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3章: 王女の覚悟
戦局の行方
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「さて、相手はどう出るかな?」
かつてラキエは《火焔剣煌》を、勝利に近づいた戦局の後半で使ったとよく語っていた。彼女にとって魔力剣は殺戮の手段ではなく、敵の戦意を一気に奪い、戦闘を早期終結させるための切り札だった。ニールもその技が本来の目的を果たすことを内心望んでいた。
結果は不本意ながら、呆然とする帝国軍はその期待を裏切った。錯乱する将が振りかざした采配の下、残存兵力が一気に投入される。戦場において起こりがちな兵力の逐次投入。それはラキエが蛇蝎のごとく嫌っていた愚の骨頂でもある。
「これだけの犠牲を出して、まだ続けるつもりなのか?」
唇を噛みしめたニールは泥沼化する戦場を睥睨した。どうすれば帝国軍が退却するかと方策を弄していた頃、平野を疾駆する帝国軍の横合いから矢が打ちかかった。
「何だ?」
矢の起点に視線を移すと、橙色の甲冑に統一された軍勢が丘の稜線に沿って戦闘態勢を敷いている。その数はニール達が戦う前の帝国軍と同数またはそれ以上の兵力。
「あれはラダイカ都市同盟軍だよ。デオロクス帝国と覇権を競い合う東の強国さ」
傍らのフェミアが告げるうちに、ラダイカ都市同盟軍の陣から勢いよく飛び出した騎兵が帝国軍を痛快に蹴散らしていく。
「ラダイカって、かなりの大国なんだよな。道理で駆けつけるのが早いわけだ」
「それだけじゃない。スブヒラやアシェリーナと違って、ラダイカだけは帝国と国境を接していないんだ。グラウツ王国を盾にして、侵攻軍を次々と送り込めるわけだよ。多分、この戦争で帝国を倒す一番候補となればラダイカだろうね」
「勝った・・・・・・勝ったぞ!!」
二人きりだった戦場に、微かな王国軍の声が聞こえ始めた。見回す兵力は百人にも満たない。これだけが生き残りだとは思いたくなかった。
「よかった。生き残れて」
フェミアは安堵した表情を浮かべると、足元がふらつき始めた。倒れそうになった所をニールが支えに入る。勝者にしてはあまりに小さな歓声は、ラダイカ軍の馬蹄の中にかき消されながらもその存在感を示し続けた。
かつてラキエは《火焔剣煌》を、勝利に近づいた戦局の後半で使ったとよく語っていた。彼女にとって魔力剣は殺戮の手段ではなく、敵の戦意を一気に奪い、戦闘を早期終結させるための切り札だった。ニールもその技が本来の目的を果たすことを内心望んでいた。
結果は不本意ながら、呆然とする帝国軍はその期待を裏切った。錯乱する将が振りかざした采配の下、残存兵力が一気に投入される。戦場において起こりがちな兵力の逐次投入。それはラキエが蛇蝎のごとく嫌っていた愚の骨頂でもある。
「これだけの犠牲を出して、まだ続けるつもりなのか?」
唇を噛みしめたニールは泥沼化する戦場を睥睨した。どうすれば帝国軍が退却するかと方策を弄していた頃、平野を疾駆する帝国軍の横合いから矢が打ちかかった。
「何だ?」
矢の起点に視線を移すと、橙色の甲冑に統一された軍勢が丘の稜線に沿って戦闘態勢を敷いている。その数はニール達が戦う前の帝国軍と同数またはそれ以上の兵力。
「あれはラダイカ都市同盟軍だよ。デオロクス帝国と覇権を競い合う東の強国さ」
傍らのフェミアが告げるうちに、ラダイカ都市同盟軍の陣から勢いよく飛び出した騎兵が帝国軍を痛快に蹴散らしていく。
「ラダイカって、かなりの大国なんだよな。道理で駆けつけるのが早いわけだ」
「それだけじゃない。スブヒラやアシェリーナと違って、ラダイカだけは帝国と国境を接していないんだ。グラウツ王国を盾にして、侵攻軍を次々と送り込めるわけだよ。多分、この戦争で帝国を倒す一番候補となればラダイカだろうね」
「勝った・・・・・・勝ったぞ!!」
二人きりだった戦場に、微かな王国軍の声が聞こえ始めた。見回す兵力は百人にも満たない。これだけが生き残りだとは思いたくなかった。
「よかった。生き残れて」
フェミアは安堵した表情を浮かべると、足元がふらつき始めた。倒れそうになった所をニールが支えに入る。勝者にしてはあまりに小さな歓声は、ラダイカ軍の馬蹄の中にかき消されながらもその存在感を示し続けた。
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