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3章: 威厳なき名家
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その後数日、レムダ達はアトロネーゼの村である報せを待っていた。
実は既にこの土地の買取契約をとある貴族に申し込んでおり、今日はその返事が得られる算段だった。
「本当に上手く行くでしょうか?」
隣で待つ村長が不安げにレムダの方を見る。
「大丈夫です。信じて待ちましょう。贈り物も送ったのですから」
「それにしても、あんな物を送って本当によろしかったのですか? かえって先方に失礼になるのでは?」
「そんなことはありません。あれの真価がわかるなら、この土地はどこよりも本来価値が付くはずですから」
「村長!!」
そこへ村人が大慌てで入ってきた。
「来ました! 馬車です!」
「ということは――」
レムダ達は表情をほころばせた。
「本当に、この土地を買い取ってくれる貴族がいるってことか!」
村を訪れたのは馬車と、その護衛にしては多すぎる手勢百人。
御者によって馬車の扉が開かれ、中から筋骨たくましい中年男の貴族が現れる。
「テセントラ侯爵。よくぞお越しくださいました」
「君が、私にこの話を持ち掛けたレムダ=ゲオルグ殿かね? まさかゲオルグ家の人間から、こんな話を持ち掛けられるとは思わなかったよ」
「侯爵でしたら、この土地の真価がお分かりになると信じていましたから」
「いや、私でなくともこの話を聞けば、諸侯貴族は喉から手が出るほどこの土地を欲しがるだろう。レムダ殿こそ、最初の商談相手によくぞ私を選んでくれた」
「それはつまり――」
テセントラ侯爵は村人の前で宣言した。
「皆さん! この地方は本日よりこのテセントラの統治下に編入されることとなりました。皆さんを私の領民として預かる以上、安全と産業発展のための仕事をお約束します!」
村人達は最初、きょとんとしていた。
「俺達、他に移住しなくてもいいってことか?」
「現在、私の領土から技師や職人を呼んで、この土地を住みやすい環境に変える準備を進めています。これからは力を合わせて共にこの土地で頑張りましょう!」
「やったぞ! テセントラ侯爵万歳!」
村人達は大いに盛り上がり、手を取り合って喜んだ。
貴族の保護が得られる以上、もう野盗に脅迫される心配もない。何もない土地でひもじい思いをする必要もない。
「ありがとうございます。それで、正式な売買契約についてですが」
「そうだな。ガウリゼン殿には既に手紙を送っている。代金支払いはここでという話をしてあるから、もうそろそろ現れてもいいはずだが」
そこへ、荒れ地を疾走するようにもう一台の馬車が村に向かってきた。
実は既にこの土地の買取契約をとある貴族に申し込んでおり、今日はその返事が得られる算段だった。
「本当に上手く行くでしょうか?」
隣で待つ村長が不安げにレムダの方を見る。
「大丈夫です。信じて待ちましょう。贈り物も送ったのですから」
「それにしても、あんな物を送って本当によろしかったのですか? かえって先方に失礼になるのでは?」
「そんなことはありません。あれの真価がわかるなら、この土地はどこよりも本来価値が付くはずですから」
「村長!!」
そこへ村人が大慌てで入ってきた。
「来ました! 馬車です!」
「ということは――」
レムダ達は表情をほころばせた。
「本当に、この土地を買い取ってくれる貴族がいるってことか!」
村を訪れたのは馬車と、その護衛にしては多すぎる手勢百人。
御者によって馬車の扉が開かれ、中から筋骨たくましい中年男の貴族が現れる。
「テセントラ侯爵。よくぞお越しくださいました」
「君が、私にこの話を持ち掛けたレムダ=ゲオルグ殿かね? まさかゲオルグ家の人間から、こんな話を持ち掛けられるとは思わなかったよ」
「侯爵でしたら、この土地の真価がお分かりになると信じていましたから」
「いや、私でなくともこの話を聞けば、諸侯貴族は喉から手が出るほどこの土地を欲しがるだろう。レムダ殿こそ、最初の商談相手によくぞ私を選んでくれた」
「それはつまり――」
テセントラ侯爵は村人の前で宣言した。
「皆さん! この地方は本日よりこのテセントラの統治下に編入されることとなりました。皆さんを私の領民として預かる以上、安全と産業発展のための仕事をお約束します!」
村人達は最初、きょとんとしていた。
「俺達、他に移住しなくてもいいってことか?」
「現在、私の領土から技師や職人を呼んで、この土地を住みやすい環境に変える準備を進めています。これからは力を合わせて共にこの土地で頑張りましょう!」
「やったぞ! テセントラ侯爵万歳!」
村人達は大いに盛り上がり、手を取り合って喜んだ。
貴族の保護が得られる以上、もう野盗に脅迫される心配もない。何もない土地でひもじい思いをする必要もない。
「ありがとうございます。それで、正式な売買契約についてですが」
「そうだな。ガウリゼン殿には既に手紙を送っている。代金支払いはここでという話をしてあるから、もうそろそろ現れてもいいはずだが」
そこへ、荒れ地を疾走するようにもう一台の馬車が村に向かってきた。
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