大魔女の孫だったらしく、異世界召喚されました。

狸屋アキ

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俗に言う異世界召喚ってやつ?

1話

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 赤城あかぎひまる。それが私の名前。友達からは略してアカマルと呼ばれている。そういう名前のタバコがあった気がしてあまり気に入ってはいない。

 そして今。

「君が、大魔女の孫?」

 目の前にいる変態目隠し男に問われている。別にそう言うプレイではない。

 時はおよそ1日前に遡る。
 
 その時は、まだ学校の朝礼前だった。


「あ、おはよ。終わったの?お葬式」
 話しかけてきたのは、前の席の中井喜美子。通称きみちゃん。

「おはよ。まあ葬式っていうほどでもないけどね」

 たった一人の家族を看取った。看取ったというと大袈裟だが、静かに逝くところを見守ったというべきか。
私は、幼い頃に両親を亡くし母方の祖母に引き取られた。
 祖母の名は赤城マリ。家族である私から見ても豪胆な人だったと思う。
 いつだったか、私が親なしだといじめられていた頃、いじめてきた男子に「私の孫をいじめたんだ。謝るまで呪いは続くからね」と鬼の形相で言い放ち、その後本当にその子が謝るまで周りでプチ不幸が起こり続けた。

「まあでもかっこいいおばあちゃんだったよねえ」
「そう言ってくれるのきみちゃんだけだからね」

 はは、と笑うと祖母のガハハと豪快に笑う様を思い出す。
 豪快ではあったが仲は悪くなかった。最後の方は、あの豪快な祖母が管に繋がれているのがかわいそうで、逝った時はもう祖母が苦しむことはないのだと少し安心した。
 いけない、涙を堪えようとしてハンカチで拭おうとポッケをかき回す。コツ、と硬いものに指先が当たった。

「あ」
 
 手のひらに乗っていたのは、祖母が亡くなる間際に遺した懐中時計だった。
「なにそれ?」
「わかんない。おばあちゃんが死ぬ間際に渡してきてさ」
 蓋部分に何かマークが書いてあるのだが、なんのマークか全くわからない。多分、2匹の龍………というよりは西洋のドラゴンが対になるように描かれているようだった。だいぶ古いものらしく針はすでにとまっている。女子高生が持ち歩くようなものでは到底ない。

 この時計以外にも、遺言めいたものを祖母は遺した。

「私の友達を、助けてやって欲しい」

 今まで物心ついた時から祖母と暮らしていたが、申し訳ないが祖母の友人というような人物は見たことも聞いたこともなかった。たまに電話を誰かとしていたのは知っているが、全くわからない。

「あ、てかさ。続けてで悪いんだけど悪いニュース」
「げえ、天涯孤独になった親友に何さ?」
「伏見先輩、彼女いるってさ」
「ま、まじ」
「駅前で超美少女と歩いてたって」

 伏見先輩。ちょっと良いなと思っていた二個上の先輩。
 先月、うちの高校に転校してきたその先輩はそのあまりの顔の良さで女子をざわつかせた。サラサラの黒髪で中世的な顔立ちでちょっといいなと思ってしまったのだ。
 元から相手にされるとは思っていなかったが、少しショックだ。
 
 こんな話題で、亡くなった直後にがっかりしてごめん。おばあちゃん。


 放課後になり、私の今後を心配する担任にこれからどうするかを話していたら職員室を出る頃には誰もいなかった。

「遅くなっちゃったな」

 でも、家にはもう誰もいないのだ。
 今後、私は一旦施設から学校に通う。親戚をあらかた探してみて父方に何人か本当に遠縁の親戚がいるとのことだった。が、不可解なことに祖母だけしか見つからなかった。
 はあ、とため息をつきながら歩いていると廊下で誰かにぶつかりこけかけた。

「うわ」

 ぎゅ、と腕を掴まれる。

「大丈夫?」
「伏見先輩⁉︎」

 腕を掴んで引き寄せてきたのは、まさかの伏見先輩だった。
 顔が近い、いい匂いがする、髪が綺麗、顔も綺麗!!

「えっと………?」
「も~~~何してんのみかりん~~~!」

 ピキ、と後ろから聞こえた高い声に体が固まる。
 ひょい、と姿を表したのは黒くて綺麗な髪に大きな瞳の小柄で可愛い女の子だった。

「ごめん、ぶつかったみたいで」
「ドジなんだから!あっ、ねえ君大丈夫?怪我ない?」
「な、ケガ!?な、ない、ないです」

 にこにこ微笑みながら私の手を引いてくれた。
 うわ、かわいい。やっぱりイケメンはこう言うこと付き合うんだなぁ。私みたいな平々凡々な女子高校生じゃなくて。

「………?みかりん、この子人間?匂いが違う」
「えっ!?すいません、私くさい!?」

 すんすん、と匂いを嗅ごうと腕を上げた拍子にさっきの時計がこぼれ落ちた。

「あっ」

 女の子が時計を拾って、見つめる。そして、伏見先輩にも見せた。

「間違いない。ガルニアの銀時計だ」
「ということはこの子が………」

「大魔女の孫」

「赤城マリの孫ですが!?」

 ごそ、と女の子があってはならないものを取り出した。

「タ、タバコ!?いやいやいや、まずいですって!!!学校ですよ!?」

「ごめんね、これから君を異世界に送るけど、僕らもあとで追いかけるから!恨まないでね!」

 そう女の子が言うと、タバコをひとすいし私の顔に吹きかけた。
 ん!?タバコにしては煙が多いのでは!?

「ゲホゲホッ………!ま、前が見えない………!」

 煙が薄まると、先ほどにはなかった人影が増えていた。

「君が、大魔女の孫?」

 どこ、ここ。
 目の前には目隠しをした背の高い男が立っていた。伏見先輩と女の子はいずこ!?
 足元には、アニメとかでよく見る魔法陣みたいなのがある。

「違います!!赤城マリの孫です!」

「大正解だ。魔族の国ガルニアへようこそ」

 深々と男がお辞儀をする。

 これってまさか。

 俗に言う異世界召喚?
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