1 / 2
俗に言う異世界召喚ってやつ?
1話
しおりを挟む赤城ひまる。それが私の名前。友達からは略してアカマルと呼ばれている。そういう名前のタバコがあった気がしてあまり気に入ってはいない。
そして今。
「君が、大魔女の孫?」
目の前にいる変態目隠し男に問われている。別にそう言うプレイではない。
時はおよそ1日前に遡る。
その時は、まだ学校の朝礼前だった。
「あ、おはよ。終わったの?お葬式」
話しかけてきたのは、前の席の中井喜美子。通称きみちゃん。
「おはよ。まあ葬式っていうほどでもないけどね」
たった一人の家族を看取った。看取ったというと大袈裟だが、静かに逝くところを見守ったというべきか。
私は、幼い頃に両親を亡くし母方の祖母に引き取られた。
祖母の名は赤城マリ。家族である私から見ても豪胆な人だったと思う。
いつだったか、私が親なしだといじめられていた頃、いじめてきた男子に「私の孫をいじめたんだ。謝るまで呪いは続くからね」と鬼の形相で言い放ち、その後本当にその子が謝るまで周りでプチ不幸が起こり続けた。
「まあでもかっこいいおばあちゃんだったよねえ」
「そう言ってくれるのきみちゃんだけだからね」
はは、と笑うと祖母のガハハと豪快に笑う様を思い出す。
豪快ではあったが仲は悪くなかった。最後の方は、あの豪快な祖母が管に繋がれているのがかわいそうで、逝った時はもう祖母が苦しむことはないのだと少し安心した。
いけない、涙を堪えようとしてハンカチで拭おうとポッケをかき回す。コツ、と硬いものに指先が当たった。
「あ」
手のひらに乗っていたのは、祖母が亡くなる間際に遺した懐中時計だった。
「なにそれ?」
「わかんない。おばあちゃんが死ぬ間際に渡してきてさ」
蓋部分に何かマークが書いてあるのだが、なんのマークか全くわからない。多分、2匹の龍………というよりは西洋のドラゴンが対になるように描かれているようだった。だいぶ古いものらしく針はすでにとまっている。女子高生が持ち歩くようなものでは到底ない。
この時計以外にも、遺言めいたものを祖母は遺した。
「私の友達を、助けてやって欲しい」
今まで物心ついた時から祖母と暮らしていたが、申し訳ないが祖母の友人というような人物は見たことも聞いたこともなかった。たまに電話を誰かとしていたのは知っているが、全くわからない。
「あ、てかさ。続けてで悪いんだけど悪いニュース」
「げえ、天涯孤独になった親友に何さ?」
「伏見先輩、彼女いるってさ」
「ま、まじ」
「駅前で超美少女と歩いてたって」
伏見先輩。ちょっと良いなと思っていた二個上の先輩。
先月、うちの高校に転校してきたその先輩はそのあまりの顔の良さで女子をざわつかせた。サラサラの黒髪で中世的な顔立ちでちょっといいなと思ってしまったのだ。
元から相手にされるとは思っていなかったが、少しショックだ。
こんな話題で、亡くなった直後にがっかりしてごめん。おばあちゃん。
放課後になり、私の今後を心配する担任にこれからどうするかを話していたら職員室を出る頃には誰もいなかった。
「遅くなっちゃったな」
でも、家にはもう誰もいないのだ。
今後、私は一旦施設から学校に通う。親戚をあらかた探してみて父方に何人か本当に遠縁の親戚がいるとのことだった。が、不可解なことに祖母だけしか見つからなかった。
はあ、とため息をつきながら歩いていると廊下で誰かにぶつかりこけかけた。
「うわ」
ぎゅ、と腕を掴まれる。
「大丈夫?」
「伏見先輩⁉︎」
腕を掴んで引き寄せてきたのは、まさかの伏見先輩だった。
顔が近い、いい匂いがする、髪が綺麗、顔も綺麗!!
「えっと………?」
「も~~~何してんのみかりん~~~!」
ピキ、と後ろから聞こえた高い声に体が固まる。
ひょい、と姿を表したのは黒くて綺麗な髪に大きな瞳の小柄で可愛い女の子だった。
「ごめん、ぶつかったみたいで」
「ドジなんだから!あっ、ねえ君大丈夫?怪我ない?」
「な、ケガ!?な、ない、ないです」
にこにこ微笑みながら私の手を引いてくれた。
うわ、かわいい。やっぱりイケメンはこう言うこと付き合うんだなぁ。私みたいな平々凡々な女子高校生じゃなくて。
「………?みかりん、この子人間?匂いが違う」
「えっ!?すいません、私くさい!?」
すんすん、と匂いを嗅ごうと腕を上げた拍子にさっきの時計がこぼれ落ちた。
「あっ」
女の子が時計を拾って、見つめる。そして、伏見先輩にも見せた。
「間違いない。ガルニアの銀時計だ」
「ということはこの子が………」
「大魔女の孫」
「赤城マリの孫ですが!?」
ごそ、と女の子があってはならないものを取り出した。
「タ、タバコ!?いやいやいや、まずいですって!!!学校ですよ!?」
「ごめんね、これから君を異世界に送るけど、僕らもあとで追いかけるから!恨まないでね!」
そう女の子が言うと、タバコをひとすいし私の顔に吹きかけた。
ん!?タバコにしては煙が多いのでは!?
「ゲホゲホッ………!ま、前が見えない………!」
煙が薄まると、先ほどにはなかった人影が増えていた。
「君が、大魔女の孫?」
どこ、ここ。
目の前には目隠しをした背の高い男が立っていた。伏見先輩と女の子はいずこ!?
足元には、アニメとかでよく見る魔法陣みたいなのがある。
「違います!!赤城マリの孫です!」
「大正解だ。魔族の国ガルニアへようこそ」
深々と男がお辞儀をする。
これってまさか。
俗に言う異世界召喚?
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる