転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ！

１９５・名前を呼んで

　俺の戸惑いをよそに、ジルコンのそれは完全に抜き去れる直前で、再び俺の中へと押し込まれてきた。圧迫感で息が詰まる。けれどそれと同時になんだかむず痒いような、なんとも言えない感覚が俺の奥底に灯る。

「ふっ、ぐ……、んっ……あ、ぁうっ」
「っく、……は……っ、……平気、そうだな」
「ん……、……っあ、あっ！」

　俺のものを握る手が、のろのろと上下し始める。鈍行往復のジルコンに合わせるみたいに、もどかしいにもほどがある速度で。耐え切れず腰が揺れる。ダメだ、脳がバグる。甘ったるい快感と鈍重な圧迫感が混ざり合って、どっちがどっちでどこからのものなのかもわからなくなってくる。

「あ、あ、ジルコン、やっ……俺、だめ、なに、これっ……！」
「……っ」

　背中に回した両腕を、すがるように強く引き寄せる。わずかに息を呑んだジルコンは、ごくりと唾を飲み込んで、俺の腰を支える形で持ち上げる。

「大丈夫だ、チュー太郎。大丈夫……大丈夫だから」
「はっ、あ、あぁ、ジル、コン……っ」

　優しい声色が耳を溶かす。腹の中の重さは消えないけれど、その代わり温かいものが胸に満ちていく。その熱を分け合いたくて、ジルコンにぎゅっとしがみついた。ジルコンの息が乱れる。力強い腕が俺を抱きしめ返すと共に、吐息と動きが重なるように速度を増していく。

「……は……ぁっ、くそ、っ、不覚、だっ……」
「あ、あぅ、はっ、い、いいよ、ジルコンっ、き……来て、っ」
「……っ、なら、お前も……っ」
「っあ！　あっ、あっ、ああぁっ」

　先端を撫で回しながら扱かれて、びくびくと体が跳ねる。そのたびに俺の中のジルコンも、限界を訴えるみたいにどくんと脈打つ。打ちつけられた腰が音を立てる。汗ばみはじめた肌が吸いつく。抱き合う俺とジルコンの体温が、ぴったり同じになっていく。ああ。体を重ねる、って、こういうことだったんだ。気づけばうわ言みたいに勝手に、がむしゃらに言葉があふれ出していた。

「あっ、はぁっ、ジルコン、好きっ、好きだっ、あぁはぁうっ！！」
「くっ、……ふっ、ああ、……ああ……っ」
「やっ、やば、もう、俺、あぁ、ジルコンっ、ジルコンっ！」
「っは、はぁっ、ああ、俺も……一緒、に……っ！」
「あぁっ……！！」

　ジルコンの腕が、苦しいくらいにきつく俺を抱き寄せる。一番奥に熱いものが注がれるのと同時に、俺自身もまた勢いよく精を放出していた。頭の中が真っ白に染まる。中も外もジルコンでいっぱいになったまま、すべての感覚が遠のいていく。
　陽だまりの中でまどろむみたいな、心地よい眠りに落ちる直前。
　俺の耳元で、ジルコンが低く囁いた。

「愛している……鍮太郎」

　遠くなる意識の中で、俺は確かに頷き返した。