ゴルゴーンロンド

狸屋アキ

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2章 夜見のパーティー

18話 開眼

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「ありえなぁい!エリちゃん解体したのだれぇ!?」
 甲高いリリンの声が地下にこだまする。怒りにわなわな震えている。
「この子はぁ、パパに貰った大事なペットなのにぃ!!」
 大事なペットと言ってる割りに地下に閉じ込めているのはどう突っ込めば…。ダビデは、上で相当リリンになぶられたようで虫の息である。よく見ると、右腕の皮が剥がれている。
「だ、ビデ…死んじゃヤダ…!」
「大丈夫、まだ魂は死んでない。この人は死なないよ」
 ユリィはそういうとダビデの手を握った。そして、語りかける。
「お兄さん、私のことわかる?わかったら私の目をみて」
 じっとダビデの目を見る。ダビデがうっすら眼を開けて、ユリィと目を合わせた。すると、ふっと気が抜けた様に眠り始めた。
「えっ、何したの」
「生気を与えた。私の目は合わせた相手に生気を与えることも奪うこともできる」
 すごい。こんなに小さいのにこの子は眼を使いこなしている。僕は、この眼がどこまで使えるかさえも知らない。
「ちょっとぉ、そいつからまだ皮全部剥げてないんだから寄越しなさいよぉ。アタシのよ、全部」
 リリンが鋏を構える。鋭い刃だ。あれでダビデもやられたのだろう。
「下がっテ、ふたり共」
 ディーバが前へ出る。チェーンソーが派手なエンジン音を上げている。ディーバが斬りかかるが、リリンはそれ以上に速い。チェーンソーの刃に鋏を咬ませて止める。
「ぐっ…ッ」
「この鋏ねぇ、アタシが自分で研いでるんだよぉ。だからぁ…」
 ガキンッ
「絶対折れないのぉ!!!」
 嘘だ。あんな小さい鋏でディーバのチェーンソーの刃が折られた。ディーバが後ろへ引く。
「ろーれん、その子と、ダビデ、つれてニゲテ。はやく」
「や…、嫌だ」
 なぜ僕らのために戦う女の子を見捨てて逃げることができるだろうか。皆が異形異形と囃し立てようが僕のなかではディーバ刃立派な、泣き虫で、優しい女の子だ。
「もう、逃げない。ディーバも、ダビデも、ユリィも」
 義眼が、熱を持ち始める。
「僕が守るよ」
「かっこい~!でぇもぉ、そんなこと言ってる暇…ないよぉ!!」
 リリンがものすごい速さで動くが、僕はもう自分の石化以外の力をわかっていた。
「ディーバ!!火を!」
「うぅ!」
 ディーバが、折れたチェーンソーをこれでもかと言うほどエンジンをかけ、刃を石に擦り付けて、火花を起こしさっきダビデ達と一緒に落ちてきた服なんかに引火する。
「死んで!」
 ヒュッ…
 眼を瞑る。目の前には、リリンの鋏の切っ先。ぷるぷると震えているが、目前で止まっている。
「なに…これぇ」
 リリンの影から、蛇と思われるものが這い出し動きを止めている。
「これが、僕の新しい力だよ」
 蛇が、スッとリリンの首に巻き付く。
「ぐえっ」
「火が消えたら、勝手に消えると思う。それまでそうしてて。僕の家族に手を出した罰だ」
 義眼がチカチカと赤く瞬いている。
「アンタ…それ…」
 ユリィが呆気に取られている。
「うん。僕も魔眼持ってるんだ」
 ダビデがこふっと咳をして起き上がる。
「うわ…俺寝てたのか…かっこわり…」
 二本の腕で顔を隠し、一本の腕で頭を掻いている。元気そうで何より。みんな無事だ。
「さあ」


 帰ろうか。
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