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2章 夜見のパーティー
19話 ただいま
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「わかった?自分の力」
うん。僕の力はゴルゴーンそのもの。でも、石化には限度があるし、使い過ぎると眼を壊すことになる。で、生まれたのが影の蛇達。こっちも光があるところか、闇だけの場所でしか使えないけど人を守れるだけの力はある。
「それだけわかっていれば十分だ。けど、君にはもっと強くなって貰わないとね」
なぜ?その人は僕の手を取る。
「君に、私達から逃げ延びて欲しいから」
逃げる?その人からは全く敵意が感じられない。懐かしささえ感じるほどだ。その人は悲しそうに微笑んでいた。
「さあ、行きな。みんな君を待ってる」
そのまえに、聞きたい。あなたは一体
「誰」
眼を開けると、マスターに貰った部屋のベッドの上の風景が広がっていた。右眼には札が貼られている。
「あれ、僕は…」
床にはダビデとディーバ、それにユリィが毛布を被って雑魚寝している。物音も立てていないのに、ダビデがバチっと目を開ける。こわっ。
「起きた!おい、ジジイ!ローレンが起きたぞ!!」
そう叫びながら、ダビデがバタバタと部屋から飛び出していった。その音のせいでディーバとユリィが起きる。
「ろー、レン!」
「ディーバ!うわっ」
ディーバが雪崩れ込むように抱きついて、首に頭を埋める。ベールで顔は見えないが、じわりと肩口に水分を感じたので、泣いているらしかった。ユリィはんあっ?と情けない声を出して寝惚けている。
「よう、起きたか」
部屋にマスターがやって来た。
「僕はどうやってここに?」
「なんだ、覚えてねぇのか?リリンを失神させた後にお前さんはこいつら全員背負って屋敷を出てここまで帰って来たんだぞ。まあ、その後一週間今の今まで寝続けたけどな」
どうしよう、全く覚えがない。無意識のうちに体が動いていたらしい。
「無意識じゃねぇよ」
ダビデが言う。無意識じゃない?でも、実質僕はその時の記憶がない。どういうことか。
「お前はあの時、リリンとなにか会話してた。あんまり聞こえなかったが…。でもあれは、たぶんお前じゃない。あの時話してたのはお前の中の何かだ」
僕の中の何か。僕じゃない僕、あるいは誰か。あまり、僕の体を好き勝手しないで欲しい。
「でも、そいつのおかげで俺達は帰ってこれた…。悪い奴じゃねぇ」
しかし、僕じゃない奴が僕なのか、僕じゃないのか。はたまた敵か味方かで対処が変わってくる。
「ローレン」
口を開いたのはユリィだった。
「私の死神の眼の話は聞いただろ。私は魂を見ることができる。だから、普通は魔眼持ちの奴も一目でわかるはずだった。けど、お前には気付かなかった。それは、たぶん、私の眼に見える魂がお前の中のもう一人だったからだ」
僕の体なのに魂のメインはもう一人ということか。それは、えっと…なんでだ?頭がパンクしそうだ。
「まあ帰ってこれたんだ。オレにとっちゃお前ら三人と、も一人おまけにお嬢ちゃんがあの解体王の娘の屋敷から帰ってきた。それで十分だ」
マスターはそう言って煙草をふかした。
「おかえり、オレのバカ息子ども」
うん。僕の力はゴルゴーンそのもの。でも、石化には限度があるし、使い過ぎると眼を壊すことになる。で、生まれたのが影の蛇達。こっちも光があるところか、闇だけの場所でしか使えないけど人を守れるだけの力はある。
「それだけわかっていれば十分だ。けど、君にはもっと強くなって貰わないとね」
なぜ?その人は僕の手を取る。
「君に、私達から逃げ延びて欲しいから」
逃げる?その人からは全く敵意が感じられない。懐かしささえ感じるほどだ。その人は悲しそうに微笑んでいた。
「さあ、行きな。みんな君を待ってる」
そのまえに、聞きたい。あなたは一体
「誰」
眼を開けると、マスターに貰った部屋のベッドの上の風景が広がっていた。右眼には札が貼られている。
「あれ、僕は…」
床にはダビデとディーバ、それにユリィが毛布を被って雑魚寝している。物音も立てていないのに、ダビデがバチっと目を開ける。こわっ。
「起きた!おい、ジジイ!ローレンが起きたぞ!!」
そう叫びながら、ダビデがバタバタと部屋から飛び出していった。その音のせいでディーバとユリィが起きる。
「ろー、レン!」
「ディーバ!うわっ」
ディーバが雪崩れ込むように抱きついて、首に頭を埋める。ベールで顔は見えないが、じわりと肩口に水分を感じたので、泣いているらしかった。ユリィはんあっ?と情けない声を出して寝惚けている。
「よう、起きたか」
部屋にマスターがやって来た。
「僕はどうやってここに?」
「なんだ、覚えてねぇのか?リリンを失神させた後にお前さんはこいつら全員背負って屋敷を出てここまで帰って来たんだぞ。まあ、その後一週間今の今まで寝続けたけどな」
どうしよう、全く覚えがない。無意識のうちに体が動いていたらしい。
「無意識じゃねぇよ」
ダビデが言う。無意識じゃない?でも、実質僕はその時の記憶がない。どういうことか。
「お前はあの時、リリンとなにか会話してた。あんまり聞こえなかったが…。でもあれは、たぶんお前じゃない。あの時話してたのはお前の中の何かだ」
僕の中の何か。僕じゃない僕、あるいは誰か。あまり、僕の体を好き勝手しないで欲しい。
「でも、そいつのおかげで俺達は帰ってこれた…。悪い奴じゃねぇ」
しかし、僕じゃない奴が僕なのか、僕じゃないのか。はたまた敵か味方かで対処が変わってくる。
「ローレン」
口を開いたのはユリィだった。
「私の死神の眼の話は聞いただろ。私は魂を見ることができる。だから、普通は魔眼持ちの奴も一目でわかるはずだった。けど、お前には気付かなかった。それは、たぶん、私の眼に見える魂がお前の中のもう一人だったからだ」
僕の体なのに魂のメインはもう一人ということか。それは、えっと…なんでだ?頭がパンクしそうだ。
「まあ帰ってこれたんだ。オレにとっちゃお前ら三人と、も一人おまけにお嬢ちゃんがあの解体王の娘の屋敷から帰ってきた。それで十分だ」
マスターはそう言って煙草をふかした。
「おかえり、オレのバカ息子ども」
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