ゴルゴーンロンド

狸屋アキ

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1章 ローレン

9話 魔眼

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「ハッハッ、なんだお前さんニンゲンの上に魔眼持ちだったのか」
「魔眼…?」
 マスターがいうには、あのスーツの二人組が石になったのはこの右目のせいだという。
「ゴルゴーンの魔眼だネ。魔眼だが、義眼ダ。ん~どうなっているのか非常に興味があるナァ」
 マスターが呼んだ医者であるロミニアという猫人間のような男が僕の目を覗きながらいう。
「そのさぁ、ジジイがいうニンゲンってなんなんだよ」
 首に「自分は店内を滅茶苦茶にしました」という看板をかけられ、正座するダビデがいう。
「ニンゲンは壁で世界が別れるまでこの世界の大半を占めていた種族だ。そんで、俺ら混ざりもんのベースとも言えるな」
 へぇと聞いたわりに興味なさげにダビデが答える。ロミニアがパチンと目を照らしていたライトを消す。
「ただのヒートだろうネ。力を使ったのが初めてらしいし、その衝動だろウ」
 あの力を使った瞬間、目が痛んだのは義眼が熱を持ちヒビが入ったかららしい。
「しかしクソガキ、解体王から奪還したならはやく言え。言ったら対処出来たもんを」
「嘘こけ!言ったらあんた店にずっと降りてきて、あの解体王の部下もあんなもんじゃすまなかったろうが!店も!」
 この言葉から、マスターが相当強いことが伺える。マスターはプンッとそっぽを向いている。ともかく、ディーバもなんともなくて良かった。
「う、痛く、ナイ?」
「うん、もう大丈夫だよ」
「はいコレ。封魔の札。これ常に眼に貼っておいてネ。七王レベルになるとその義眼の魔力だけで気づかれる恐れがあるからネ」
「すまねぇな、先生。こんな夜中に来てもらった上に札まで」
「なあに、君と私の仲じゃないかイ。ダビデ坊も怪我してたしちょうどイイ」
 ロミニアが喉を鳴らして笑いながら帰っていった。
「さあて、お前さんに問いたい。お前、どこから来た」
 わからない。気がついたらオークションにかけられていた。自分が人間という種族なのも教えられて知った。
「じゃあ、その魔眼はどこで手にいれた?」
 それもわからない。自分の記憶はあのオークションからしかないのだから。
「ハァー…。なんもわかんねぇらしいな。そんなやつ店から出せるわけもねぇや…」
「お願い、ダディ。ろーれん、オイテあげて」
「なんだい、ディーバも気に入ったか。ならあらためて働いてもらうしかないなぁ」
「ディーバにはあめぇんだからよ…」
 魔眼。ゴルゴーンの魔眼。義眼ということはレプリカ?僕の本当の目はどこにいってしまったんだろうか。
「まっ、いいじゃねぇか。んなことは。それより歓迎パーティーがまだだったな」
「か、歓迎パーティー」
 それから店内はズタズタのまま、残った客をかき集め、ありったけの酒が出され僕の歓迎パーティーが開かれた。
「こ、これがお酒…」
「おいおい、一杯飲んだだけでフラッフラじゃねぇか!風に当たってこい」
 酒のアルコールとかいうのに当てられて、ふらふらしながら店を出て外の空気にあたる。ダビデはああいったが、地下だから風なんてないのだ。
「僕は誰なんだろうなぁ…」
 僕はどこから来て、何をしてたんだろう。他の人間は、僕以外にいるんだろうか…。
「ローレンだよ」
「えっ」
「お前はローレンだ。少なくともここではな」
 マスターだった。
「お前がニンゲンでもニンゲンでなくても今はローレンだ。過去のことなんざ、ゆっくり思いだしゃいい。今日お前は生まれたんだ」
 そうか、僕は、ローレンだ。今はそれ以下でもそれ以上でもない。
「誕生おめでとう、ローレン。どうだい、気分は?」

「最高です」
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