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2章: 騎士団長の娘
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何度見ても華やかな制服だ。
細部を見返す度に、フリルやリボンなど意匠を凝らした制服も、ガランティア冒険者学院とは雲泥の差だった。
というより、ガランティアの方は制服などなかったから、平民出身の学生はいつも地味な服装だったし、とりわけ女子は男装に近い恰好で、まるで色気がなかった。
然るにイシルは、プリーツスカートの可憐な翻りに目をくぎ付けにされた。
少し歩くだけで大きく揺れる裾。一陣の風が吹くとたおやかに舞い上がってちらりと中身を晒す。
トップスの方はベストに純白のシャツと控えめだが、真紅のタイの向こう側で豊満に膨れるバストが、その弾力性をありありと訴える。
こんな可愛い制服に身を包む少女達を、自分はこれから痛めつけるのか。
学院のトップである理事長からその権限を与えられているとはいえ、イシルの背後にはいつも後ろめたさがあった。
「ねえ、あの人なんかこっちをずっと見ていない?」
「本当だぁ」
イシルの何気ない視線に気が付いたのか、女子学生達は訝しげに距離を取る。
学生だけでなく、教員や事務員の大半も女性比率が大きい学内でイシルは目立ち過ぎた。
「いかんいかん、仕事をしなければ」
イシルは目に焼き付いたスカートの残像を振り払うかのように台車を押す。
中には掃除道具が一通りそろっていた。
モンスター役を引き受けるとは言っても、四六時中ダンジョンに潜る必要はない。
その間イシルに課せられたのは、用務員、ひいては雑用としての仕事だった。
用務員ならば目立たないし、学生の日常に深く関わるから素性を観察する機会もある。
そうして見つけ出した冒険者として不適格な学生をエスマイアに密告し、彼女からその学生にとあるミッションが命じられる。
表向きは攻略済みダンジョンに潜伏するモンスター残党の討伐だが、ここでイシルが登場して彼らに洗礼をたっぷり与えてやるというからくりだ。
「用務員さん! これ捨てといて!」
通りすがりの学生がこちらの承諾もなしに台車にバナナの皮を投げ込んでくる。
「ああ、君達。そこ通るから道を開けてくれないか?」
廊下でふざけごっこをする学生達は聞く耳も持たず、台車の横を全速力で駆け抜ける。
危ないこと極まりなく、無論例のプリーツスカートで走るのだから、当然パンツも見えている。
ただでさえ肉体労働というのに、イシルは観察するまでもなく学生に振り回されてへとへとだ。
「くそっ、これじゃ単に人手が欲しかっただけじゃないか?」
エスマイアに騙されているのではないかとさえ疑いながら、イシルは学生達の部屋を一つずつ掃除していく。
部屋ごとに微妙に変わる、女の子の匂い。個性とセンスがはっきりとわかる内装のテーマ。
「ようやく、ここで最後か」
ノックをして誰もいないことを確認した後、ドアを開けたイシルは驚愕した。
「なんじゃぁ!! この部屋はぁ!!」
細部を見返す度に、フリルやリボンなど意匠を凝らした制服も、ガランティア冒険者学院とは雲泥の差だった。
というより、ガランティアの方は制服などなかったから、平民出身の学生はいつも地味な服装だったし、とりわけ女子は男装に近い恰好で、まるで色気がなかった。
然るにイシルは、プリーツスカートの可憐な翻りに目をくぎ付けにされた。
少し歩くだけで大きく揺れる裾。一陣の風が吹くとたおやかに舞い上がってちらりと中身を晒す。
トップスの方はベストに純白のシャツと控えめだが、真紅のタイの向こう側で豊満に膨れるバストが、その弾力性をありありと訴える。
こんな可愛い制服に身を包む少女達を、自分はこれから痛めつけるのか。
学院のトップである理事長からその権限を与えられているとはいえ、イシルの背後にはいつも後ろめたさがあった。
「ねえ、あの人なんかこっちをずっと見ていない?」
「本当だぁ」
イシルの何気ない視線に気が付いたのか、女子学生達は訝しげに距離を取る。
学生だけでなく、教員や事務員の大半も女性比率が大きい学内でイシルは目立ち過ぎた。
「いかんいかん、仕事をしなければ」
イシルは目に焼き付いたスカートの残像を振り払うかのように台車を押す。
中には掃除道具が一通りそろっていた。
モンスター役を引き受けるとは言っても、四六時中ダンジョンに潜る必要はない。
その間イシルに課せられたのは、用務員、ひいては雑用としての仕事だった。
用務員ならば目立たないし、学生の日常に深く関わるから素性を観察する機会もある。
そうして見つけ出した冒険者として不適格な学生をエスマイアに密告し、彼女からその学生にとあるミッションが命じられる。
表向きは攻略済みダンジョンに潜伏するモンスター残党の討伐だが、ここでイシルが登場して彼らに洗礼をたっぷり与えてやるというからくりだ。
「用務員さん! これ捨てといて!」
通りすがりの学生がこちらの承諾もなしに台車にバナナの皮を投げ込んでくる。
「ああ、君達。そこ通るから道を開けてくれないか?」
廊下でふざけごっこをする学生達は聞く耳も持たず、台車の横を全速力で駆け抜ける。
危ないこと極まりなく、無論例のプリーツスカートで走るのだから、当然パンツも見えている。
ただでさえ肉体労働というのに、イシルは観察するまでもなく学生に振り回されてへとへとだ。
「くそっ、これじゃ単に人手が欲しかっただけじゃないか?」
エスマイアに騙されているのではないかとさえ疑いながら、イシルは学生達の部屋を一つずつ掃除していく。
部屋ごとに微妙に変わる、女の子の匂い。個性とセンスがはっきりとわかる内装のテーマ。
「ようやく、ここで最後か」
ノックをして誰もいないことを確認した後、ドアを開けたイシルは驚愕した。
「なんじゃぁ!! この部屋はぁ!!」
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