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3章: 威厳なき名家
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馬車は村の中心で止まるなり、自らコンパートメントの扉が開いてガウリゼンが転がり出てきた。
「テセントラ侯爵、これは一体どういうおつもりですか!」
テセントラが予め送ったとされる手紙を突き出して、口角に泡を飛ばして詰め寄った。
「書かれている通りの内容である。貴殿がこの土地を金貨五百枚で売却されたので、このレムダ殿を仲介に私が買い取りを依頼した。それだけのことだ」
「よく考えてください! 貴殿はこのレムダに騙されておりまする!」
「騙す? 契約は確かに書面で頂いておりますが?」
「そうではない! 周りをよくご覧あれ! ここは見渡す限り、草地も生えぬ不毛の土地ですぞ! 開墾も放牧も向かないのに、なぜこんな何もない僻地を欲しがられるのか? 大方、この男に騙されているのでありましょう!」
「失礼ですね。僕はちゃんと、この土地の特質を説明した上で契約を申し込んでいます。それに、何もない僻地というのはそれこそ事実と異なる発言です」
「実際、どこに何があるというのだ!」
両腕を広げて地平線をなぞるように、ガウリゼンが吠えた。
「ちゃんとあるではありませんか。足元をよく見て下さい」
「な、何?・・・・・・やはり何もないぞ! 貴様、この私を揶揄っているのか!」
「揶揄ってなどおりません。何もないなら、ガウリゼン男爵は今何の上に立たれているというのでしょうか?」
「無論、地に足をつけとるわ!」
「そうです。それですよ。僕がテセントラ侯爵に売ったのは、まさにこの土地の土です」
「土を、売っただと?」
「この土地の土壌は少し変わっていましてね、特殊な粘土質を含んだ土なんです。粘土はとても粒の小さい性質で、水を取り込みやすいので草木も作物も生えないんです。それに、こんな風に硬い。しかし反面、焼結すれば堅い材質が手に入ります。例えばレンガのような」
「レンガなど、どこの土でも作れるではないか! 我が庭にもレンガくらいあるわい!」
「確かにこの土地でなくとも普通のレンガならば作れるでしょうが、実は粘度の成分によってレンガには色々な種類が作れるのです。この土地の粘土は、強靭で軽く、しかも色彩も悪くない上質なレンガの原料になるのです」
「何、だと?」
「どうです? これを建築資材にすれば、実用、景観共にインフラ作りに強力な資源となり得るではありませんか。自分の領土で使う意外に、国内外から注文が付くのは確実です」
「レムダ殿の話を聞いて、早速この土地の土を使ってレンガの試作品を作ってみた。それがこれだ」
テセントラ侯爵は黒い直方体をガウリゼンの前に差し出した。
「テセントラ侯爵、これは一体どういうおつもりですか!」
テセントラが予め送ったとされる手紙を突き出して、口角に泡を飛ばして詰め寄った。
「書かれている通りの内容である。貴殿がこの土地を金貨五百枚で売却されたので、このレムダ殿を仲介に私が買い取りを依頼した。それだけのことだ」
「よく考えてください! 貴殿はこのレムダに騙されておりまする!」
「騙す? 契約は確かに書面で頂いておりますが?」
「そうではない! 周りをよくご覧あれ! ここは見渡す限り、草地も生えぬ不毛の土地ですぞ! 開墾も放牧も向かないのに、なぜこんな何もない僻地を欲しがられるのか? 大方、この男に騙されているのでありましょう!」
「失礼ですね。僕はちゃんと、この土地の特質を説明した上で契約を申し込んでいます。それに、何もない僻地というのはそれこそ事実と異なる発言です」
「実際、どこに何があるというのだ!」
両腕を広げて地平線をなぞるように、ガウリゼンが吠えた。
「ちゃんとあるではありませんか。足元をよく見て下さい」
「な、何?・・・・・・やはり何もないぞ! 貴様、この私を揶揄っているのか!」
「揶揄ってなどおりません。何もないなら、ガウリゼン男爵は今何の上に立たれているというのでしょうか?」
「無論、地に足をつけとるわ!」
「そうです。それですよ。僕がテセントラ侯爵に売ったのは、まさにこの土地の土です」
「土を、売っただと?」
「この土地の土壌は少し変わっていましてね、特殊な粘土質を含んだ土なんです。粘土はとても粒の小さい性質で、水を取り込みやすいので草木も作物も生えないんです。それに、こんな風に硬い。しかし反面、焼結すれば堅い材質が手に入ります。例えばレンガのような」
「レンガなど、どこの土でも作れるではないか! 我が庭にもレンガくらいあるわい!」
「確かにこの土地でなくとも普通のレンガならば作れるでしょうが、実は粘度の成分によってレンガには色々な種類が作れるのです。この土地の粘土は、強靭で軽く、しかも色彩も悪くない上質なレンガの原料になるのです」
「何、だと?」
「どうです? これを建築資材にすれば、実用、景観共にインフラ作りに強力な資源となり得るではありませんか。自分の領土で使う意外に、国内外から注文が付くのは確実です」
「レムダ殿の話を聞いて、早速この土地の土を使ってレンガの試作品を作ってみた。それがこれだ」
テセントラ侯爵は黒い直方体をガウリゼンの前に差し出した。
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