間に通じる大きなバルコニー。目印の旗を大きくひるがえらせたその場所に、翼人たちは上空から音もなく降り立った。そびえ立つ石の城壁も城門も、当然のようにスルーして。つまりそれはいざ有事となった場合にも、この城はいともあっさり侵入を許してしまうって意味だ。会談の場にこの部屋を指定されたのも、おそらくその示威を意図してのことだろう……と、ジルコンが言っていた。
集まった騎士団の面々も、さすがにほとんどが緊張を隠せていない。唯一アメティスタだけは相変わらずあくびなんてこぼしてるけど、スマラクトなんかはもう見てわかるくらい青ざめている。当然、俺も。
会議室を背に並んだ一同の中から、ジルコンが前に進み出る。そして翼人族の中心に悠然と立つ、リーダー・フォルコに向かって右手を差し出した。
「ご足労に感謝する。今日は実りある対話を期待している」
「こちらこそ、盛大なお出迎えありがとよ。ま、気楽にいこうぜ、気楽にな」
どう見ても皮肉だろってセリフと一緒に、長年の親友に再会したかのようにがっちりと手を握る。後ろに控えるは副官のエイグルと、護衛らしき数人の翼人。例によって全員美形揃いだが、山賊軍団の名に相応しく、いずれ劣らぬコワモテでもある。おまけに緊張のせいかは知らないが、なんだかちょっと雰囲気が殺気立っているようにも見える。うう、コワイ。おうちょっとお前ジャンプしてみろよとか言われそう。俺いまだに100ジュエネルしか持ってねーのに。
一通りの挨拶を終えて、ぞろぞろと会議室に入った。長テーブルを挟んで並ぶ椅子に、俺たちと翼人側で別れて座る。俺の席は中央のジルコンから一つ左、席順位で言えば三番目に偉い人が座るとこだ。たのむから端っこにしてくれと泣いて懇願したのだが、国を護る灯士がそんなことでどうすると一蹴されてしまった。表情こそなんとかこわばる程度ですんではいるものの、現時点で既に脂汗がダラダラ垂れている。いざとなったらジルコンと、そのまた隣のミマに丸投げしよう。頷いてソーデスネーだけ言ってよう、俺は。
「さてと」
翼のある彼らのために、特別に背もたれを外した椅子に、腰を下ろすなりフォルコは口火を切った。
「まだるっこしいのは嫌いだ、単刀直入に行くぜ。北の森のスキア討伐を中止してくれ。あそこのスキアどもはオレたちにとって大事なオマンマのタネなんだ。無闇やたらに刈り取られちゃ困る」
「こちらも単刀直入に言わせて貰うが、それはできない。スキアは我ら人類、ことにエーデルシュタイン王国にとっては積年の大敵だ。人を襲い地に呪いを撒く害獣を、人の領域においてのさばらせておくわけにはいかない」
「……ほう。どうも貴殿らの言う害獣という概念には、我ら翼人族をも含むように聞こえるが」
ただでさえ鋭い目をナイフのように尖らせて、副官エイグルが口を挟んだ。会議室の空気が急激に張り詰めた。静電気を受けたかのように皮膚がピリピリしている。へ、平和にいきましょうよ、平和に……なんて、へらへらと取りなせるような雰囲気じゃないよな。
エーデルシュタイン城の一室、会議の間に通じる大きなバルコニー。目印の旗を大きくひるがえらせたその場所に、翼人たちは上空から音もなく降り立った。そびえ立つ石の城壁も城門も、当然のようにスルーして。つまりそれはいざ有事となった場合にも、この城はいともあっさり侵入を許してしまうって意味だ。会談の場にこの部屋を指定されたのも、おそらくその示威を意図してのことだろう……と、ジルコンが言っていた。
集まった騎士団の面々も、さすがにほとんどが緊張を隠せていない。唯一アメティスタだけは相変わらずあくびなんてこぼしてるけど、スマラクトなんかはもう見てわかるくらい青ざめている。当然、俺も。
会議室を背に並んだ一同の中から、ジルコンが前に進み出る。そして翼人族の中心に悠然と立つ、リーダー・フォルコに向かって右手を差し出した。
「ご足労に感謝する。今日は実りある対話を期待している」
「こちらこそ、盛大なお出迎えありがとよ。ま、気楽にいこうぜ、気楽にな」
どう見ても皮肉だろってセリフと一緒に、長年の親友に再会したかのようにがっちりと手を握る。後ろに控えるは副官のエイグルと、護衛らしき数人の翼人。例によって全員美形揃いだが、山賊軍団の名に相応しく、いずれ劣らぬコワモテでもある。おまけに緊張のせいかは知らないが、なんだかちょっと雰囲気が殺気立っているようにも見える。うう、コワイ。おうちょっとお前ジャンプしてみろよとか言われそう。俺いまだに100ジュエネルしか持ってねーのに。
一通りの挨拶を終えて、ぞろぞろと会議室に入った。長テーブルを挟んで並ぶ椅子に、俺たちと翼人側で別れて座る。俺の席は中央のジルコンから一つ左、席順位で言えば三番目に偉い人が座るとこだ。たのむから端っこにしてくれと泣いて懇願したのだが、国を護る灯士がそんなことでどうすると一蹴されてしまった。表情こそなんとかこわばる程度ですんではいるものの、現時点で既に脂汗がダラダラ垂れている。いざとなったらジルコンと、そのまた隣のミマに丸投げしよう。頷いてソーデスネーだけ言ってよう、俺は。
「さてと」
翼のある彼らのために、特別に背もたれを外した椅子に、腰を下ろすなりフォルコは口火を切った。
「まだるっこしいのは嫌いだ、単刀直入に行くぜ。北の森のスキア討伐を中止してくれ。あそこのスキアどもはオレたちにとって大事なオマンマのタネなんだ。無闇やたらに刈り取られちゃ困る」
「こちらも単刀直入に言わせて貰うが、それはできない。スキアは我ら人類、ことにエーデルシュタイン王国にとっては積年の大敵だ。人を襲い地に呪いを撒く害獣を、人の領域においてのさばらせておくわけにはいかない」
「……ほう。どうも貴殿らの言う害獣という概念には、我ら翼人族をも含むように聞こえるが」
ただでさえ鋭い目をナイフのように尖らせて、副官エイグルが口を挟んだ。会議室の空気が急激に張り詰めた。静電気を受けたかのように皮膚がピリピリしている。へ、平和にいきましょうよ、平和に……なんて、へらへらと取りなせるような雰囲気じゃないよな。
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